2017年03月31日

タブレットコンピューターを用いた「デジタル地図帳」システムの構築―沖縄修学旅行の研修教材の制作を中心に―(E-journal GEO)

   

 日本地理学会の電子機関誌「E-journal GEO」に掲載されました。

 タブレット・コンピューターを使った「デジタル地図帳」システムは、これまで色々なところで口頭発表し、雑誌記事で書いてきましたが、ようやく査読論文となりました。自分自身も含めて、これから関連研究を行っていく上での定番、スタンダードとなる論文になったのではないかと自負しています。

 本文中にもありますが、この教材の最大のウリはオフライン稼働であること。それに加えてクローズドなデータ共有ができること、さらに私の実践では当たり前といえば当たり前ですが、端末の導入費以外はほぼ無料であることです。
 そう遠くない将来、高校の教育現場にタブレットが普通に入ってきます。学校の備品としてのタブレットを使って、無線LAN設備のない教室や野外でも自由に使える地図帳、ハザードマップや新聞記事など、ネットにアップして使うには著作権的にも肖像権的にも厳しいような資料を使って授業を進める上で、このシステムは極めて有効です。

 アプリ側で、年間数千円の課金をするようになりましたが、Avenza Mapsというアプリは、
iOSでも、Android端末でも動きます。Android版での実験はまだ行っていませんが、GPS機能付きの端末はAndroidの方が安いので、普及に向けたテストをまた行っていきたいと思っています。

 また、Wifi版のiPadなど、GPSがついていない端末でどのようなことが可能か(一応、Wifiルーターやスマホを持っていれば、位置情報は示せるはずです)、検討を重ねて見たいと思います。・・・いくらGPS付きのiPad(Simフリー版のセルラーモデル)がよいと言っても、既にWifi版がある学校や、そういう意見が通らないケースも考えられますので。

 沖縄タイムス社をはじめ、現地の皆様には本当にお世話になりました。査読意見をもらって、せっせと直して行き来している間に2年が過ぎ、もう1回別の生徒達を修学旅行に連れて行く(今度は沖縄市、コザ地区バージョンをやりました)ことになりましたが、新たな機能を試してみた結果など、報告にまとめて行きたいと思います。

【書誌】
伊藤 智章(2016)「タブレットコンピューターを用いた『デジタル地図帳』システムの構築―沖縄修学旅行の研修教材の政策を中心に―」,e-journal Geo 11(2),pp.516-525.
【本文】(電子版論文へのリンク)

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E-journal GEO
Vol. 11 (2016) No. 2 p. 516-525

E-

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2017年03月26日

日本地理学会(筑波大学)に行きます。

年度末の予定がかなり厳しそうだったので、今回は発表は見送り、行くのも無理かな?と思っていたのですが、いろいろと仕事が順調に運び、1日だけ行けることになりました。

 3月28日の地理教育公開講座「地理総合(仮)と地理情報システム」と、「高校生ポスターセッション」を見に行こうと思います。

 2022年入学生から完全必修で実施される新科目「地理総合」。デジタル地理情報を使った地理情報システムを日常的に使ったアクティブ・ラーニング型の授業が指向されていますが、2022年になって「さあ、どうぞ」というわけには行きませんし、学習指導要領に「地理情報システムを積極的に活用すること」と書かれているにもかかわらず、骨抜きというか、有名無実化してしまっている今の状況を考えると、やっぱり絵に描いた餅になる可能性が非常に高いと思われます。また、必修科目ですから、地理を専門としない(更にご自身が高校時代に全く地理を履修していない)先生が大挙して「高校地理」を担当することになる訳で、「じー・あい・えす?What?」ってところから始めて行く必要もあります。正直、「必修地理の未来はかなりやばいんじゃないだろうか?」という悲観的なご意見がこういうオフィシャルな場に行くとよく聞かれます。

 ただ、昨年12月に京都で述べたように、私自身はGISに代表される地図のデジタル化、タブレットなどによるモバイルコンテンツ化は、今までのような「GIS=パソコン実習」という固定概念を打ち破ってくれると思いますし、地理が苦手、あるいは基本的知識や技能に自信がないという先生の経験不足を補ってくれるツールになると思いますし、そういうツールをどんどん作っていかなければいけないなと思っています。逆の言い方をすれば、これまでのような求道型、技能伝承型の”授業”(ごうを、さずかる)から、もっと地図や景観を見る(見やすくする)状態で考えることに徹する”ラーニング”になると思っています。

 山の登り方を一つ一つ教わり、苦労して山頂まで行って満足感に浸るのもいいですが、そこにロープウエーなり、リフトがあるならさっさと乗って山頂に行き、下界の景色を見ながらああだこうだと考える時間を確保する・・・行き方を知っている引率者とチケットがあれば誰でもリフトに乗れる。そのリフトこそがGISだと個人的には考えています。リフトに乗る金がないとか、自分の足で歩かせる事こそが教育であるとか、あるいは「リフトを動かすマシンの仕組みやメンテの方法を教えなきゃ」なんてことはあまり意識する必要はないわけです。

 大事なことは、生徒が「高いところに登って見下ろす」ことで、新たな発見ができるということに気付いてもらうこと、卒業後も職場の同僚や家族を連れて気軽に「ハイキング」に繰り出せるようにすることです。隣の芝は・・・じゃないですが、世界史や日本史教育の世界は、そういう社会人リピーターの確保が非常にうまく回り始めているように思います。

 基調講演は、この分野をリードしてきた方々です。今回は聴衆に徹して、どんな方々がどんなディスカッションを仕掛けるのか、じっくり拝聴したいと思っています。

〇日本地理学会春季学術大会 地理教育公開講座「地理総合(仮)と地理情報システム」
3月28日(火曜日)13:00〜16:00
会場:筑波大学 0会場 3A23A204  
※一般発表は、大会参加料が必要ですが、「公開講座」は会員、非会員に関わらず無料で聴講できます。
大会プログラムはこちら

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posted by いとちり at 20:42| Comment(0) | TrackBack(0) | 学会発表 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年03月23日

防災教育にGIS(二宮書店:地理月報)一括公開

  教科書会社の「二宮書店」が、高校教員向けに出している定期刊行のリーフレット、「地図月報」の裏表紙や、教科書の附属DVD-ROMで細々と連載してきた「いとちりの防災教育にGIS」が、「フィールド編(」実際に現場に行ってGIS主題図と比較のポイントを探る)が10回に達しました。「備える防災」のアイデアに、GISを使って何かわかりやすい提示ができないだろうか、常にお考えの同業者の皆様、一般の皆様に送ります。

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教材編:第1回 ハザードマップを自作する―基盤地図情報の利用―


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教材編:第2回 ハザードマップの教材化―イメージオーバーレイ―

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教材編3:写真を地図で整理する―ジオタグの利用―


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フィールド編1:雪に挑む190 万都市̶北海道札幌市


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フィールド編2:iPad でつなぐ「あの時」の記憶̶新潟県長岡市

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フィールド編3:水の恵みと土石流̶静岡県富士市

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ィールド編4:リスクをチャンスに変える「坂の街」̶広島県尾道市

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フィールド編5:御土居(おどい)̶都市の治水と都市再編̶ 京都市


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フィールド編6:「天地返し」̶神奈川県山北町
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フィールド編7:地図に刻まれた災害の跡を読む̶雲仙普賢岳
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フィールド編8:被災地の記憶を地図にアーカイブする̶宮城県多賀城市
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フィールド編9:「川だけ地図」で戦後史を読む̶沖縄県那覇市
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フィールド編10:土石流の教訓を教材化するには̶広島市安佐南区
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posted by いとちり at 22:08| Comment(0) | TrackBack(0) | 論文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年02月24日

経済は地理から学べ!宮路秀作著

 おお、面白そうな本だ。社会人向けの地理の本を志向しているな。どれ、お手並み拝見と行こうか・・・と思っていたら、著者ご本人から献本を頂きました。このブログを読んでいただき、更に拙著も買っていただいているとのことで、光栄の極みであります。

 さて、書評というほどではありませんが、感想をいくつか。
 読後の印象・・・「あ、いろんな意味で自分の本と対極にある本だなあ」と。
 どの辺が対極かと言いますと・・・。

 @この本は白黒刷り、自分のはカラー
 白黒で分かりやすい模式図や地図を載せるのは、思いのほか苦労が絶えないのは普段テストやプリント作りで嫌というほど味わっています。逆に、カラーが使えるとあれも載せたいこれも書いておきたいと、みっちりとなってしまいがち。シンプルで分かりやすい解説図が多いです。
 Aこの本は縦書き、自分のは横書き
対象読者を幅広くとった、「ビジネス書です」って感じがします。自分のは理科っぽいというか、「地図化実験の報告」というか・・・実際理系方面の方にウケがいいようです。
 Bこの本は、読ませる本。自分のは見せる本
さすが、予備校の先生だけあって、文章の語りもうまいです。語りを読みながら、挿絵的に案連する図が登場します。自分の方は、制作段階でまず地図を描き、にらめっこしながら描写の文章を書いたものが多いです。タイトルの通り、まずは地図を見てねというスタイルです。
 歌を作るとき、歌詞から書くか、曲から書くかの違いみたいなもんでしょうか。

 C予備校の先生の本、高校教師の本
東大講座も担当されるカリスマ講師の宮路先生。センター試験での出題例や、統計の分析など、「王道の地理B」観が漂う、安定した語り口で「業界の人」なら「ほう」と読める内容です。例えば、アイスランドの地形的な背景と発電との関係を語る最初の箇所はなかなか唸るものがありました。

 かたや田舎の実業校の地理教師。ベースは「地理A」で、結構変化球を投げています。「地理Aの王道」である地誌的な内容にいまいち踏み込んでませんので、今続編をせっせと書いています。

 あまり「書評」になってませんが、高校の時に地理を学んだ方、現役で地理を教えている方、教えざるを得なくなってしまった方には強くお勧めできます。高校地理の予備知識がほとんどない方には、もうワンクッション必要かもしれません(章の扉絵の「この章で取り上げる国」の地図はいいアイデアだなと思いました)。「経済」を前面に出すのならば、後半の「生活」の章、
もう少し統計的な裏付けをつけてもいいのではないかな?(特定の食品の一人あたりの消費量の国別比較など)と思いました。「イギリスの料理がなぜまずい(シンプル)なのか?」の裏付けに、自分ならばどんなデータを使うかな・・・と思ったりしました。

 「高校地理の必修」がなくなってから約25年。「失われた25年」と見るか、巨大なマーケット(高校地理未履修な社会人が数百万人、そのうちの何割かが仕事に地理的な教養を必要としている)があると見るかで捉え方は変わってきます。世界史ビジネス本のブーム、ブラタモリをはじめとした「地図歩き」のニーズ、環境は整ってきていますので、「地理のビジネス書」というジャンル、火がつけば一気に広がるのではないかと見ています。

 「同じテーマ、地域を別々の切り口で書き、描く・・・一緒に仕事が出来たらよいですね」とお声かけさせていただきました。立場は違いますが、地理を教室の内外に広めようという者同士、これからも切磋琢磨していけたらと思っています。

 改めて拙著も宣伝・・・続編(地誌編)、頑張って書いて(描いて)ます。


posted by いとちり at 23:40| Comment(3) | TrackBack(0) | 書評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年01月05日

「読図」から「活図」へ(「地図ジャーナル」2017年1月号)

 あけましておめでとうございます。本年1本目は、掲載記事の紹介です。

 一般社団法人地図調整技術協会という業界団体の機関誌である「地図ジャーナル」から依頼を頂き、寄稿しました。新春号の特集が「地図と教育」ということで、国土地理院の担当官、科学警察研究所の特任研究官(小学生向け防犯マップ)、藤沢市の「ミセス地図太郎」東先生、そして高校代表(?)ということで、昨年やってきたことをぎゅっと詰め込んでみました。

 沖縄の「iPadフィールドワーク」は、ようやく論文が受理され、間もなく出版(電子版)の予定。今月末には2度目の本隊引率で、沖縄市(コザ地区)で行います。また、3月18日(土曜日)に那覇市の沖縄タイムスビルでワークショップ(&ミニフィールドワーク)を行う予定です(詳細は間もなくアナウンスさせていただきます)。

 本年もよろしくお願いします。
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伊藤 智章(2017):「読図」から「活図」へ―変わる地理教育と教師の役割,地図ジャーナル(180),12〜13頁.
posted by いとちり at 21:28| Comment(1) | TrackBack(0) | 論文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする