2011年01月22日

那覇の「24時間貨物ハブ空港化」考

 先日、日経新聞で、夜中もひっきりなしに貨物機が離着陸する那覇空港を、えらく好意的に書いていました。深夜1時過ぎに到着する格安旅客便もできたようで、そんな時間に着いていったいどうやって市街に行くのかと思ったら、「タクシーで15分もあれば着くから余裕さ」みたいな旅のアドバイスがネットでも飛び交ってます。確かに、自分が行った時も、ちょこっとモノレールに乗ったらすぐに市街に入ったのを覚えています。
 「地理的な優位性」とか、「沖縄経済の活性化」ということで、沖縄県が莫大な投資をして新貨物ターミナルを作り、オープンと同時に全日空が貨物拠点を置いて、日経新聞曰く、
「北海道で朝とれた魚が沖縄経由で香港に行って、翌日の昼には刺身で出される」のだそうです。何か、いいことづくめのようにも見えますが、単純に考えてみると、「空港のそばの住民はたまんないだろうな」と思います。 ちょっとGoogle Earthに定規を当ててみました。滑走路のすぐ東に住宅地が迫ってますが、一番近いところで900mそこら。これは近いですね。少なくとも深夜や早朝にジェットエンジンをかっ飛ばすような空港ではないように思いますけどいかがなもんでしょうか。しかも、住民にとってみれば、北海道の荷物を中国に受け渡しするという、「ただの中継点」としての利用のために使われている。お客さんが下りて何か買っていくわけでもなし・・・・あんまりいい気分ではないと思います。観光客も「ゆっくりしに来ている」(よく寝たい)わけですから、ホテルなどは、防音工事等、余計な出費がかさむかもしれませんし、降りたら那覇市を素通りされて行く可能性が高まるかもしれません。表面的な数字は「大成功」と映りますが、空港及び那覇、そして沖縄全体の「活性化」「経済効果」はどうなのかはわからないところです。

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 なぜ、こんなに住宅地に近いのに「24時間空港」なのでしょうか。しかも昨日や今日24時間化されたわけでもないようです。実は、那覇空港は自衛隊との共用の軍民共用空港であり、もともと場所柄「スクランブル発信」や「米軍との共同訓練」などが多いため、「軍用基地」としての性格上、24時間利用可能になっているようです。ただ、この空港は中心街にも2q程度と近いので、よほどのことがない限り深夜早朝のフライトの設定は自粛していたようです。
 県では、さらなる滑走路の延伸も計画しているようですが、工事の予定地には、古くからの遺跡があり、周辺町村は反対の意思を示しているのだとか。「中央政府vs沖縄県庁」の構図がよくクローズアップされますが、沖縄県庁自身も結構ゴリゴリとやっているようですね。選挙でちゃんと争点になったのかな・・・?
 さてこの深夜も開いてる
「沖縄ハブ空港」(平たく言えば、空のトラックターミナル)、赤字を抱えた地方空港の活性化策として、視察が絶えないようです。もちろん我らが静岡空港も参考にしようとしています。とにかく夜遅くに沖縄便さえ飛ばせば、あとはどこにでも運んでくれます。また、日本の大動脈、東名高速道路からほぼダイレクトに(I.Cを降りて枝線をだらだらと走っていくことなく)空港に到着できますから、夜間や早朝に運ばれてきた荷物も、午前中には各地に運べます。東名沿線の精密機械の会社や、生鮮食品を扱う業者にとっては魅力的かもしれません。浜松あたりの研究所で、ぎりぎりまで改良を重ねた試作品を
海外の現地工場に翌朝一番で届けるなんて芸当もできるでしょう。ついでに仕事帰りの観光客でも乗せれば一石二鳥というわけです。・・・・が、飛び立つ方も、降ろす方も、あんまりいい気分はしませんね。 
 この手のニュースを見ると、つい提灯持ちみたいな授業をしたくなってしまうのですが、あえてミソをつけてみました。民主主義の基本は「多数決」、資本主義の基本は「利益の最大化」ですが、深夜動かすことで得られるメリットと、それで迷惑をこうむる人の不利益を天秤にかけて、「ま、メリットの方が大きいからいいかな?」と単純には測れないところがあると思うのです。「新聞はこう持ち上げてるけど、記事にならないところではこんな考え方もできるよね」とか「これを自分たちの周りにあてはめたらどうなるかな?」と、投げかけてあげることが、「地理」の授業で教師が添える「付加価値」なのではないでしょうか。

 参考までに、アジアのハブ空港の大本命、仁川国際空港のGoogle Earthも載せます。金浦空港時代からはかなり離れてしまいましたが、離れ小島を丸ごと空港にしていますから、周りに住宅もへったくれもないですね。
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【リンク】
●ANA沖縄貨物ハブ&新航空ネットワークの優位性
http://www.ana.co.jp/cargo/ja/int/okinawa/okinawa_01.html
貨物版の航空路線図や、ダイヤが参照できます。
●航空輸送統計年報(国土交通省)
http://www.mlit.go.jp/k-toukei/11/annual/11a0excel.html
 空港ごとの取扱貨物量や、都道府県間の航空貨物の移動量などが参照できます。沖縄関係の貨物の取扱量がどのくらい伸びているか見たいときに。
●沖縄離島ブログ
http://blogs.dion.ne.jp/uminchu/archives/8886198.html
那覇在住のブロガーのぼやき。午前4時台に2回、5時台にも2回・・・・常軌を逸していると思う」
私もそう思います。
与根で基準超W75 那覇空港騒音(琉球新報2009年9月9日)
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-149624-storytopic-1.html
昼間だってうるさいんですから・・・・。
ANAの「沖縄航空貨物基地」を視察して(財団法人静岡経済研究所)
http://www.seri.or.jp/column/takahiro-u/post_311.html
 他の地方空港を「各駅停車」しながら沖縄ターミナルに行く貨物便の発想は面白いと思いますが、「茶畑空港」の24時間化は、必要ないでしょう。
 
posted by いとちり at 00:02| Comment(2) | TrackBack(0) | 静岡空港 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年12月16日

成田空港の反撃←静岡も見習って!

 12月から運航している「成田空港〜浅草・上野間¥1000」というリムジンバスが人気を集めているらしいです。
http://airportnews.jp/headline/612/
(みんなの空港新聞)

 空港から市街地までの運賃が割高だったり、いくら速いといっても乗り継ぎが面倒だったりすると、特に初めてその国に降り立った外国人には不安が増大します。自分自身、外国、特にアジアの国々に行った時、同じ思いをしたので、この指摘はよくわかります。その点、到着ゲートのすぐそばから、誰でも知っている場所にむけた行き先を書いた割安のリムジンバスは、とても安心感があります。

 記事によると、このバスは、タクシー会社が運営していて、格安の料金を出すために旅館組合等をスポンサーにつけているのだとか(座席のポケットに
旅館の案内の入ったマップなどが入っているとなお親切ですね)。

 さて、ひるがえって我らが静岡空港。外国からの個人旅行客(日本人から見てもそうでしょうが)の立場から見ると、まあ不便この上ない事は確かです。最寄りのJR駅である島田駅まで¥500。うーん、成田バスの半分。静岡駅まで¥2000。うーん、成田から都心に出るより高い(しかも遅い)。更にそこから新幹線に乗って、乗換乗り換え伊豆やら富士山麓に行こうなんてことになったら、まあとてつもない出費ですね。
「日本国内の移動費で国に帰れるわ!」なんて人が出てくるはずです。
 

 今、静岡空港を使う外国のお客さんが増えているとのことですが、大部分が団体のお客さんです。
 確かに、最初の訪問が団体で、その中の何%かに
「気に入ったから次は一人で来てみたい」という殊勝な人がいるかもしれません。しかし、静岡空港(関空なんかもそうですが)は、「団体で動く場合と、個人で動く場合の国内移動のコスト(時間、お金)がけた違いに違う」のが現状です。

 「静岡空港を使う外国人客が増えている」ことは紛れもない事実です。「また来たいな」と思った時、空港と各地をつなぐ個人旅行客向けのアクセスをどう安く整えていくかは大きな課題だと思います。

 例えば、「静岡空港→西伊豆ルート」の値段を、思いっきり安くしてみてはどうでしょうか?
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(西伊豆町観光協会より)
http://nishiizu-kankou.com/event/2010/07/post_4.html

 伊豆は伊豆でも、西伊豆は、東京方面から公共交通で行くのはとても不便です。
観光バスでも、沼津のインターを降りてからが果てしなく混みます。ただ、
「海に沈む夕日と赤く染まる富士山」は、どんな国の人にも感動を与えられると思います。女性の一人旅に、カップルにPR力は高いと思うんですが、なにぶん途中の交通費が高いですし、1日1往復とは、本数が少なすぎです。

 外国人にとっては、東だろうが西だろうが「伊豆」は「IZU」ですし、寒いのが嫌いな北海道人(そういう人もいる)でちょっとお金のある人はひょいと飛行機に乗って伊豆やら沖縄を目指します(北海道にいた時、冬場は旅行会社のパンフ置き場は両方面のパンフで埋められて驚いた記憶があります)。冬の今こそ静岡空港の到着ゲートに
「伊豆行き最短最安!バス&クルージングで¥1000ぽっきり」なんて看板を立てれば、話題になる事間違いなしです。浮いたお金で美味しいものを食べれば、地元にもお金が落ちます。「こんなに安いのなら」ということで、リピーターになってくれるかもしれません。

 「そんなことできるか!」と思わないでください。伊豆の旅館やホテルは、新宿やらあちこちから
「¥0」送迎バスを頻繁に出してますが、あれにかけるお金の何割かを出し合って、ベクトルを西方面に向ければいいだけの話です。お客は東から来るだけではありません。

 成田にできて静岡にできないわけがないはずです。まずは静岡空港の国際線を増やすこと(アジアのハブ、仁川との本数を増やせば、韓国以外の国からも乗り継ぎやすくなります)、そして空港から各地、特に西伊豆方面を信じられないくらいの値段でつなぐことが必要です。あとは「富士」かな・・・・?富士山は、東京から山梨側に高速バスで行った方がはるかに便利で本数も多いので、やらなくてもいいと思います。

posted by いとちり at 23:56| Comment(0) | TrackBack(0) | 静岡空港 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年09月30日

さらば小松

  来年3月をもって、小松―静岡便は廃止されるようです。
  地方空港間を結んでニッチ市場を開拓するという実験は、転換点を迎えました。
  熊本便、鹿児島便、松本便・・・・というか静岡空港は大丈夫?

  昨日今日と出張で、「空港の真下」を通りました(新幹線で)。駅でもできれば違うんでしょうが、いや、駅ができる見込みもないまま作ってしまったのがそもそもの問題なのかもしれませんが、静岡資本のFDA、なんとか頑張ってほしいものです。
 ちなみに、「Google Earth」上では、静岡空港はまだ開港していません。滑走路には大きな×、地形のDEM(標高を表すデータの集まり)も、空港開港前なので、立体化すると、ご覧の通り滑走路はぐにゃぐにゃになります。まあ、これだけの山を崩し、谷を埋めたという事の確認にはなりますけど。
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posted by いとちり at 22:57| Comment(0) | TrackBack(0) | 静岡空港 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年09月08日

羽田―名古屋線ができるらしい

  正確に言うと、「1982年以来、29年ぶりの復活」らしいです。

  ちょっと昔、東海道新幹線に初めて「のぞみ」が走った時、朝一番の「のぞみ」が、名古屋駅を「通過」するダイヤを組んで(徐行ですが)して、名古屋人を激怒させた挙句、すぐにやめたという「事件」ありましたが、「羽田も国際化するし、便利だがや」という意見と、「セントレアをもっと便利にせないかんがー。関空みたくなるで」という意見とに分かれる・・・・のかな?。

 運航する“スカイマーク”も考えたもので、「名古屋・東京駅発の最終の新幹線が出た後で飛び立つ」ダイヤを組むんだとか。なるほど、海上空港発海上空港行きなので、そういう技が成り立つわけですね。
下世話な話なんですけど、新幹線に乗り遅れたら「あーあ」と言いながら、品川や名駅の前に「売るほどある」ビジネスホテルに飛び込んで、翌朝一番の新幹線に乗っかっていってもいいような気もしないまでもないです。価格設定が勝負ですね。
  まあ、
「実験大好き=もうからなければすぐ撤退」の同社のことですから、これも「社会実験」、「話題づくり」の一つとして見ておいた方がいいのかもしれません。

 実験ついでに、「静岡―羽田―茨城線」なんて路線はどうでしょうか?静岡の先に「松本」あたりをつけても可です。特急列車みたくて楽しいような気がします。特に静岡空港や茨城空港周辺は、「天下の羽田」に出るには微妙に厳しい立地条件にあるので、意外と需要があるのもしれません。あるいは、外国のLCC(ローコストキャリア)よろしく、値段を高速バス並みに落とすとか、静岡や茨城で出入国する外国人は半額にするとかしてもいいでしょう。飛行ルートをどうするかは問題ですけど、「羽田―静岡」だったらいい感じで空から富士山、見えるんじゃないですかね。
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【勝手に想像する「羽田→静岡空港」ルート】






  大島の航空標識を目指す幹線路を飛びながら高度を上げ、上がりきったところで今度は着陸態勢に入るので、高度を下げるために駿河湾内をぐるっと回って(晴れていれば、海越しに富士山が見える。多くの静岡県人にとって、自分の街を空から見られるチャンス到来)茶畑の中の空港に着陸。・・・うーん、何か
初日の出を見る遊覧飛行みたいな趣ですが、「移動」よりも「景色を楽しむ」ことに特化して売り出してもいいんのではないでしょうか・・・・・?チャーターでいいので、「県民の日」とか「富士山の日」にでも飛ばしてほしいですね。

【リンク】羽田―中部国際便詳しい情報はこちらです。

「みんなの空港新聞」2010年9月7日

http://airportnews.jp/headline/549/
posted by いとちり at 21:21| Comment(0) | TrackBack(0) | 静岡空港 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年09月01日

新航路:静岡―松本線

 静岡空港を拠点とする、「フジ・ドリームエアラインズ」(FDA)が、冬季ダイヤを発表しました。
 
 最大の目玉(?)は、「静岡―松本線」の開設でしょう。
 まあ、単体の路線というよりも、既存路線の延長線上(静岡―松本―札幌線、松本―静岡―鹿児島線)
なんですが、ちゃんと静岡―松本間が1万4500円(片道大人普通運賃)で搭乗できます。
 
 この間、甲府に行って思ったのですが、日本列島(特に中部地方)って、ほんとに縦(南北)の移動が面倒なんですよね。故に交流は少ないですし、文化も隔たりがあるように思います。前にもどこかで書きましたが、高校の修学旅行が松本経由で白馬までバスだったのですが、松本に着くころには総員ぐったりというくらいに時間がかかって(しかも冬なので、ろくに歩きまわれず)「もう、二度と行きたくない」なんて思いながら今日に至ります(そういえば、松本行ってないなあ・・・・)。
 
 Google Mapで調べてみると、静岡―松本が約3時間半(名古屋経由)、富士―松本が約5時間(身延線経由)、三島―松本で3時間半(新宿経由)と出ました。飛行機でつながると、フライト自体は30分ぐらいでしょうか。まあ、そうしょっちゅう利用する人もいないと思いますが、小松線同様、「ダイレクトにつながった」という心理的効果は大きいでしょうし、正規運賃は正規運賃としておいて、団体ツアーなどを共同で考えて行くなど、工夫するところはあると思います。
 こんなに近距離でも飛ばせるのならば、次はいっそのこと「松本―静岡―羽田・成田」とか、「松本―静岡―関空」なんて作ってみてもいいのではないでしょうか。乗り継ぎ便の会社とのコードシェアにして、思いっきり安くするなどすれば、需要が結構あるように思います。

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posted by いとちり at 06:16| Comment(0) | TrackBack(0) | 静岡空港 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする