2011年09月22日

名古屋の大洪水の教材化

 ちょうど前日に、「GIS Day 中部」でお邪魔して、「自分で作るハザードマップ」作りをレクチャーさせてもらった名古屋〜春日井市が洪水になってしまいました。えらい目に遭われたみなさんにとっては「教材化」なんて言葉は使って欲しくない!というところだと思いますが、史上最大、約122万人に避難勧告というのはそうはないと思いますので、各自治体が出した情報を地図化することで、この災害を検証隊と思っています。いくつかの取り組みが見られますので、メモを兼ねて書き留めます。

(1)避難勧告が出された地域の地形の解説
 
フリーGISソフトの定番、「MANDARA」の作者である埼玉大学の谷先生が、もう一つの看板ソフト「今昔マップ」を使って、避難勧告が出された地域の旧版地形図を解説した記事をブログにアップされています。
http://standardization.at.webry.info/201109/article_4.html

「今昔マップ」はこちらから手に入ります。KMLで書き出しもできますので、Google Earthでも見られます。対象地域は、東名阪だけでしたが、先日、三陸海岸の古地図も見られるようになりました。
http://ktgis.net/kjmap/index.php

(2)避難勧告の対象地域
 
各自治体のWebサイトで避難勧告の対象地域を追う事が出来ます。ただ、その扱いは自治体によってまちまちです。
 春日井市は町内会ごとに指示を出していて、発令時間、解除時間が追えます。
 国勢調査の小地域(町丁)毎の人口や境界線を持って来ればだいたい対応すると思いますので、川の周辺のどのあたりまで避難勧告が出されたのか、その場所の地形はどんなところなのか、どれくらいの人口がいたのか等が分かると思います。
http://www.e-stat.go.jp/SG2/toukeichiri/SelectDownload.do
 
 一方で、名古屋市は、「小学校の校区」毎に避難勧告を出しました。小学校区データは、「国土数値情報」の中にデータがありますので、それを引っ張ってくれば地図が描けると思います。
http://nlftp.mlit.go.jp/ksj/jpgis/jpgis_datalist.html

 ただ、惜しいのは「解除」と共に避難勧告が出た地域も消してしまっている事です。
いつ、どこに出したかをアーカイブしておこうと思うか、いらぬ誤解を避けるためにとっとと消してしまおうという考えか、発想の違いだと思いますが、ちょっともったいないなと思いました。

 いずれにせよ、単に文字だけで地名を並べられても、どこに避難勧告が出されたのか、よそ者にはさっぱりわからないという点は共通しています。ある程度「地図化」のインフラは整っているわけですから、発令と同時にマップを出してもらえるとありがたいなと思いました。大都市ですから、たまたまそこに出張や旅行で来ている人だっているわけですし(私も1日遅ければその一人になっていたはず)、日本語が読めない外国人もいるわけですから、災害時の情報伝達を検証してみる必要がありそうです。

 もっとも、最前線で情報をさばく行政マンの方々は忙しくて「地図化」どころの騒ぎではないですから、とにかくテキスト情報が出たら、有志でガンガン地図化してフォローして行くような体制も必要だと思います。東日本大震災の時の経験を生かして、何ができるか考えてみたいところです。
posted by いとちり at 06:29| Comment(0) | TrackBack(0) | 防災 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年09月07日

「防災教諭」?

毎日新聞の夕刊トップ。

気になったので貼っておきます。


文科省:児童「引き渡し」見直しも 津波被害受け提言−−防災教育など有識者会議

 ◇「危険回避力を育成」

 東日本大震災の教訓を生かして学校の防災教育や管理体制を見直す文部科学省の有識者会議(座長、渡辺正樹・東京学芸大教授)が7日開かれ、中間とりまとめの提言をまとめた。提言は防災教育の目標として、児童生徒が自分で危険を予測して回避する能力の育成を掲げた。災害発生時の児童生徒の引き渡し基準の策定を求めることや研修で一定水準の知識や資質を培った安全担当教職員の全校配置なども提案した。

●審議会に関する文科省のリンクです。
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/sports/012/index.htm

メンバーの名簿は「第1回」にあります。
議事録等、またじっくり読みたいと思います。

 「栄養教諭」のように、「防災教諭」(危機管理教諭?)なんて専門職ができるのでしょうか?
 設置するとするならば、理系の知識は必須だと思います。あと、マッピングの技能かな?
「ふじの国防災フェロー育成講座」の課題で、日々うんうん唸っていますが、このくらいのレベルの研修が全国の先生相手になされたらすごいと思います。

 三重大の林先生に講じて頂いた、「治山砂防工学」で事例に出てきた紀伊半島が大変な目に遭っているのを見るにつけ、何とも心痛い気持ちでいっぱいです。

posted by いとちり at 21:12| Comment(0) | TrackBack(0) | 防災 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年09月04日

横浜"盛土”マップ

   山を切り崩し、削った土砂で谷を埋めて平坦地にした場所のことを「盛土」(もりど)といいます。
 普通に暮らしている分には何ともないのですが、大雨が降ったり、大地震が起きた時、崩れてしまうことがあります。東日本大震災でも、仙台市や福島市の新興住宅地で被害が見られました。

 旧版地形図や衛星写真を目を凝らして見ないとなかなかわからない盛土ですが、最近、法律によってその場所の公開が義務付けられ、徐々にですがネット上でもハザードマップよろしく公開が進みつつあります。
 先日アップしたハザードマップをGoogle Earthに載せる要領で、横浜市の「盛土マップ」の一部を切り取って載せてみました。

 原図はこちらです。「盛土とは何か?」を含めて詳しく解説されています。
 http://www.city.yokohama.lg.jp/kenchiku/guid/takuchi/news/morido/

 全体を見渡すと、地図の大部分が真っ赤になり、横浜にはいかに盛土が多いかが分かります(3558箇所あるのだそうです)。こうなってくると、「盛土には住まないようにしましょう」なんて一昔前の「かしこい防災の地理」のようなことは言っていられません。「盛土との共存」といいますか、排水設備をこまめに点検するとか、補修・地盤改良工事の優先順位づけ、老朽化した住宅が取り壊しをする際に再び建物を建てないようにに規制をかける「遊休地化」の選定など、地元の住民の声を取り入れながら、リスクを減らして行き、いざというときに備えるしかないように思います。

 もっとも、こうやってWebでアップしてくれているだけ良い方で、私が以前住んでいた某政令指定都市は、
「区役所に置いてあるから見たい人は見に来てね」と書いてあるのみでした。また、地図は載せているものの、市の全体のみで、全然クローズアップできない地図を出しているところもありました。まあ、出しているだけまだましな方です。ざっと見ると、埼玉県の自治体が公開に熱心なようです。 
 ちょっと手間はかかりますけど、1つ1つの「盛土地」をなぞってあげて面(ポリゴン)データとして取り出して、それを旧版地形図とか、衛星写真の上に載せたらわかりやすいと思います。
 
 繰り返しますが、「盛土」は、避けるものでも隠すものでもありません(作った当時は合法的かつ合理的な工法ですし)。リスクと冷静に向き合って、上手にメンテナンスするための基礎資料・基礎教育が必要なのではないでしょうか?
moridomap.jpg
【KMZファイルはこちら】
y-morido.kmz
posted by いとちり at 22:14| Comment(1) | TrackBack(1) | 防災 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年09月01日

「関東大震災」を知る

 
 昨日のNHKの番組「歴史秘話ヒストリア」では、「関東大震災を予言した男」ということで、地震学者の今村明恒が取り上げられていました。ちょうどこの夏、吉村昭の『関東大震災』を読んだところだったので、非常に興味深く見ました。
 
  今村は、冒頭と地震発生の瞬間、そして最後に出てきます。「関東大震災」の発生を訴え、学界から総スカンを喰っていた今村が、大地震の発生の瞬間、恐怖以上に「異様な昂揚感で地震計を眺めていた」
なんてところは、まさに吉村ワールド全開(吉村昭ファンです)です。
 daisinsai.jpg
  火災の原因は、昼食の支度の七輪よりも、工場や大学の研究にあった薬品の管理のずさんさによるものであること、避難民たちが大量の家財道具を持って逃げたため、本来「安心・安全」な場所であったはずの公園に集まった大群衆の中に火が燃え移ってしまったこと、遊郭では「火事場のどさくさ」に紛れて遊女が逃げ出すのを防ぐためにわざと避難を遅らせたこと、そして彼女たちの多くが逃げたとしても全く土地勘がなく、右往左往しているうちに逃げ場を失ったこと、そして「日本史の恥の一つ」と筆者が揶揄する「朝鮮人狩り」騒動のドキュメントと、まるで良質の映画を見ているようなカメラワークで、遠近感をつけながら「その時の帝都」を活写しています。
 
 薬品の管理の手落ちによる出荷は、現代の「臨海工業地域のプラント火災のリスク」に、避難民と家財道具の関係は、現代の、特に地方における「自動車への愛着」に、遊郭の大災害は現代の繁華街の「雑居ビル火災」に、デマがマスコミに取り上げられて「事実」のように伝えられ、朝鮮人狩りを起こした過程は「ネット・口コミ社会の集団的暴力」に、そのまま読み替える事が出来ると思います。
 

  京都・西京極の「京極堂」という古本屋さんでは、関東大震災の被害状況を描いた絵図のCD販売や、大判印刷を手掛けています。読書のお供や、「iPadデジタル地図帳」に載せて現場を歩くのに良いのではないかと思います(個人利用に限られますが)

〇京極堂Webサイト 
http://www.kyougoku-do.com/top.htm
 「古地図CD-ROMリスト」から、「地域別リスト」→「東京都」の順で開いていく「帝都大震火災系統地図」という地図が出てきます。以前、ここで「関東大震災画報」(大阪毎日新聞社:大正12年)を買いました。

 
 おおっぴらに二次利用して公開する事はできませんが、個人利用でなら、位置合わせしてiPadに入れることも可能だと思います。ネット上のハザードマップと同じで、解像度が荒いサンプル画像だと、どうしてもぼやーっとしてしまいますが、現代の地図の上に載せて「ああ、このあたりまで焼けたんだ」という事さえわかればイメージが付くので、教材化できるように思います。

 東京戦災焼失地域図などもまた同様です。焼けてしまったところ、焼け残ったところ、そして復興のプロセスが分かるところを探し出す上で、これらの古地図は必須だと思います。
posted by いとちり at 22:47| Comment(0) | TrackBack(1) | 防災 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年07月21日

堅ろう建物.kml

  国土地理院の「基盤地図情報ダウンロードサービス」http://fgd.gsi.go.jp/download/に、2500分の1スケールで、建物をまとめたファイルがあります。これを同サイトからリンクしているコンバートソフトを使ってShapeファイルに変換し、GISソフト「地図太郎」経由でKMLファイルにしてみました。

 当然ながら膨大な数の建物が出てきますので、属性を絞って
「堅ろう建物」(コンクリートで建てられた、3階以上の建物)を表示しました。
kenro-fuji.kmz

  最近、わが街でも「津波ビル」(いざというときに備えて、市民が逃げ込めるように、外階段があったり、家主の了解が得られているなどの条件を満たしたビルを指定するもの)の指定が検討されていますが、そうした施策の参考になるのではないかと思います。

 Goolge Earthでは問題なく動くのですが、kmzファイルに保存し直して、iPadの「Kml Map HD」で見ようとしたら、落っこちてしまって見られませんでした。ファイル自体は軽いのですが、処理すべき項目が多すぎるのがいけないのかなと思います。一応、地形図を背景にして画像として切り出したものは見られました。
 自主防災会等で、「津波ビルをどれにしようか?」と検討する上で役に立つかなと思ったのですが、「iPad地図帳」入りは、今のところ難しいようです。以下、いくつか画像を貼ります。
kenro01.jpg
その1 田子浦港付近の「堅ろう建物」です。
旭化成などの工場関係の建物が中心になります。










kenro02.jpg
その2 
 安政東海地震(1854年12月23日)で津波の被害があった富士川河口付近の「堅ろう建物」群です。
海岸近くには、17mの防潮堤がありますが、いざとなれば市営団地の建物などが「津波ビル」になると思われます。








kenro003.jpgその3 
背景に地形図を重ねたものです。
「地図太郎」上で画像ごと切り出してKMLファイルとして保存すれば、iPadにも載ります。
posted by いとちり at 21:44| Comment(0) | TrackBack(0) | 防災 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする