2020年01月12日

「MANDARA10」で災害情報を地図化しよう(防災教育にGIS)

 二宮書店の教員向け冊子「地理月報」に連載中の「いとちりの防災教育にGIS」シリーズ2その3が出ました。
 今回は、2019年10月12日に上陸した「令和元年台風19号」に関して、国土地理院が緊急公開した災害に関する地理情報の使い方についての内容です。「シリーズ2」では、概論と地理院地図の利用について書いた後、今回からは「フィールド編」に入る予定でしたが、原稿を書いている時に、今回の大災害が起きましたので、予定を変更して書かせてもらいました。
 詳しい内容については、本文をご覧いただくとして、本文中にあるデータの出典へのリンクを貼ります。

(1)国土地理院の「令和19年台風19号に関する情報」
ページの下の方の浸水推定段彩図(速報)」から、
をダウンロードして使います。

(2)国土交通省の「国土数値情報ダウンロードサービス」
「防災」カテゴリの「想定浸水区域」を使います。以下、直リンクです。

【本文ダウンロードはこちらから】itochiri2020-1.pdf
001.jpg002.jpg


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2019年11月10日

GISソフト「MANDARA」で見る洪水浸水域(1)地形図との重ね合わせ

 国土地理院の防災関連情報のサイトから、令和元年台風19号の浸水域のデータがShapeファイル(汎用性の高いGISデータ)として公開されています。フリーGISソフト「MANDARA10」で扱う方法を何回かに分けて説明します。Shapeファイルの読み込みや、色の設定など、色々面倒なことがありますが、今回は省略してあらかじめ設定したMANDARA用ファイルをアップしますので、直接開いて使っていただけます。
00浸水断彩図.jpg
chikuma.mdrmz 千曲川水系(長野県長野市など)

abukuma.mdrmz 阿武隈川水系(福島県郡山市など)

arakawa.mdrmz 荒川水系(入間川・越辺川・都幾川)(埼玉県川越市・富士見市など)

kujigawa.mdrmz 久慈川水系(茨城県常陸太田市など)

yoshida.mdrmz  吉田川水系(宮城県大郷町・松島市・東松島市など)

【手順】
(1)MANDARAファイルを開き、描画開始ボタンをクリックします。
01start.jpg
(2)背景のない浸水範囲図が表示されます 
3描画したところ.jpg
(3)表示⇒背景画像の設定を開きます。
4背景画像設定.jpg
(4)背景画像に地理院地図を選択すると、背景に地理院地図(現代の地形図・航空写真など)が表示できます。
6地理院地図が背景.jpg
(5)範囲を拡大する場合は、「表示」⇒「表示範囲の指定」か、マウスの拡大機能(真ん中のダイヤル式スクロール)を使ってください。
8拡大図.jpg
(6)もう一度「表示」から「背景画像設定」に戻り、背景を旧版地形図(今昔マップweb)に換えてみましょう。国土地理院地図⇒今昔マップに選択を変更し、二段目の地図選択で表示したい地図を選びます。北関東および長野市は、「今昔マップ関東」の、東北地方は「今昔マップ東北地方太平洋岸」カテゴリの各時代の地図に該当します。
10今昔マップを選択.jpgkonjaku01.jpg
(7)今回の台風の浸水範囲が旧版地形図上に表示されました。
konjaku002.jpg
(8)MANDARAはデータファイルのkmlファイル(Google Earthでの表示ファイル)での出力や、Google Mapでの表示に対応しています。ファイル⇒各機能を選びます。ここではKMLファイル出力を選択します。
kml0001.jpg

(9)設定画面です。輪郭線は「なし」にした方が見やすいと思います。「OK」をクリックするとkmlファイルを書き出します。
※何らかの形でソフトがエラーを起こす場合は、「続行」をした上で、設定を変えてみてください(凡例画像の表示をオフにするなど)
kml0002.jpg
(9)Googe Earthでの表示では、浸水域が濃い色になっていますので、透過度や色をGoogle Earth上で調整します。改めてkmlファイルで保存すれば、開いただけで見られる教材になります。
ge-01.jpg

 以上、簡単ではありますがMANDARA10を使った表示です。
 背景地図は、MANDARA10にデフォルトで設定されている「地理院地図」と「今昔マップ on web」を
使いましたが、公開されている「タイルマップ」のアドレスを入れることで、様々な地図や航空写真(発災直後の緊急撮影写真を含む)を表示させることも出来ます。これは稿を改めて説明します。

 実際に被害に遭われ、今も大変な生活を余儀なくされている方が多い中、簡単に「教材化」という言葉を使うのは大変心苦しいところですが、貴重な教訓を学び、共有して行くことで、次の災害の被害を最小限に食い止めること、子供たちの将来設計に資するための教育の一端を担う上で、公開データを分かりやすく見せる努力を続けていく事は、地理教育に関わる人間の使命の一つと考えています。
 災害情報を使った授業実践については、私も二宮書店の「地理月報」で連載していますが、以下の本が大変参考になりますので、併せて紹介させていただきます。

岩田 貢・山脇 正資編(2013) 『防災教育のすすめ―災害事例から学ぶ』,古今書院,142頁。



           




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2019年11月04日

「地理院地図」で情報を重ねてみよう(二宮書店「地理月報」2019.10.25号)

 二宮書店の高校教員向け冊子「地理月報」の連載「いとちりの防災教育にGIS」(シリーズ2:その2)が出ました。

 今回は、国土地理院が公開している地形図のサイト「地理院地図」を使った防災教育教材の提案です。
 全国の地形図をWebで見る(スマホでもタブレットでもOK)ことが出来る「地理院地図」は、背景を変えたり、災害情報を重ね合わせるなど、様々な使い方が出来ます。紙面の関係で、ごく限られた機能の紹介に留めていますが、今後「フィールド編」を書き進めて行く中で要所要所に登場してくることになると思います。

 「シリーズ1」の記事と、連載には載らないオリジナルの「フィールド編」を加えて書籍として刊行される予定です。
 2022年に高校で必修科目となる「地理総合」に間に合わせる形で、防災をはじめとした「身近な地域の課題の抽出と解決策の探究」のヒントになるような本に出来ればと思います。

01.jpg02.jpg

 本文(PDFファイル:2.6MB)itochiri2019-11.pdf

【バックナンバー】
「いとちりの防災教育にGIS(シリーズ2−1)
(いとちり:2019年5月12日)
「いとちりの防災教育にGIS」(シリーズ1)
(二宮書店「Web地理月報」より)
「いとちりの防災教育にGIS」(シリーズ1+指導書付属DVD版)
(「いとちり」2017年3月23日)
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2019年10月14日

台風19号の爪痕(国土地理院浸水推定断彩図から)

 台風19号で被害に遭われた皆様に心よりお見舞い申し上げます。
 未だ被害の全容がわからず、不自由な思いをされている方もいらっしゃるかと思いますが、被災の記録をより分かりやすい形で若い世代に伝えていくこと、情報の在り処と公開された情報をより使いやすい形で教育現場に発信することが拙職の使命と心得ております。ご理解いただければ幸いです。

 さて、今回の災害に関して、国土地理院が緊急撮影した空中写真と、それらを基に作成した浸水深の推定段彩図を公開しています。(https://www.gsi.go.jp/BOUSAI/R1.taihuu19gou.html)。ファイルサイズの大きいPDFファイルで公開されているものを、画像化し、Google Earth用のKMZファイルに変換しました。国土地理院では、転載を含む公開はOKと明記されていますので、以下掲載させていただきます。ファイルサイズの関係で解像度が若干落ちています。

shinkansen.kmz(北陸新幹線車両基地付近:8MB)
nagano-IC.kmz(長野IC付近:7.3MB)

また、浸水区域をGISソフト“QGIS”でなぞり、ポリゴン(図形)データを別途作りました。
shinsuizone.kml(Google Earth用kmlファイル)
shinsui-zone.zip(汎用GISデータ Shapeファイル)

PDFファイルを変換したkmzファイルはこんな感じです。
001.jpg
浸水範囲をなぞったデータはこんな感じです。
002.jpg
両方を合わせるとこんな感じになります。
003.jpg
 浸水断彩図から浸水範囲を取り出すことで、他のデータとの重ね合わせが可能になります。
 例えば、国土交通省の「国土数値情報」http://nlftp.mlit.go.jp/ksj/で公開されている「想定浸水範囲」のデータと重ね合わせて、どこまでが「想定内」で、どこからが「想定外」だったかや、旧版地形図の閲覧とKMZ書き出しが出来るアプリ、「今昔マップ3」http://ktgis.net/kjmap/を使って旧版地形図上に浸水範囲を重ねて地形との関連性を見るなどです(ただし、対象となる地域が限られているので、今回被災した地域すべての旧版地形図が見られる訳ではありません)。

<追記>
浸水域のkmlファイルを国土地理院の地形図閲覧サイト「地理院地図」https://maps.gsi.go.jp/#5/36.104611/140.084556/&base=std&ls=std&disp=1&vs=c1j0h0k0l0u0t0z0r0s0m0f1
で開くことが出来ます。
 機能ツール作図・ファイルの順で開き、「ファイルから読み込み」を選択
 「ファイルを選択」でkmlファイルを選び、読み込みます。
 よりくっきり、背景地図も替えられますし、立体モデルも描けます。
chiriin01.jpgchiriin03.jpg


 速報データをもとに、ざっと作ってみましたが、今回の災害はとにかく広範囲です。
 独自に空中写真のGISデータ化や、自由な利用が出来る地図の作製など、地理学者、技術者の方々が協力して作成に取り掛かっており、災害が起こるたびに頭が下がる思いです。ただ、そうやって完成したデータを防災教育に生かすためには、もう一ひねり、使いやすい形にする必要性を感じます。GISをある程度使いこなす教員(地理とは限りません)のネットワークを生かして、災害データの教材化、アーカイブ化を組織して行く必要性を感じます。

 取り急ぎの作業報告ですが、また追ってデータの加工にかかっていければと思います。





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2018年08月01日

【連載】地理教師のためのハザードマップ料理法(4) GeoTiffファイルを盛り付ける

 連載の4回目です。位置情報を持ったハザードマップ画像(Geotiff)ファイルを作りました。
 位置情報を持っていますので、様々なソフトで開いて更に料理することが可能です。ただ、ファイルサイズが大きいので、非力なコンピューターやスマホなどではちょっと扱いが大変かもしれません。代表的な利用法を紹介します。

 Google Earthの上位バージョン、Google Earth Proでは、Geotiffファイルを直に読み込んで重ね合わせ、KMZファイル(画像つきの情報ファイル)に書き出すことが出来ます。

(1)「ファイル」→「インポート」を選びます。
(2)読み込むファイルの形式から「Geotiff」を選びます。
(3)保存されている場所のGeotiffファイルを読み込みます。
(4)このような表示が出てきたら、「縮尺」を選んでください。
3−3問いかけ.jpg
(5)Google Earthの上にハザードマップが表示されました。長い道のりでした。
3−4完成.jpg
3-7立体化.jpg

有償のソフトですが、Geotiff画像を読み込んで大判印刷(A4の紙を何枚も重ねての印刷)をしたり、スマホ向けに軽いサイズのKMZファイルにすることが出来ます。
以下の図は、地図太郎Plusでファイルを読み込み、縮尺を2500分の1にして大判印刷をかける仕様の画面です。
A4で17枚の「ビッグハザードマップ」を作れます。
3-5地図太郎.jpg
地図太郎で再度ファイルを書き出す際、画像ファイルの形式(Geotiffから軽いpngやjpeg)に変えて、kmlを別々に書き出すと、ファイルサイズは10分の1以下になります。Goole Earth Proでない一般のGoogle Earthでも開けますし、スマホやタブレットでも開けるようになります。
3-6地図太郎2.jpg
3.Avenza Maps(スマホ・タブレットアプリ iOS/アンドロイド対応)
有償アプリですが、無料版でも一度に3枚まで、Geotiff画像を読み込んで、オフラインでGeotiffファイルを見られます。
GPSで現在地を表示したり、写真やメモを地図上に埋め込んだり、歩いた軌跡をルートで記録したりすることができます。
 以下、現地フィールドワークで使ったタブレットのスクリーンショットです。左の写真中央、青い丸が現在地、「地図マーカー」と書いてあるアイコンに触れると写真にリンクします。

avenza01.jpg avenza02.jpg

posted by いとちり at 18:22| Comment(0) | 防災 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする