勤務校で9月1日の防災訓練に変わる防災講話ということで、全校生徒向けにお話しした講話のスライドをアップします。Zoomで各教室をつないで講話の後、簡単な話し合い活動をしてもらいました。
「一人一台端末」の時代、当初は600人の生徒に「地理院地図」を動かしてもらおうと画策したのですが、さすがにそれは厳しそうなので、こちらで地図を用意しました。2年生より下の学年は「地理総合」で全員触れる機会があります。
一口に「災害に備えよう」と言いますが、防災訓練の定番である地震や津波は滅多に来るものではありません。一方で、風水害は頻繁に起こるようになりました。「地震を取るか、風水害を取るか?」の二択ではなく、普段の風水害のリスクや大雨が降った時の情報に対する付き合い方を見直していくことで、より大きな、よりレアな災害に対しても落ち着いて対応できるのではないかと個人的には考えています。スライドにも書きましたが、以下に「正常性のバイアス」を克服するかが、防災教育の大切な使命なのではないかと思っています。
特に我々富士山の麓はなぜか大きな台風の被害が少なく、「富士山がきっと何かガードしているんじゃないか?」と、もっともらしく言う大人もいます。ただ、改めて歴史をひもといてみますと、富士市の田子ノ浦地域は、津波・高潮の常襲地域です。田子の浦港が昭和36年に作られ、掘り込み式の港湾の建設で、河口の水深が深くなったため、高潮の被害は減っていますが、開港以降も高潮は発生していますし、地震による大津波はまだ起きていませんので、どうなるかはわかりません。また、富士川、潤井川、沼川の三大「暴れ川」がおとなしくなった後、低地が宅地開発され、道路や大型小売店舗の駐車場は舗装されル一方で、農業用の水路が住宅街を走り、下水道網が巡らされるようになった結果、日常的に内水氾濫に見舞われる地域も出てきました。もはや「浸るか、浸らないか?」ではなく、「浸水深はどこまで行くか?」が関心事になっている状況です。
必修科目となった「地理総合」でも、防災に関する単元がありますが、ある程度具体的な地域を事例として取り上げたり、身の回りの地域でない場所でも、他山の石となる場所のケーススタディをする必要があるように思います。
感想を読む限り、サブタイトルに掲げた「自分のアタマで考えるヒント」は提供できたのではないかと思います。
この講話をきっかけに、探究活動で防災を取り上げてくれる生徒が増えたらよいなと思っています。