2019年08月09日

「日本の地理教育はガラパゴス化」発言を考える

 2019年の「地理・日本代表」が、香港での国際地理オリンピック世界大会を終えて帰国しました。
 文部科学省を表敬訪問し、副大臣に報告した後、記者団の取材に応じた中で、代表選手の一人が「日本の地理教育は『地域の物知り学』のようにガラパゴス化している」と発言し、話題になっています(好意的に捉えている関係者が多いようです)。ちょっと違和感を感じ、SNSでかきましたが、ここで記事と自分が感じたことを改めて整理します。

まず、発言の趣旨から教育新聞:2019年8月8日付より転載

 香港で開催された第16回国際地理オリンピックに出場した日本代表の高校生らが8月6日、文科省を訪れ、永岡桂子副大臣に結果を報告した。日本は前回大会でメダルを獲得できなかった屈辱を晴らし、銅メダル1個を獲得。国別順位も31位から27位に上がった。一方で世界と戦った高校生らは、記者団に対し、日本の地理教育が「ガラパゴス化」していると指摘し、フィールドワークを重視した世界標準の教育が必要だと訴えた。

日本代表には、中尾俊介さん(洛星高校3年生)、飯田菜未さん(茨城県立土浦第一高校3年生)、植山隆斗さん(早稲田高校3年生)、野広海(ひろうみ)さん(渋谷教育学園幕張高校3年生)が参加。2年連続で出場した中尾さんが銅メダルを獲得した。

国際地理オリンピックは、現地でフィールドワークをしながら、地図を作ったり、その地域の問題の解決策を提案したりする。また、問題が英語で出題されるなど、日本にとってハンディキャップが多い。今回は7月30日から8月5日まで香港で開催され、44カ国・地域の166人の高校生が参加。日本代表は、台湾での事前合宿を行うなど、入念に準備して大会に臨んだ。

永岡副大臣は「さまざまな国の地理好きと交流したり競争したりできたことは、自信につながったと思う」と励ました。

表 敬訪問後、中尾さんは記者団に対し、「日本の地理教育は『地域の物知り学』のようにガラパゴス化している」と指摘。さらに植山さんは「地理は覚えるのではなく考える教科のはずだ。地域の改善策を提言するような活動をもっと日本の学校でも重視すべきだ」と訴えた。

 日本代表を引率した大谷誠一神奈川県平塚市立金目中学校教諭は「日本代表に選ばれる生徒であれば、英語はある程度できる。問題はフィールドワークの経験が圧倒的に足りないことだ。日本の子供は地図が読めても書くことができない。小学校では地域を実際に歩いて学ぶ活動があるが、中学校や高校ではほとんど行われていない。これでは世界標準に追いつかない。小学校から高校までをつないだスパイラルな実践が求められている」と総括した。


(1)日本の地理教育は「暗記ガラパゴス」? 

まず、違和感を感じたところとして、「日本の地理教育は『地域の物知り学』のようにガラパゴス化している」という発言。私は、全く逆の方向にガラパゴス化していると考えています。それは、地理教育の関係者が地名や位置、距離感、自然や産業の成り立ちなど、基本的な事項を覚える(覚えさせる)ことを評価せず、「地名・物産の地理」と呼んで忌避したり、「地理は暗記ではない」ことを強調しすぎて、関係者以外の支持というか賛同を得られないことがガラパゴス化の最たるものだと思います。

 「暗記しなくても、センターは楽勝!」とか、「地理は地の理(ことわり)を考える学問」とか、非常に耳あたりはいいのですが、それは英単語や漢字も覚えずに「センター攻略」のテクニックを磨いたり、ろくに本も読まずに外国人と議論しようとしたり、基本練習もさせずにあれ戦術だ、システムだを教え込んで「なぜ勝てないんだ???」と嘆くぐらいにナンセンスなことだと思います。

 そもそも、「世界」の地理教育の現場はそんなに「暗記」をさせず、「地域の物知り学」を避けているのかというと、そんなことはありません。イギリスのGCSE(中等教育修了試験レベル試験)対策の「フラッシュ暗記カード」なんてのも売られていますし(→いとちり:2009年3月23日)、アメリカの高校では、地名テストを毎回のようにやってました(「サハリン」とか「カムチャツカ」の英語のスペルと発音、先生が何度もリフレインさせていたのですっかり覚えてしまいました)。私自身、日々の授業では「とにかく教科書をじっくり読みなさい。地名が出てきたら、地図帳で場所を確かめて、覚えなさい」ということを徹底していますし、覚えた分だけ評価につながる教材やテストを作っています。センター試験とか、大学の一般入試とか、ほとんど関係してこない学校ですが、「地名の知識は一生もの」という心持ちで指導しています。間違っても「地理は暗記じゃない」なんてことは言いません。

 少し古い資料になりますが(2008年3月)、日本地理学会が高校生を対象に行ったアンケート調査があります。「高校で地理を履修していない生徒のうち、6割が宮崎県の位置が言えない」(正答率40.4%)ということでメディアに取り挙げられ、ある意味で高校地理再必修化に向けたターニングポイントになった調査ですが、実は高校の地理履修者の正答率との差は1.1%しかない(41.6%)という不都合な真実があります。ベトナムの位置がわからない高校生は未履修者で68%(正答率32%)、既履修者で54%(正答率56%)、イラクに至っては地理着履修者でも27.7%しかわかっていません。ちなみにこの年のセンター試験、地理Bの平均点は66.3点と、世界史(58.9点)、日本史(64.2点)より高くなっています。「イラクや宮崎県もわからない生徒は、さすがにセンター試験を受けていないだろう」と捉えることも出来ますが、「イラクや宮崎県の位置を覚えていなくてもセンターで点は取れる」のかもしれません。いずれにせよ、高校の地理教育の現場で半数以上の生徒が、都道府県や国の位置など、゛基本のき”となる知識がついていないにもかかわらず、有効な手が打たれていないという事実が、この調査で明らかになりました。(→調査の詳細はこちら http://www2.dokkyo.ac.jp/~rese0018/tiri_ninsiki_cyousa2008.pdf)。地理オリンピアン(地理オリンピック選手経験者)がいくら「日本の地理教育は暗記ばかりでガラパゴスだ」と言ったところで、それを額面通りに受け止めてはいけないのです。・・・サッカーに例えるならば、ボールの芯に当たるように蹴る(リフティング)やボールの勢いを止めるといった基本練習が十分に出来ていない選手に対して、「日本のサッカーは単調な基本練習ばかりでつまらない。もっと戦術やシステムを教えなければ」と、応用ばかり教えてちっとも勝てないというような状況にあります。もっとも、「センター試験」などは、ゴールの枠とボールを蹴る位置がある程度固定されていて、セオリー通りの動作とキーパー(出題者)の動きを読んで蹴れば点につながるPK戦みたいなものなので、本当に「ゲーム」(試合)と言えるのか、それに向けて日々の練習(授業)をエネルギーを注ぎ込むだけの価値があるのか?ということに関して疑問符が付きます。「暗記至上主義のガラパゴス」というよりも、「暗記軽視、センター至上主義ガラパゴス」と言った方がいいと思います。

(2)日本のフィールドワークは「世界標準」ではないのか?

 地理業界の用語に「巡検」(じゅんけん)という言葉があります。英語の”excersion"の訳語で、先生の引率の下、あちこちを見て歩く行為を指し、「修学旅行」の訳語(School excersion)としてもあてられます。日本の地理教育で行われているフィールドワークは圧倒的にこの「巡検」型であり、先生が何十人かの生徒を引率し、見るべき場所で立ち止まり、先生が「解説」するというスタイルが多いです。

 対して、地理オリンピックで行われるフィールドワーク試験は、手っ取り早く言うと「放し飼い」です。出題対象となるエリアを定めて、何人かのグループ(選手の国をミックスさせる場合、同じ国同士のチームで組む場合など、主催国によってルールは変わります)、時間を決めて自由に歩かせます。何を見るべきか、どんな問いが出されるのか、若干のヒントは出ますが、選手たちは「何を問われるか?」を自分達で考え、「想定問答」を繰り返しながら答案を練っていく形になります。例えば、水利施設を見つけたとすると、「この施設が建設されたことで、周辺の農地の利用効率はどのように変化したか。新旧の地図に描いてある事象を基に略図を描いて説明せよ」とか、「都市化が進展する中で、農業用水の利用が減り、地域にとっては厄介で危険な施設になっていると指摘がされる一方で、環境の保持のために必要であるとの意見もある。あなたはどう考えるか?それぞれの立場の住民になったつもりで述べなさい」といった具合です。日本の高校生にとっては、いくら国内予選のテストで高い点を取って来たとしても、「そんなもん、書いた(描いた)ことないよ〜」となってしまう訳です。もちろん、そんなことを授業でいちいちやっていたら、週何時間地理の授業があっても足りません。

  ただ、地域の課題の抽出や解決策の提案、そして実践といった活動は、地方の実業高校、総合学科高校ではそれこそ日常茶飯事、「総合学習」や課外のプロジェクトとして積み重ねがあります。ただ、そういった活動の成果や活動の中で培ったスキルを持つ生徒が「地理オリンピック」にエントリーしてくるか、代表まで上り詰められるか?というと、「ほぼ100%無理」と言わざるを得ないのが実情です。

 「もっと(地理の授業などで)課題解決型の学習やフィールドワークをするべきだ。日本の地理教育は何もしていない」という指摘は、半分は同意できます・・・が、代表選手を多く送り出しているトップ進学校ではその通りではありますが、「地理オリンピック」には縁もゆかりもない(と思われている)実業高校、総合学科高校で、地域連携の中核となって手腕を発揮している若手の地理教員もたくさんいること、ペーパー試験の学力ではかなわないかもしれないけれど、大人を唸らせる洞察力と提案力を持った高校生もたくさんいることを、気に留めて欲しいと思います。

(3)「国際標準」に対応させてたいのならば、「国内予選」改革こそが必要では?

 地理オリンピックの日本代表は、本大会の前に「フィールドワーク強化合宿」を行い、こうした「世界標準式」の出題に備えています。今年の代表は、初の「海外合宿」(台湾)を行ったそうです。「代表」を「強化」してこの順位。まあ、結果に云々言ってもしょうがないですが、個人的には、このフィールドワークの弱さを克服するためには、選抜の方法から見直した方がよいのでは?と考えています。

 「地理オリンピック」の国内選抜は、3次試験まであります。全国の地方会場で行われる1次試験(世界大会の「マルチメディア」試験に対応した、スライドで映される問題を見て1分間以内で4択ないし5択をマークシートで答えます)で参加者約2000人が約100名に絞られます。その後、国内各ブロック会場で行われる2次試験(英語での論作文を含めた記述試験。国公立大学の2次試験のような問題です)で10人前後にし、ファイナリストを集めての3次試験で「フィールドワークテスト」を行い、4人の代表が選出されます。フィールドワークテストに進む選手たちは、地理の学力、思考力的には申し分ないのですし、「世界標準のフィールドワーク」の予選をクリアするわけですから、それなりの技能もあります。でも、「世界」では順位を思うように伸ばせていません。また、いくら「世界標準のフィールドワーク」を広めようにも、毎年そのスタイルで勝負するのは全国で約10名。残りの1990名は、そんなやり方があることすら知らないまま、高校生活唯一の(多くは高校2年で受けます)地理オリンピックを終えるのです。

 「地理オリンピック」の予選問題は、高校の教科書の「地理B」の内容にほぼ準拠しています。多くの学校は、高校2年の春から「地理B」を履修し、試験がある12月〜1月は、まだ教科書の半分ぐらいしか終わっていません。また、「地理A」を履修している実業校などは、受ける側も教える側も「私らには関係ない」という状況で、なかなか受験者の増加につながらないのが実情です。日本代表発足以来、「静岡会場」を開いていますが、毎年、試験会場をもうやめようかと思うくらい受験者が少なくて困っています。

 ただ、国際大会の内容は「地理A」も「地理B」もありません。先述したように非常に本質的な問いを聞いてきますし、知識が豊富にあることに加えて写真や地図、景観を結びつけて「裏を取った上で説明する」力が求められます・・・もし、高校の「地理B」の履修をしていなくても、そうした訓練を日頃からしている、あるいはすごくいい「目」を持っている生徒がいたとしても、現行の予選システムでは代表まで上がって来られないと思います。

 これは私案ですが、仮に日本代表4名のうち、1,2名を「フィールドワーク選抜枠」あるいは、毎年春秋に行われている日本地理学会の「高校生ポスターセッション」の優秀発表者に枠を与えたらどうなるでしょうか?フィールドワーク枠は1次、2次、3次と行い、絞り込んで行きます。1次試験の会場の数だけ「世界標準のフィールドワーク試験」が行われれば、着実にその考え方は定着しますし、授業での履修云々に関わらず、課外活動や部活動(山岳部や郷土研究部など)で腕に覚えのある生徒がエントリーしてくれるかもしれません。悲しいことに、進学校の中には未だに「文系は、地理を履修できない」というような学校もありますが、そうした生徒も独学で地理オリンピックに挑むチャンスが生まれます。大学の中には、立命館大学地理学専攻の「フィールドワーク特別入試」のように、フィールドワークの技能を評価して入学者を募るところもあります。同校の1次選抜(書類審査)は、「あなたが選んだ特徴ある地域の写真を3枚撮影し、その写真と地図を基に、地域の特性を説明しなさい」という、大変シンプルなものです。採点は大変ですが、地理オリンピックのエントリーにも応用できる面があるかもしれません。

 2022年、高校地理が再び必修化されます。地歴科目の中で唯一「オリンピック」があり、世界につながってい「地理」ですが、その裾野を広げるためには、予選や選手選抜の方法を見直す時期に来ているのかもしれません。正直言って、今の選抜方法は、一部の都市部の受験エリートには有利ですが、それ以外の生徒には興味も関心も持てない(持たせられない)状況です。「この一点を磨き上げれば、自分も海外で挑戦できるかもしれない」という道を作った上で、異なる得意分野を持った「日本代表」を編成するのも一つの方法ではないかと思います。国際大会は個人と団体の両方で競う訳ですから、地理的な知識と論述力に長けた生徒、フィールドワークの経験では外国の生徒と引けを取らない生徒、ポスターセッション(国際大会でも審査があります)に秀でた生徒とタッグを組めば、もっと順位は上がるのではないかとみています。「地理・日本代表」の中に「〇〇県立××農業高校」、「〇×県立△△総合高校」の生徒が入ったら生徒も学校も嬉しいですし、それらの高校で日々一生懸命教育実践を重ねる若い地理教員にとっても大いに励みになると思います。また、実施時期をずらしていくことでチャレンジする機会を増やし、「地理オリンピアンになりたい」という生徒にとってもメリットは大きいはずです。

 久々の記事更新で、長い長い文章になってしまいましたが、校務がほっと一息。久々に「地理の教員」として、「地理の教育」を考えてみました。「初代:日本代表コーチ」として台湾に選手を引率をしてから12年。強化合宿の時に「産まれる!」ということで千葉から夜行ですっとんで行って生まれた子供は小学6年生になりました。現役選手から「ガラパゴス」と言われて、さあどうするか。高みの見物ばかりしていないで、何か出来ることからやって行ければなと思います。

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posted by いとちり at 20:11| Comment(1) | 地理オリンピック | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年05月12日

いとちりの防災教育にGIS シリーズ2(1)

 教科書会社、二宮書店さんの高校教員向けリーフレット「地理月報」での連載が始まりました。

 本文にもある通り、「防災教育にGIS」シリーズは、2012年から始めたもので、本誌、Web限定連載、教科書の指導書付属DVDと連載の場を変えて細々と続いています。今回、「シリーズ2」として再び紙媒体に登場し、連載完了とほぼ同時期に書籍化される予定です。当ブログ「いとちり」内に、かつての記事を全部まとめたものがありますので、興味のある方は是非ご覧ください。

「いとちりの防災教育にGIS」一括公開(いとちり:2017年3月23日)

 今回のテーマは「必修化に備えた教材作り」です。

 2022年4月の入学生(現在、中学1年生)より、高校の新しい学習指導要領が実施されます。必修科目化する「地理総合」(2単位)をどうするのか、業界の集まりに出ると基本的にこの話題に終始しています。ただ、本文でも述べたように、「地理総合」という科目が必修化されるということと、「すべての高校生が再び地理の授業を受けることになる」ことの概念の使い分けが十分になされていないのではないか?という気がしてなりません。「地理の専門家」が「地理総合」を担当したら全く問題ないのか?というと、そうはいかないように思います。むしろ下手に旧来の「高校の地理とはこういうものだ」という固定観念、あるいは「アクティブラーニングとは、こうあるべきだ」といった方法論が、却って新科目の理念やプロセスを骨抜きにしてしまうのではないかと危惧しています。その典型が、「GIS」「防災」の扱いではないかと思うのです。

 GISは、地域を理解し、データを可視化する上でのツールに過ぎません。防災は、様々な地域課題を考える上での一つのトピックであり、自然環境や社会環境が入り混じります。これまでの単元主義で、「はい、GISを扱います」「はい、身近な地域の危険性を考えてみましょう」といった取り上げ方から是非脱却したいものです。世界の諸地域の学習にせよ、地図の読み方にせよ、ベーシックな部分でGISや地域課題の探求を意識して行くものだと思います。そうした積み上げ式の指導は、私自身もまだ経験したことがありません。ただ、GISがパソコンからタブレット、そして生徒が一人一台ほぼ持っているスマホでも十分に使えるようになり、その気になれば「いつでもどこでもGISにアクセス」することは技術的には可能です(ルール作りや評価、生徒指導的な部分でまだ追いついていませんけど)。また、防災をめぐる事例やデータは日進月歩で高精度化、多様化しています。そうした知識や技術を適度に取り込みつつ、地理の基礎基本(わからない場所や地名を地図で調べる、資料にあたって裏を取る、気づいたこと考えたことを言語化する)のトレーニングとステップをどう組み立てていくか、まさに模索の段階です。

 シリーズ2では、理論編(教材作成編)を3回のち、再び「フィールド編」として、ここぞという場所にお邪魔してデジタル地図と現地見学を基に教材化の提案をしてまいります。地理教育における防災は、「近くの″もしも”よりも、遠くの”リアル”」に学べる事象は多いと思っています。連載で取り上げる場所に加えて、書籍版オリジナルとして、仕事の合間を見つけて現場に足を運ぼうと思っています。皆様のお近くに行く際は、お世話になることもあると思います。どうぞよろしくお願いします。
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【本文はこちら(PDFファイル)】
<書誌>
伊藤智章(2019)「いとちりの防災教育にGIS 2-1ー『地理総合』の3つの柱と3つのステージ」,地理月報(555),18~19頁.

posted by いとちり at 20:47| Comment(0) | 論文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年03月22日

アナログGISによる必修「地理総合」向けGIS教材の作成について(日本地理学会)

 専修大学(生田キャンパス)に行ってきました。

 日本地理学会の「地図・GIS」セッション、今年は初めて座長もやらせてもらいました。
 つたない司会でしたが、普段の聴衆席とは全く違った緊張感で、とにかくメモを取って質問・コメントを考えることだけに集中した時間でした。ありがとうございました。

 今回のキーワードは「アナログGIS」です。スライド中にもあるように、2007年の日本地図学会の発表で、私が使い出した造語のようなものですが(伊藤:2007→こちら)、当時「紙地図の実習はGISに取って代わる」「アナログか?デジタルか?教師はどちらを選ぶのか?」みたいな論争にうんざりして、いささかの皮肉を込めて発表したところ、「いや、そもそもそんな概念は成り立たない!」ということで集中砲火を頂いたことを記憶しています。

 今回も、「GISというのはそもそもアナログな地理情報(紙地図や調査の結果など)をデジタルデータにした上で加工したり分析したりするものなのだから、『アナログGIS』という概念はやはり変だ」とのご指摘を受けました。確かにそうだと思います。と、言いながら確信犯的にこの用語を使って来たのですが、最近、引用を頂いたり、実践例が出てきたりするようになり、少し解釈も多様化して来たので、改めて考えてみようと今回の報告に至りました。

 「アナログGIS」に関する最近の事例報告として、田部(2017)があります。横浜市の中学校の先生と共同開発された「OHP フィルムを活用した GIS(地理情報システム)入門地図教材」に対してこの語を使っていただいています。確かに、こう呼んだ方が誤解が少ないと思いますが、あえて「アナログGIS」の語を当てていらっしゃることを見ると、伝わりやすさを優先されたのかな?と思う所もあります。また、少し古い記事ですが、拙記事(いとちり:2010年1月16日)では、古今書院の「地理学演習帳」について紹介しています。これなどは、GISを含めた地理学で使う地域の分析手法を紙と鉛筆で再現できる画期的な演習帳面であり、やはり「アナログによるGISの入門教材」と言えると思います。スライドにもあるように、高校地理でのGIS利用における「ステップ0」の教材は、もっと充実するべきだと思います。

  新必修科目「地理総合」には、プロパーはいません。地理教育のベテランも、初めて地理を教える若手も、横一線だと思っています。これまでの「高校地理とはこういうものだ」という固定観念が逆に足かせになる可能性すらあるでしょう。あと2年少々、教師個々人はもとより、業界全体としてどう準備を進めていくか、引き続き考えをまとめて発信して行けたらと思います。









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2019年02月24日

日本地理学会(2019.3.20専修大学)発表要旨

 今シーズン最初の対外プレゼンとなる、日本地理学会春季学術大会の日程が出ました。

 3月20日(水曜日)、専修大学(生田キャンパス)です。
 自分の発表No.は316番、第3会場で14:40〜15:00とのこと。
 <地図・GIS>のセッションです。
 その後、同じセッション内で座長もやらせてもらいます。
 プログラムの詳細は、学会のホームページをご覧ください。

 今回の報告は、昨年11月に公開授業で行った「アナログGIS」の実践です。
 新しい学習指導要領(2022年入学生〜)で必修となる「地理総合」では、授業開きの一丁目1番地から「地理情報システム」をやるべしと書いてあるのですが(・・・「余裕があったらやる」ではなく、「まず、そこからやりなさい」ということになっています)、ステーキ屋さんじゃないですけど「いきなり・・・!」というのにはどうにもこうにも無理がある。「Web GISがあるじゃないか」といっても、それ以前の段階で、ストレスフルに出来る教材はないものか?というのが教材作りの出発点です。

 「アナログGIS」という言葉は、随分前から使っている概念ですが、誤解の無いように申し上げておくと、単なる手描きの地図の重ね合わせ(トレーシングペーパーによる地形図の要素書き出しなど)は、私の中では「アナログGIS」ではありません。作業自体はアナログ・手作業でも、教材自体はGISのデータとGISのソフトで作り、いつでもデジタルの教材にスムーズに移行出来てこそ「アナログGIS」だと思っています。「作り手」と「使い手」の分業など、結構考えて行かなければならない点は多々あります。実践自体はシンプルなので、論点を整理して、ご意見を募れればと考えています。

 取り急ぎ、発表要旨のファイルをアップします。
 ご来場、お待ちしております。
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PDFファイルはこちら

【リンク】
 アナログGISで考える世界の人口(いとちり:2018年11月18日)
 研究授業直後にアップした教材データなどです。
 よろしければこちらもご利用ください。
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posted by いとちり at 18:25| Comment(0) | 学会発表 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年12月09日

台湾修学旅行考

 修学旅行で台湾に行ってきました。自分自身は4回目の台湾ではありますが、前回行ったのが11年前の「第1回アジア・太平洋国際地理オリンピック」の代表団引率だったので、随分変わったなあという印象でした。地下鉄がとても便利でした。
 勤務校では昨年までの沖縄から台湾に替わっての第1回目。色々な面で試運転なところがありましたが、これからお付き合いが続いていく土地になりますので、いくつか気づいた点を備忘録がてら書き留めたいと思います。

(1)距離的に近い割に、移動時間がかかる

 学校を出たのが午前8時。バスで3時間以上かけて成田空港へ、成田で通関、飛行機に乗り台北の桃園国際空港へ。ものすごく長い入国管理の列を並び、荷物を受け取り、夕食会場に入ったのが午後8時(日本時間では午後9時)でした。帰りは朝5時起床、6時半にホテルを出て、9時半の飛行機に乗り、成田からバスに乗り、各自の最寄駅(私の場合は沼津駅行き)に着いたのが午後7時でした。200名近い団体の国際移動とはいえ、沖縄に行っていた時は、最終日のお昼ごはんまで食べられて到着時間は同じくらいでしたから、なんとかならないものかな?と思いました。
 12月の第1週は、全国的に「修学旅行ウイーク」のようで、台北でも静岡県の学校(私たちを入れて3校)、北海道の学校、大阪の学校など、たくさんの学校に遭いました。せっかく地方空港がある訳ですから、何校か束ねてチャーターして、行先も桃園⇒台北一辺倒ではなく、台湾の他の空港に行ってもいいのではないかな?と思いました。台中や高雄は、街を挙げて日本の修学旅行誘致のプロモーションをしているそうです。

(2)「定食」コースになってしまっており、見直しが必要

 故宮博物院と九份が、修学旅行の生徒でごった返していました。確かに、班行動ではいかないところかもしれませんし、「The 台湾」というべきところですが、身動きも取れないくらいでは魅力も半減です。修学旅行ではどうしても安全第一、前例踏襲になりがちですが、独自性をたどっていく必要があるように思いました。

(3)Wifi環境は素晴らしい

 公共施設ではほとんどフリーWifiが使えるのが大変便利だと思いました。
 今回、班別行動で大学生のガイドさんに案内をお願いしましたが、生徒のスマホに地図アプリを入れるなどして、自分達で歩いてみるような企画も出来るのではないかと思いました。

(4)学校訪問などができれば・・・。

 今年、台東市の訪問団を受け入れ、非常に盛り上がりました。相互訪問ができればいいのですが、日程上の都合でちょっと厳しかったのですが、姉妹校、相互訪問は置いておいて、特徴ある学校にお邪魔して交流する時間がとれたらなと思いました。もちろん、教員間の行き来も大事かと思いました。

 「修学旅行は海外」というのが全く珍しくなくなってきた今日(実は台湾に行く方が沖縄より安いのです)、同じ時期に沢山の学校が台湾に行く中で、旅行社に用意してもらった定食メニューだけでなく、どうやって独自性を出して行くか、今回得た知見を日々の授業にどう生かしていくか(私たちを案内してくれたガイドさんは、しょっちゅう日本に行っていて、富士五湖や忍野八海はちょいちょい行くそうです)など、いろいろ検討してみたいと思いました。
 台湾の地理オリンピックの時にも感じたことですが、台湾は「地理教育大国」です。今回の旅行をきっかけに、また関わりを深めて行けたらと思いました。
 最後に、班別行動時のフリータイムに撮った「淡水」の写真です。いいところでした。
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【リンク】
 地理オリンピック引率記

2007年の第1回アジア・太平洋地理オリンピックの引率記。
 月刊「地理」誌に寄稿した原稿が、台湾師範大学のサーバーに残っています。
 もともと、隔年で行われる地理オリンピックの世界大会に選手を送り込んでいた台湾。世界大会が行われない年にローカル大会を開いていたヨーロッパに倣って「アジア・太平洋大会」を企画し、「世界への足掛かりにいかが?」と、日本を誘ってくれたのが始まりと聞いております。
 日本はその後、2009年に「第2回アジア大会」を筑波大学で開催し(私も手伝いに行きました)、台湾は2010年に世界大会を誘致。その時にノウハウを吸収した日本委員会は、2013年に世界大会を京都で開催しました(私は「富士山麓案内要員」として関わらせていただきました)。
 日本の地理教育界にとって台湾は、常に一歩先を導く「兄貴」(女性の先生が多いので姉貴か?)のような存在です。

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posted by いとちり at 18:35| Comment(0) | 世界地理の教材 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする