2018年08月01日

【連載】地理教師のためのハザードマップ料理法(3)ジオリファレンス

 連載の3回目です。

 第1回目は、自治体のハザードマップ(PDFファイル)を画像ファイルにしました。
 第2回目は、ハザードマップを料理するために、「QGIS」という、ちょいと玄人向けのGISソフトをインストールして国土地理院のサーバーとつなぐところまでを解説しました。料理で言うならば、1回目で仕入れと下ごしらえ、2回目で厨房の環境を整えたという感じです。
 3回目の本稿では、まだ「生」(切り身にしただけで加熱も味付けもされていない)のハザードマップ画像をQGISで料理して、色々と使える「Geotiff形式」(位置情報を持った画像データ)にする作業です。生の魚や肉は刺身ぐらいにしかなりませんけど、焼いたりフライにすれば色々味付けはできますし、パンにはさんで外で食べることも出来ますね。ただ、あまり焼き目を入れ過ぎたり、こってりと味付けしてもいけません(もともとハザードマップ自体、色々と描かれていてかなり゛脂っこい”素材ですし)。・・・料理の例えはさておき、慣れればささっと出来る作業です。手際よく捌いて、ぜひ量産に励んでいただきたいと思います。

(1)QGISの「ジオリファレンサー」ブラグイン

 位置情報を持っていない地図に位置情報を持たせる作業のことを「ジオリファレンス」と言います。パソコンは、いくら住所を言っても位置を認識しませんので、画面上の座標と地球上の位置(緯度経度)を対応させてやらないと、そもそも「この情報は地図だ」ということすらわかってくれません。しかも、「四隅はここだよ」から始まって、「この地点はここね」と指定を繰り返してやらないと、なんか場所がずれた地図になります。逆に、地図に位置情報がピタッと与えられて、現場に行ってGPSで現在地がパシッと表示されたりすると、とても気持ちいいものです。

 第2回の項目で、QGISは、「プラグイン」というオプション機能を自分で取捨選択して機能をカスタマイズできるソフトであると紹介しました。ただ、今回使う「ジオリファレンサー」プラグインは、最初から標準装備されている機能ですので、新たにインストールする必要はありません。開くところから解説します。

1-1 「ジオリファレンサー」プラグインを開く

 前回の項の終わり、QGISに「地理院地図」(地形図)が表示されている状態を前提にします。
 メニューバーの「ラスタ」から「Georeferencer」を開きます。そうすると、別ウインドウでジオリファレンサーが立ち上がります。
 2-1ジオリファレンサーを開く.jpg 2-4別ウインドウが立つ.jpg
1-2 ジオリファレンサーにハザードマップの画像を載せる
フライパンの上に、素材をのせます。
ジオリファレンサーのメニューアイコンの一番左、「ラスタを開く」をクリックして、画像を選択して読み込みます。
2-2ラスタを開く.jpg 2-5画像を選ぶ.jpg
1-3 位置情報を指示する。
 コンピューターにとってはまだ「ただの絵」に過ぎないハザードマップ画像にポイントを打ちながら、「この地点は、ここだよ」の作業を繰り返します。そのために、先ほどからつないでいる地理院地図(国土地理が提供する、緯度経度情報が完璧な地図データ)と対比させていきます。以下、ご覧ください。

<ジオリファレンサー側で>
@ポイントの追加(黄色いボタン)を選びます。
2-7ポイント追加.jpg
A地図(ハザードマップ)上で目印になる地点を探し、ポイント上で左クリックします。
例えば、特徴ある島の突端や、堤防の端、交差点などです。例えば、この長細い島の突端を目印にするとします。
カーソルを合わせて左クリックすると、位置を訪ねるウインドウが出ますので、「マップキャンパスより」のボタンをクリックします。
2-3目印.jpg  2-8ポイントを指定.jpg
<QGISメイン画面で>
 マップキャンパス=QGISのメイン画面に移ります(地形図が表示されています)。地形図上で先ほど指定した地点と同じ場所を探して、地形図上の点をクリックします。そうすると、ハザードマップ上の地点に位置座標の数字が入りますので、OKをクリックします。以下、場所を変えて10〜20地点ぐらい指定してください。最低でも3地点、地点の数がある程度あった方が位置合わせの精度が高まりますが、多すぎても処理が遅くなります。
 余談ですが、この作業を繰り返すと、嫌でも地図をじっくり見ることになりますので、初めて行く土地でも疑似的な土地勘がついて、「ああ、この景色はここね」と親しみが持てるようになります。
2-4地形図上の地点.jpg 2-5座標の認識.jpg
1-4 「ジオリファレンサー」の設定(←重要なところです)
 位置情報を当てて一気に成形するプロセスは、塩コショウをして「火入れ」するという感じです。
 ただ、しっかりと設定をせずにやみくもに火を入れても(ジオリファレンスにスイッチを入れても)生焼けグズグズ(位置ずれまくり)で食えたもんじゃない(ひどい場合には完了画面に地図が表示すらされない)状態になりますので、もう一声、火加減や温度設定(ここでは座標系と変換法)など、処理するソフト側の設定が重要です。

(1)ジオリファレンサー上で、「設定」→「変換の設定」を選びます。
 2-6変換の設定.jpg
(2)変換の設定を以下のようにします。特に、の「変換先SRS」の設定に注意してください。
 変換タイプは「線形」
 リサンプリングは「最近傍」
 変換先SRSはEPSG:3857−WGS84/Pseudo-Mercator が一番うまく行くようです。

(3)出力の設定
2-8変換の設定詳細2.jpg
 「出力ラスタ」は、ファイル(位置情報を持った画像ファイル)を保存する場所、ファイル名を指定します。
 ファイル名には日本語も使えます。
 「圧縮」はLZWを選びます。圧縮してもファイルサイズは結構大きくなります(10MB程度)
 一番下の「完了時にQGISにロードする」にチェックを入れてください。

1−5 では、ジオリファレンス開始!
ろいろややこしく説明してきましたが、全ての条件がうまく整っていれば、一瞬でジオリファレンスが完了します。
うまく行かない場合は、これまでのステップをもう一度たどってみてください。

(1)ジオリファレンス開始ボタンをクリックします。
2−9開始ボタン.jpg
(2)「完了しました」の表示が出たら、ジオリファレンサーのウインドウを最小化してください。ベースマップの地理院地図(地形図)の上に、ハザードマップの画像が重なっていれば成功です。
「レイヤー」欄の「地理院地図」の上に「tsunami-nishina modified」(ハザードマップのファイル名)が追加されていますので、右クリックして「プロパティ」を出して、透かしてみましょう。
2-10重ね合わせ.jpg
ほぼぴったり重なっているようです。
2−11重ね地図.jpg
衛星写真との重ね合わせも見てみましょう。大丈夫です。肉や魚なら、「よく焼けてる」状態です。
2−12重ね合わせ写真.jpg
1−6 位置情報付き地図ファイル(Geotiff)の取り出し
  位置情報を持たなかったただの地図画像(生の素材)を料理して、位置情報付きのファイルにしました。
 仕上げとして、これをフライパン(QGIS)から取り出して、お皿に載せるなりパンにはさむなりするための単体のファイル
 として書き出す工程です。保存の仕方がちょっと独特なので、注意してください。

(1)書き出すファイルを選択します。
 「レイヤー」欄の、ハザードマップの画像を選択して右クリックをします。
2−12書き出す地図を選択.jpg
(2)「エクスポート」→「Save as」の順で開いていきます。
2-13エクスポート.jpg
(3)保存設定の画面が出ますので、いくつかの場所の設定を変えた上で保存します。
 @まず、「出力モード」を「画像」にします。
 Aファイルを保存する場所とファイル名を決めます(この時、拡張子は"tif"になります)
 BCRSの部分を変えます。現行のものから「WGS84」(下図)に変えます。

2−18CRSを変える.jpg

CCRSを変えると、東西南北の数値がXY座標軸から緯度経度座標軸に代わります。
最終的に、下図のような設定になったら完了です。OKをクリックして、Geotiffファイルの書き出しを確認してください。
2-21Geotiff.jpg 2−21プロパティ.jpg
一見普通の画像ファイルですが、「プロパティ」を見ると33MBもサイズがあります。
スマホ用等に軽くする方法もありますが、解説は次項にします。

posted by いとちり at 10:09| Comment(0) | 防災 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

【連載】地理教師のためのハザードマップ料理法(2)QGISを国土地理院につなぐ

 連載の2回目です。

 前回は、これから料理するハザードマップの下ごしらえ、PDFファイルとして提供されているものを、加工しやすい画像ファイル(pngファイル)に加工する方法を紹介しました。

 今回は、キッチン(ご自身のPC)に、ガス台を設置するような作業です。このガス台は、安くて(ほぼ無料)大変性能がいいのですが、備え付けてすぐに火はつきません。このQGISというソフトは、大きな大きなガスタンク(地図データのサーバー)につなぐことで本領を発揮するソフトなのですが、接続の設定や火加減の調節が、より簡単なカセットコンロ的なソフト(MANDARAなど)に比べると多少敷居が高いので、われわれの業界(地理の先生)でも、使うのに躊躇されがちのように思います。

 ただ、一度ガスタンクに接続して、その強力な火力を体験すると、色々な地図を料理してみたくなります。ただ、一度接続して火がつくのが当たり前になってくると、「あれ?接続ってどうするんだっけ?」と忘れがちでもあります(実際、私自身コロッと忘れており、先達の書かれたブログや本を見て思い出してこれを書いた次第です)。

0)GISソフト「QGIS」をインストールする。

 「QGIS」は、世界中で使われ、有志によって絶えずバージョンアップが行われているオープンソースのGISソフトです。
 「プラグイン」という付属機能を足していく事によって、用途に応じて使いやすくチューンして行くことが出来ます(逆に、滅多に使わないような機能は最初から入れなくてもよい)。
 日本語版サイトから、現在公開されている最新版(ver.3.2.1:開発コードBonn)を使って手順を説明します。
 (↓ダウンロードはこちらから)・・・結構大きなソフトですので、インストールの際は気長に待ってください。
 パソコンのスペックに合わせて、古いバージョンを入れることも可能です。
 私が今使っているPCは、Windows7で、普段はQGISのVer.2.14:開発コードEssen)を使っていますが、手順は基本的に同じです。3.2は、たまにフリーズしますが、頻度は2.14とあまり変わりません。

bonn.jpg
(1)国土地理院と接続し、ベースマップに「地理院地図」を常駐させる
 QGIS自体は色々な機能を持った便利なソフトですが、今回はハザードマップの加工の機能の紹介に絞ります。前置きにある、「都市ガスへの接続」をしましょう。日本最強の都市ガス(=地図データ供給機関)、国土地理院とつなぎます。

1-1 まず、QGISを開いたら、「ビュー」「パネル」「ブラウザ」の順で開き、地図を読み込ませる作業ウインドウを作ります。
1-1ビューパネルブラウザを開く.jpg
1−2 画面左上 「ブラウザ」ウインドウ内の「XYZ Tiles」のアイコンを右クリックします。
    「New Conection」を選びます。

1−3 「接続の詳細というウインドウが出ますので、接続先を国土地理院にします。
Webブラウザを立ち上げて、以下のアドレスにアクセスしてください。
(以下のリンクをクリックすると別ウインドウが開きます)
〇地理院タイル一覧

1-4 ベースマップ欄にある「標準地図」のリンクを開きます。
1-4-1地理院タイル.jpg
1-5 開いた先のページの中ほど、「詳細情報」の欄にある「標準地図」の下にあるURLの文字を選択してコピーします。
1-4-2URLコピー.jpg
1-6 QGISに戻って、先ほどのURL欄に貼り付けます。接続名称は「地理院地図」としておきます。
1-5URLを入れたところ.jpg
1-7 OKをクリックすると、先ほどの「ブラウザ」内に「地理院地図」という項目が追加されます。
  「地理院地図」上を右クリックして、「選択されたレイヤをキャンパスに追加」を選びます。
1-6追加されたことを確認して右クリック.jpg 1-7選択したレイヤをキャンパスに追加.jpg  

1-8 真っ白な画面だったQGISに、地理院地図が登場します。表示したい場所を選び、どんどん拡大して行きましょう。
1-8地理院地図が表示されたところ.jpg 1-9場所を合わせて.jpg

1-10拡大をする.jpg 1-11拡大された.jpg

(2)応用 地図以外の資料も読み込んでみましょう。

 サンプルに、「標準地図」を読み込んでみました。他の地図を読み込んで、ご自身の地図庫を充実させましょう。
 1-2まで戻り、XYZ tilesを右クリックするところから同じ手順です。
 今度は、国土地理院の公開している空中写真を読み込みます。地理院タイルのサイトの下の方、「空中写真」の項目を開き、URLをコピーします。
 1-11-1空中写真を開く.jpg 1-12空中写真URLの場所.jpg1-12空中写真を入れてみる.jpg
今度は、タイトルを「空中写真(最新版)」、URLを該当の場所にします。

1-7 と同じ手順でキャンパスに追加すると空中写真が表示されます。
1-13空中写真になった.jpg
このとき、画面の左下「レイヤー」を見ると、QGISでは2つのデータ(地理院地図と空中写真)を同時に読み込んでいることを示しています。両方を表示(空中写真の上に、うっすらと透かした地形図)を表示してみましょう。
まず、「レイヤー」ウインドウ内の地図と空中写真の表示の順番を逆にします。空中写真の上に地形図が載っている形にしましょう。空中写真のアイコンを左クリックしたまま地理院地図のアイコンの下に動かします。
1-13-1空中写真が上.jpg 1-13-2空中写真が下.jpg
「地理院地図」アイコンを右クリックし、一番下の「Properties」プロパティ:詳細設定)を開きます。

1-15プロパティを選ぶ.jpg 
「透過性」を選び、重ねている地形図の透過性を調節してみましょう。
1-15―1透過性の調節.jpg
重ね合わせが出来ました。
1-15-2重ねた地形図.jpg

(3)さらに

 国土地理院では、地形図、空中写真(昔にさかのぼることが出来ます)を始め、大規模災害の際の緊急測量成果、地質や活断層図などをタイル形式で提供しています。一般の地図画像と違い、サーバー上で画像が連続して送られてきますので、継ぎ目なく見ることが出来ますし、様々な地図同士を重ねてみることが可能です。新旧の空中写真を比べて、浸水した場所の特定や、避難所の配置などの地図を描く作業ができます。

「地理院タイル」のタイルマップ一覧内(https://maps.gsi.go.jp/development/ichiran.html)

2.基本測量成果以外で出典の記載のみで利用可能なもの

 →地震、台風・豪雨等、火山 
 で公開されています。大規模災害時に、専門家による被害状況把握や、民間レベルで被災者向けに情報を地図化して届ける「マップボランティア」が組織される際のベースとなるインフラの一つです。また、過去に起きた大規模災害を詳細に振り返る上での基本的な情報源になります。

kure-before.jpg
災害前の衛星写真(広島県呉市 JR呉線 安浦駅付近)


 kure0018-7.jpg

国土地理院による緊急空中写真撮影(2018年7月15日)
kure-map.jpg

地形図(地理院地図)


posted by いとちり at 07:54| Comment(0) | 防災 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

【連載】地理教師のためのハザードマップ料理法(1)PDFを画像ファイルに

<連載をはじめるにあたって(ちょっと長い前おき)> 
 西日本豪雨で被災された皆様に、お見舞い申し上げます。
 昨年の今頃、倉敷市にお邪魔して、帝国書院の100周年記念行事の一環として、敬愛する創業者の守屋荒美雄師について講演させていただきました。(→いとちり2017年8月15日)。

 災害が起きるたびに思いますが、直接お伺いして汗を流すことはできない分、地図の利用や防災教育のノウハウの共有を通じて被災地の先生方や、教訓を未来に生かそうと頭を巡らす先生方のお役に立つことが、自分に出来る仕事ではないかと考えております。

 頻発する災害を前に、避難誘導の在り方、ハザードマップの活用について議論が盛り上がりつつある昨今です。ただ、改めて指摘するまでもないですが、紙ベースのハザードマップを全戸配布し、いざという時に活用しましょうと言っても限界は見えています。また、地理の授業を始めとした防災教育での活用といっても、さて何をどうしたらよろしいか?という事に関して、総論的なものはありますが、これをこうして、こう使うといったノウハウは十分に蓄積されているとは言い難い(日常的にアクセスできるところにない)というのが実情のように思います。

 ハザードマップをどう料理するかについては、このブログや、教科書会社さんの教員向けリーフレットなどで書いてまいりました。ここ数年のものをリンクがてら紹介しますと・・・。

 〇「いとちりの防災教育にGIS」シリーズ
  (二宮書店:『地理月報』連載)
   ダイジェストをこちらにまとめてあります

 〇被災地支援デジタル地図帳マニュアル
  熊本地震の時に作成した、GISソフト「地図太郎」に関するマニュアルです。
 〇桜島噴火応急防災支援データ集
  桜島噴火の際、ハザードマップや避難所関係のオープンデータをGoogle Earth上に展開したもの。
  災害発生時のデータの取り扱いについて勉強するいい機会になりました。
 〇「記事ぶらり」作成マニュアル(@宮城県立多賀城高校特別講座)
  東日本大震災に関する新聞記事を地図上に展開する授業。
 〇地図で広島を・・・。
  広島市の土砂災害に対応したリンクとマニュアル
  
 改めて読み返してみると、「うーん、使えない事はないけど、ソフトもノウハウも古くなってしまったなあ・・・」というものが多いです。災害が起きてからでは遅いのかもしれませんが、復興支援や防災教育に役立ててもらうために、アップデートは欠かせないと思います。

 この夏、例によってタブレットやらパソコンやらを携えて地元を離れて色々お邪魔する機会を頂いています。
 11月に行われる「第3回 国連世界高校生津波サミット」派遣団のプレゼン準備として西伊豆町へ何回か、新潟県高校社会科研究会地理部会のお招きで、新潟県中越沖地震(2007年)の被災地、柏崎市へ(発災直後にお邪魔して以来になります)。
日本地図学会の公開シンポジウムで富山へ行きます。それらの準備をしていく中で、「ああ、やっぱり今時点の最新ノウハウをマニュアルとして残しておいた方がいいなあ(自分のためにも)」と思い、更新が止まっていたブログを久々に動かしている次第です。一気に書いていくととても長くなりますので、連載記事の形にして、進めてまいります。

ハザードマップを画像化する
さて、ここからが本題です。
4回シリーズでマニュアルを書きました。

1回目のテーマは、自治体が公開しているハザードマップを読みやすく、使いやすく加工することがテーマです。
Google Earthに載せて立体的に見たり、スマホやタブレット上で現在地を確認し、その場で写真や情報を書き込めたらいいんじゃないか?というものです(↓イメージ図)
GE.jpg。 image02.jpg image03.jpg

こうした教材を作るには、なにより先に公開されているハザードマップ(多くは印刷を意図したPDFファイル形式)
を使いやすい画像ファイル(jpgよりもpngの方が何かと使いやすいです)に変換する必要があります。その方法について、意外とスパッと解説されたものがないので、私がいつもやっているソフトと方法を紹介します。

@使用するソフト「Cube PDF」(無料)リンク先からダウンロード、インストールして使います。
cubepdf.jpg
A使い方 インストールすると、プリンタのように動作します。ハザードマップのPDFファイルを、仮想のプリンタで印刷
(紙にではなく、画像ファイルとして書き出す)イメージです。実際に流れを説明します。

BハザードマップのPDFファイルを印刷(orダウンロード)する
まず、自治体のハザードマップのサイトから、PDFファイルをダウンロードします。
 ここでは、静岡県の賀茂郡西伊豆町のサイトにある津波防災マップを使います。
nishiizu01.jpg

 リンク先を開いて、PDFファイルを開き、「印刷」します。
 (Google Chromeで開くと印刷アイコンが出ます)
 一旦ダウンロードしてから改めて印刷してもよいです。
print.jpg
プリンタの設定画面が出ますので、「変更」ボタンをクリックし、普段使っているプリンタから、「CubePDF」に印刷先を変更します。
print2.jpg
印刷先の変更ができたら、印刷します。
プリンタが動く代わりに「Cupe PDF」が起動します。
出力ファイルの設定は、デフォルトではPDFですので、これを画像ファイル(ここではpng形式の画像ファイル)に変更して「変換」ボタンをクリックすると、画像を書き出します。
print3.jpg print4.jpg

出てきた画像をグラフィックソフトで回転させれば完成です。
hazard001.jpghazard002.jpg



posted by いとちり at 05:24| Comment(0) | 防災 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年03月11日

岩手日報号外(震災特別号)を読んで。

 東日本大震災から7年が経った今日、岩手の日刊紙、「岩手日報」が全国6か所で「号外」を配りました。東京・鎌倉・名古屋・京都・高知、そして静岡市です。ニュースを聞きつけて、静岡駅前に行っていただいて来ました。
image1.JPG

 「号外」といっても全12面の堂々たるものです。見出しに大きく「静岡とともに」。陸前高田市上空からの写真(震災当時、副市長だった久保田崇氏:現立命館大学教授は静岡県の出身)、広告欄にはFDA(フジドリームエアライン)の広告(小牧−花巻線)の広告、そして震災直後から岩手と交流を続けている常葉大学のサークルのメンバーの写真(初代の代表は、小学校の先生になられて、うちの隣の学区の小学校に勤務されています)等々、静岡シフトの構成に感心しました。

 私自身の震災のその日、その後の活動、そこで出来たご縁、ネット上のやり取りからリアルな人の交流につながっていったプロセスは、このブログの「防災」カテゴリを追っていただくとある程度わかるのではないかと思います。
 改めて思い返す中で、やはり忘れられないのがiOSアプリ「震災記憶地図」の中身を充実させる過程の中で地図を提供いただいた陸前高田の観光絵地図です。

陸前高田巡検(いとちり:2011年11月6日)

(いとちり:2012年2月21日)
takata001.jpgtakata002.gif

 荒涼とした景色や津波の映像を見ること以上に、この豊かな魅力あふれる地図は、何より心を打ちました。また、「原本とデータは事務所ごと流されて、たまたま盛岡の同業の社のサーバーに残ったからあげます」と連絡を頂いた時のことを痛切に覚えています。
 iOSアプリ「震災記憶地図」から見ることが出来ます。

 その陸前高田ですが、地元のNPOの尽力で松の苗木の栽培が行われ、2017年からようやく松原への植林活動が始まった旨を「号外」の紙面で知りました。向こう50年をかけて取り組む息の長い活動とのことです。

 〇NPO法人高田松原を守る会

 「あれから7年」として振り返る報道が多い中、この「号外」は、「この1年のあゆみ」や、「次の大災害の予測と備え」(南海トラフ大地震=最大級の津波高と、最大の死者数が予測されるのがここ静岡県)にも紙面を割いています。Google Earth上に立体棒グラフで描いた地図は自分も描きますが、改めてカラーで大きく取り上げられるとインパクトがあるなと思いました。

 岩手日報のWebサイトでは、私が修学旅行の教材作りで大変お世話になった「沖縄タイムス」社と並んでGoogle Earthを非常に効果的に使った特集を組んでいます。沖縄戦の証言や広島、長崎の原爆投下と当時の様子をGoogle Earth上で克明に再現した「デジタル・アーカイブ」シリーズや、最近はAIを駆使した白黒の古写真のカラー化に取り組んでいる首都大学東京の渡辺英徳研究室と共同で、震災時の避難者の行動と証言をGoogle Earth上で再現したサイトを公開しています。

首都大学東京 渡辺英徳研究室 × 岩手日報社
 「犠牲者の行動記録」

wasurenai.jpg
 誰が、いつ、どの方向に避難したのか。そしてそこに津波がどう押し寄せたのか・・・。
 後から「鳥の目」で見ると、「なんでよりによってここに逃げるのか?」と思ってしまうのですが、当時の方々にとっては必死に、最善と思われる方向と考え、またそのようなリードがあって避難されており、多くの方々が命を落とされました。"たられば”で考える事は心苦しい所ではありますが、「次の被災地」になるであろう場所に住む我々が、この「動く地図」から学ぶべき教訓は少なくないと思われます。

 「号外」では、高校生記者による学校での防災教育の取材記事も載っていました。
 今年のNIE(教育に新聞を)の全国大会は、岩手県で行われ、大槌町で特別公開授業も主な割れるそうです。震災後初めての被災県での開催とのことで、どのような情報が発信されるのかが注目されます。
 〇NIE2018盛岡大会

 この「号外」は、今のところWebでは見ることが出来ません。
 (昨年の紙面の一部を載せた号外配布の告知はこちら)

 居ながらにして全国各地の地方紙の記事を読めるようになった昨今ですが、あえて紙媒体で、社員の方を派遣して手渡しで配布するスタイルは新鮮に感じます。配布先に静岡を選んでいただいたことは非常に光栄に思いますし、今日が日曜日だったおかげで直接受け取りに行くことが出来ました。社の方と直接言葉を交わし、名刺を交換させていただいて、新たなご縁もできました。久々に岩手にお邪魔して、また新たな教材を作って行けたらと思っています。
posted by いとちり at 21:44| Comment(0) | 防災 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年04月17日

被災地支援デジタル地図帳マニュアル(1)地理院地図の切り出し

 このたびの大地震で被災された皆様にお見舞い申し上げます。

 離れたところから、出来る事は限られてはいますが、最近行っている研究が少しでもお役に立てればと思い、マニュアルを作成しました。国土地理院の地形図を切り出して、大判の地図にしたり、タブレットやスマホで持ち歩く方法です。町内会単位の被害状況把握等にお使いいただければと思います。
 背景地図は、「地理院地図」の他に、「Open Street Map」や、空中写真(被災前)でも行う事ができます。
使用するソフト/アプリ

 地図太郎Plus(東京カートグラフィック社)
 PDF Maps(iOS用、Android用あり)
   Drop Box
   (Android)

 「地理院地図」と「標高区分図」を組み合わせることで、このような地図帳ライクな地図を描いて持ち運ぶことも出来ます。
kumamoto.jpg
aso001.png

posted by いとちり at 23:03| Comment(0) | TrackBack(0) | 防災 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする