2011年01月28日

進化する地図・危機に立つ地理(伊藤「教授」の大学っぽい講義(4):最終回)

 「伊藤教授」シリーズ、今年もめでたく大団円を迎えました。
 
 テーマは「進化する地図・危機に立つ地理」としました。

 原案は、今年の「年頭所感」(いとちり:2011年1月4日)です。

 このままでは「地図栄えて地理滅ぶ」です。
 
 GPSの原理も、地図やデータの「読みこなし方」も知らない(知る必要もないと思う)国民が、ブラックボックスな端末を片手に、過保護なまでのナビゲーションや情報検索サービスを場当たり的に消費する社会・・・・・政府が目指す「g空間社会」ってそんな社会じゃないはずなんですけど、このままでは着実にそうなっていくと思います。

 数字で示した通り、「高校地理教師」の採用も、差別的に少ない(静岡県では毎年たった1人で、職業高校の専門科目よりも少ない)ままです。静岡県のように科目別の採用試験をしない県(「地歴科」として一括採用)では、
地理の教師の採用が実質ゼロという県も少なくないと思います。合計特殊出生率が低い国の人口はいつかゼロになるように、このままでは「地理」という科目、高度な科学の一端を伝える文化も、日本ではいつか消滅してしまうでしょう。

 センター試験に代表される、異様なまでにデータ化された大学受験のシステム、過去の経験則に基づいて「常識的な科目選択」を強いる進路指導、教員の人事や個人の得手不得手で
「選択できない(させない)選択科目」の存在を黙認しつつ、「未履修」問題のような問題が騒がれると、取って付けたかのごとく大騒ぎをする教育行政のずさんさが、「地理」だけでなく、日本の科学教育と、人材の育成を退行させていると思います。

  私は、皆さんに、「何はともあれ、高校で“地理”を履修できた君たちはラッキーだった」と話しました。今年も数十万人の高校生が地理「非履修」のまま高校を巣立ちます。

 批判ばかりしていても始まりません。「高校地理」を知らないまま大人になった何百万人もの人達(一番上は、私よりちょっと下の、30代前半)が「地理」に興味を持った時、「地理の考え方」が必要になったとき、世界史や日本史の専門の先生が「地理を教えざるを得なくなった」とき、自分で学べる環境と教材を提供できるようにするのも、この「いとちり」シリーズの大切な役割だと思っています。サイバー空間だけでなく、本や雑誌、そして講義などのリアルな空間で、時には高いところから、普段は皆さんの目線で、世の中の地理を料理して提供できればと思います。
 
 ちょっと気が早いですが、卒業する皆さんの活躍をお祈りします。
 たまには「いとちり」をのぞいてやってください。


【進化する地図・危機に立つ地理】
crisis.pdf

 
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2011年01月27日

1月恒例:伊藤「教授」の大学っぽい講義(1)場所論

 1月のセンター試験が終わってからの何時間か、「地理の勉強終了」モードになってしまった皆さんを相手に、「大学っぽい」「地理学」の授業をやっています。普段は、教科書片手に「教える」(Teach)立場ですが、世の中のトピックを拾い集めてストーリーに仕立てて、さらに学びたい人のために文献案内や先行研究を示す「講ずる」(Lecture)の作業はなかなか難しいものです。ぜひ、紹介された文献を手に取って、「大学での学び」の世界に触れてください。

 第一回は、わが母校が推薦入試合格者向けに出した課題図書の解題です。「地理学科」なるところがどんな「学び」を要求しているのか(それを事前に知るためのテキストとしてはかなりハードですが)、「地理学」というのはいったい何をする学問なのか、「料理」に例えて講じてみました。

【第1回:”場所”の地理学―哲学と地理学のシンプルかつ重要な関係】
basho.pdf

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1月恒例:伊藤「教授」の大学っぽい講義(3)電気の地理学

 第三弾は電気です。
 京都の琵琶湖疏水からスマートグリッドまでまとめてみました。
 「煙突の森」の富士市も、考えようによっては「ミニ火力発電所」の集まり。バイオマス燃料等を工夫して、発電に持っていけば、「視察観光のメッカ」も夢でないというくだり、妙に関心を集めましたね。誰かを悪者にするのではなく、今ある産業とインフラをどう生かしていくかという発想が、まちづくりには大切なことなのではないかと思います。
 シリーズ最終回は、明日です。

【第3回:電気の地理学―巨大「電力会社」はなくなるのか?】
denki.pdf
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1月恒例:伊藤「教授」の大学っぽい講義(2)水の地理学

 第1回が「理論」と「哲学」で50分。やる方も聞く方もかなり応えましたね。
 大学は1コマが90分(場合によっては120分)です。このくらいで根を上げていてはいけませんよ。
 さて、第2回目は、ガラッと内容を変えて「水」をテーマにお届けしました。理系の皆さんですから、何らかの形で「水」に関わる人が多いのではないかと思って作ってみました。
 講義でもふれたとおり、わが街富士市は、安くて、おいしくて、豊富な水に恵まれた街です。多くの人が、今よりも高くて不味い水の土地に行くわけですが、「住めば都」「水になじむ」なんて言葉もあります。徐々に慣れていってもらえればと思います。

【第2回 水の地理学―「水商売」の時代】

walter.pdf(387kb)

posted by いとちり at 22:05| Comment(0) | TrackBack(0) | 吉高授業用 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年01月28日

コンビニ論争

 3年生の最終授業、クローズアップ現代の「コンビニ論争」(12月11日放映)を見てもらいました。

 世界に正解はない。だから地理を学び、図示して考える。などとかっこつけたことを言いつつ、3年生の十号を締めくくりました。大学に行ったら、是非テレビの中や本の著者として活躍する先生方を相手に、がんがん議論をする学生になって欲しいと思います。何度も言いますが、「大学の学びは、アフター講義にあり」ですよ。

 コンビニの24時間営業をやめるか(やめられるのか)は、結構ホットな議論になっているようで、今日のビデオもYou tubeにもアップされていました。「コンビニ 論争」で検索すると出てきます。 1つだけ貼っておきます。

 コンビニを24時間、何事もなかったかのごとく動かすには莫大なエネルギーと経費がかかるにも関わらず、もうけはほとんどなし。強盗や暴漢のリスクはあるわ、経営者はしんどいわ、とにかく大変なわけです。近頃は、スーパーやファーストフードも24時間化して、「ちょっと、過剰サービスなんじゃないの?」と思うこの頃。夜勤と深夜営業は何とかならないものかなとつくづく思いました。

 

 番組の最後に出ていた広島県呉市にオープンした7時〜11時のローソン。実は、同社が環境対策へのメッセージを込めて、技術の粋を結集して建てた究極のエココンビニとして、業界では有名のようです。まあ、車もそうなんですが、ハイブリッドカーを選ぶより、乗らない、使わないのが一番なんですが、これからはこういうコンビニが増えていくのかもしれません。

 20代の頃、修学旅行先のコーディネートで歩き回った環境先進国・ドイツには、そもそも「コンビニ」がありません。スーパーを含むほとんどの店が8時には完全閉店。しかも日曜は休み。カメラの電池か何かが必要になり、宿の人に聞いたら「ガソリンスタンドなら、なんと10時まで開いてるぞ」と言われ、宿から街灯もない真っ暗な田舎道を懐中電灯片手に買いに行った記憶があります。今の日本だったら信じられない話ですが、この国の人々は、みんな「そんなもんだ」ということで暮らしています。日曜は教会に行ってゆったりする日。夜は家族と団欒して、とっとと寝る(その代わり朝のスタートはむちゃくちゃ早く、学校は朝7時半から)。「筋金入りのエコライフ」がそこにありました。

 いろいろと示唆に富む話題です。どこかで思い出してもらえると嬉しいです。

【リンク】

呉市の「エココンビニ(ローソンのプレスリリースから)

全国初の「環境コンビニ」が誕生(呉インターネット写真ニュース)

(LED照明など、内部の写真などが詳しく載ってます)

Eco建築探訪「ローソンの電力使用料を削減せよ−ローソン4つの挑戦」

(建築コンサルタント水谷義和氏のコラム)

理系じゃけん(エンジニア「めたのさえた」氏のブログ)

「これだけのものを作るのにかかった環境負荷を何年かかって返せるのか、全然触れられていないという「理系的突っ込み」がクール。他の理系に特化した記事は、理系の高校生には有益だと思います。

 

posted by いとちり at 23:23| Comment(0) | TrackBack(0) | 吉高授業用 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする