2016年03月11日

日本地理学会(3月21,22日)第2報/学会賞(地理教育部門)受賞

  3月21、22日に行われる、日本地理学会(早稲田大学)でポスターセッションをします。
  22日が、学校の終業式なので、当初21日のみ、解説をする予定でしたが、22日に行われる研究会に出させてもらうことになり、午後から会場入りすることにしました。
 ポスターのver.2(より大きくしたもの。掲示用)ができましたので、画像を添付します。
ポスター発注版.jpg

 あと、昨日届いた情報ですが、今年度の「日本地理学会賞(地理教育部門)」を受賞しました。GISを生かした教材作りと、5年前(2010年)に出版した拙著「いとちり式 地理の授業にGIS」(古今書院)が評価されたとのことです。
165321.jpg


 5年も経ってしまって、データやソフトのバージョンなど、すっかり古くなってしまった観がありますが、同様の(ほぼ無料、50分完結、教科書準拠)のノウハウ集が出てないので、それなりに利用価値はあるのかな?と思っています。

 当時は、「とにかく限られた時間でパソコン室を使い倒す」というイメージでしたが、タブレットやらオンライン地図サービスやらが充実し、講義式の授業からアクティブラーニングが注目されるようになり、また、動画を使って50分どころか10分かそこらで要点解説をする教材が溢れています。また自分自身、勤務校の特質もあり、「地理の授業」以外の授業の方が圧倒的に多くなる一方、「授業の外でGIS」を扱う機会が増えています。

 5年前、前任校で奮闘しながら書いたこの本が改めて評価をいただける事はありがたいことです。・・・ちょうど東日本大震災が起きた年、とにかく「何かしなくては!」と、GISソフト「地図太郎」の無償公開に合わせて即席のマニュアルを書きまくったり、公開されるデータを使いやすく加工したり、福島県飯舘村出身の若い同僚と組んで文化祭で「でか地図」を作って展示したりしていたことを思い出しました。

 昨年、宮城県立多賀城高校にお邪魔して、授業をさせていただきました。
いとちり:2015年6月8日 2015年8月2日初めての「防災科学科」の入試が終わり、面白そうな第一期生が入ってきてくれそうだとのことです。この受賞、発表するツールを足掛かりに、また新たな教材と実践を積み重ねていけたらと考えています。

 2016年秋の日本地理学会は東北大学で行われます。今日は慰霊の日ではありますが、気持ちを新たに、被災地のお役にたてることを続けていければと思っています。
posted by いとちり at 05:23| Comment(0) | TrackBack(0) | 学会発表 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年02月20日

デジタル新聞を活用したNIE活動―静岡県NIE推進協議会実践報告会

 2014・2015年度の2年間にわたり、NIE(教育に新聞を)の実践指定校として研究を行ってきました。
 研究主題を「ICTへの対応」と、「高校ならではのNIE」とし、広く応用可能な実践を考えました。
 「沖縄修学旅行iPadアプリ」の制作は、その一環です。

 小中学校と違い、高校は学校によって位置づけや性格が全く異なります。特に、学力がそれほど高くなく、新聞を読む(および購読する)習慣が身についていない生徒が多い学校では、啓蒙し、改善するだけではなく、まずそれを前提とした上で、どうやって新聞を活用していくか、そこから考えなければなりません。

 常に、「新しい新聞」「最新の時事問題の解説」でなくても、「毎日読まれないまま貯まっていった古新聞」でも、「まとめ買いで安く売ってもらった古新聞」でも、立派な教材になります。また、どどーんと積み上げた新聞の束からひたすら手を動かして記事を切り抜いていく作業は、大人がやっても結構楽しいものです。


 また、新聞を切り抜いて、模造紙に貼って、意見を書くという作業は小学生でもできます。だからといって高校でやらないというわけではないのですが、そこにどうやって付加価値をつけるか、高校教師の腕の見せ所だと思います。今回は、沖縄の新聞を取り寄せて使い、更にアプリ化して現場に持っていく”作業をやってもらうことと、実際に現地で記事を書いている記者さんと歩く”という付加価値をつけました。また、間接的ではありますが、現地の新聞(記事の転送で地元紙にも)に掲載してもらったり、自分達が作った作品をこのような大きな会合で見てもらい、注目してもらうという付加価値をつけています。

 すぐに「新聞購読率」の上昇にはつながらないかもしれませんが、学力に自信が持てなかったり、不本意入学な生徒にも、「頑張って作業すれば、いろいろと面白い」という経験をさせられるのではないかと思います。もちろん進学校には進学校のやり方があるでしょうし、地域や学校種(普通科か、専門学科か)によっても新聞との関わり方は変わってくると思います。ただ単に、「新聞の内容をまとめさせて、世の中に関心を持たせた」「いつでも見られる環境を作って、読む生徒が増えた」「スクラップをさせた」ではダメだと思いますし、ICTとのかかわりも、「手でやった方がよほど早い」ようなことをわざわざパソコンでやる必要もないと思うのです。

 ICTを使うことで、格段に便利になるのは記事の共有や保存、そして再利用です。たくさんの記事をスキャンしてストックし、地図上に配置したり、分担して選んだ記事を皆で共有するなど、デジタルだからこそできることです。ただ、いきなり「電子新聞」にアクセスして、そこから興味のある記事を切って保存しようというのは、操作上の手間や、回線速度など、問題が多すぎて実用には至りませんでした。紙の新聞をハサミで切って、後でスキャンした方がよほど速いですし、多くの記事が集まります。

 今後の展望ですが、著作権を害さない範囲で(公開などはせずに)、学校間で切り抜きデータを共有できないかと考えています。NIE校でなくても、職員室や図書館でローカル新聞をはじめ、何紙かとってますし、大概は古新聞として捨てられてしまうものを定期的に切り抜きにして画像化し、出来ればジオタグ(位置情報)をつけて保存し、学校間でやり取りします。例えば我々が静岡新聞の記事(富士山ネタやお茶ネタなどが満載)を切り、沖縄の学校が沖縄の新聞を切り、相互に交換。できれば修学旅行で相互訪問などできるとベストです。我々は、沖縄の学校の修学旅行用記事アプリの制作を間接的に手伝い、沖縄の学校は我々の学校のアプリ作りを手伝う・・・・・餅は餅屋、地名や土地勘がある方が場所合わせは速いです。高校ならではの、距離を越えたダイナミックな交流が出来るのではないかと考えています。

  幸い、沖縄および東北(宮城方面)とのコネクションがあります。NIE研究指定校は外れますが、今後も記事=地図アプリ(コードネーム:記事ぶらり)を軸に、面白い教材を作って行ければと思います。
 今回は、パワーポイントを使っていません。また、生徒アンケート調査の結果や、生徒作品など、アップできない資料もありますが、参考資料を載せておきます。

【配布資料】
(1)レジュメ 20160220NIE.pdf
(2)資料1 学校の実態(アンケート調査集計)・・・・会場配布のみ。Web非公開
(3)資料2 「沖縄NIE」関係の授業計画表 shiryo2.pdf
(4)資料3・4・5 「沖縄NIE」関係の新聞報道記事siryo3-5.pdf
(5)iPadアプリのスクリーンキャプチャ画像photo-nie.pdf
(6)アプリの原本となった、模造紙(地図×記事)・・・会場掲示のみ・Web非公開
IMG_3678.JPG20160129114705-0003.jpgokinawatimes.jpgFullSizeRender.jpg
posted by いとちり at 22:36| Comment(0) | TrackBack(0) | 学会発表 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年01月24日

日本地理学会ポスターセッション(第1報)

 3月21、22日に早稲田大学で行われる日本地理学会で発表することにしました。
 予稿の受付をしてもらいましたので、気が早いですが、ここにアップします。
 3月22日が、学校(終業式)のため、3月21日のみポスター前で説明を行います。内容が内容ですので、実物(iPad)を片手に、実際に触っていただこうと考えております。

 自分で言うのもなんですが、これはかなりのイノベーションだと思います。いい感じです。当日までに、この「新・デジタル地図帳」ネタで報を重ねて行きたいと思いますので、よろしくお願いします。
gakkaiyoshi.jpg【クリックすると拡大されます】

【リンク】
 昨年の口頭発表(記事ぶらりver.1) 地理情報システム学会にて

posted by いとちり at 15:27| Comment(0) | TrackBack(0) | 学会発表 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年10月15日

地理教育を未来を考えるライトニングトーク(スライド事前公開)


  青山学院大学で行われる「地理教育のこれからを考えるライトニングトーク」で、5分間の持ち時間でしゃべらせてもらいます。

 米・ESRI社の教育マネージャー、Kerski博士もいらっしゃっるので、英語の文章でスライドを作りました。お話ししたい内容をつけて公開します。

1.タイトル 「次の地理教育のために、何をしたらいいか?」

スライド1.JPG
2.高校の「地理」は、1994年に必修科目から外された。

スライド2.JPG
3.しかし、どうやら2022年から必修科目として復活しそうである。
スライド3.JPG
4.地理でおなじみの人口ピラミッドで考えてみよう。
スライド3-4.jpg


5.高校で「地理」を取らなくてよかった世代は、1978年生まれ(2015年、37歳)から、2006年生まれ(2015年、小学校5年生)までだ。

スライド3-5.jpg


6.その数、4094万人。履修率3割として、2865万人が「高校地理」を知らないという計算になる。「失われた約28年」である。

スライド4.JPG

7.話題の「地理基礎・歴史基礎」が必修化になるのは2006年生まれ(現:小学校4年生)が高校入学時から。7年後に向けて早くも議論が巻き起こっているが、少子化が進む今、これは地理教育が最優先で考えるべき有望なマーケットなんだろうか?


スライド5.JPG

8.ピラミッドをひっくり返してみた。
「地理必修」の授業を受ける予定の子は、生まれたばかりの子も含めて844万人。

スライド6.JPG


9.「地理選択履修」世代の総数が4094万人


スライド7.JPG


10.「高校地理」が必修だった世代に至っては、7897万人いる。高校進学率に差はあるので、この数字はそのまま使えるわけではないが。

スライド8.JPG


11.まさに、氷山は海面下の方がはるかに大きいのである。「地理必修」「次世代の地理教育」を語るのもいいが、まずは目の前の巨大なマーケットに目を向けるべきだろう。


スライド9.JPG


12.「地理」の強みは、社会とつながれるところだと思う。
学校教育も大事だが、そこで満足するのではなく、どんどん社会とつながり、教材の発掘や情報発信に努めたい。特に「ビジネス」「家庭」「地域」との連携は欠かせない。


スライド10.JPG


13.それは同時に地理をつかさどる教師や実務者(=地理屋さん)自身がビジネス感覚を持つこと、良き家庭人であること(子供の感性に寄り添う)地域社会の一員であることを意識しなければならない(教師バカじゃいけない)。

スライド11.JPG


14.そう言っている本人も、社会とつながることを心掛けてはいるし、媒体をあれこれ変えながら情報発信させてもらっている。

スライド12.JPG


15.やはり「地理必修化」待望論は、「地理教育」をすごく狭い範囲でとらえた議論に過ぎないように思う。制度上、「必修」に戻したところですべてがバラ色というわけではないし、地理教育関係者以外の人にとってはあまり関心がもたれることはない。
 地理教育の潜在需要は大きいし、「ビジネスパーソン」「子育て世代」へのアプローチをもっとしていくべきだと思う。良いお知恵があれば、またいただければと思う。


スライド9.JPG




posted by いとちり at 22:46| Comment(0) | TrackBack(0) | 学会発表 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年10月10日

「毎日新聞社賞」受賞講演

  今日から慶応大学で行われているGIS学会に伺いました。
  同学会で毎年行われている、「教育におけるGIS活用事例表彰」で「毎日新聞社賞」をいただきました。

  国土交通大臣賞の福井の実践(市役所の職員をされながら、地元の小学校とタッグを組んだ地域課題解決に取り組んだ事例)、GIS学会賞の実践(旧知の石巻工業高校の佐光先生。工業科目の「課題研究」での取り組みは圧巻でした)の後、かなりプレッシャーを感じつつも、報告をさせてもらいました。

  「効果的な利用の観点」での受賞理由、新聞を活用したの新たな事例の提供ということで評していただきました。毎日新聞本紙でも取り上げていただくことになり、地理教育、GISという枠組みから一歩踏み出した形で注目してもらえればと思っています。
  

  このセッションの後で参加した特別セッションでは、米・ESRI社で教育担当マネージャーをされている、Josef Kerski博士を囲む地理教育とGISをめぐる議論に参加できました。学生の頃、カナダからいらっしゃった客員教授の講義に必死になって喰らいついていたころの記憶がよみがえりました。


  「クラウド上に、大量の地理情報が載り、それを引き寄せて、ありとあらゆる地図が描ける。まるで、音楽配信サービスのように。その時にどんな授業ができるのか、地理だけでなく、ありとあらゆる教科で問われている」との発言に、膝を打つ思いがしました。アメリカでは、ESRI社が連邦政府にGIS教育振興に100億ドルを寄付し、Arc-GIS Onlineがどんな学校でもほぼ無料で使える環境が整えられたとのこと。Lesson Planも地理だけでなく、理科、数学でもたくさん作られているそうです。


  「オンラインを前提としているGIS環境を推進する御社の取り組みは素晴らしいと思うが、日本の学校は、設備も回線も非常に貧しい環境である。また、GISに対する技術的なハードルも高い。我々は、オフラインで、できる限り簡単な教材を作ろうと思っているが、御社はそれにどう対応されるおつもりか?」と、つたない英語で伺いました。自社のソフトを売り込むのが大前提ですが、データの提供や環境の整備など、GISの総合コンサルサービスを含めた取り組みを検討されているようです。

 セッションの後、Kerski師匠と2人きりでお話ができました。教育GISの世界的権威ではありますが、ご本人の立ち位置は地理屋さん(Geographer)(元、USGSの研究員)。「やっぱり、基礎教育を紙でやったからこそ、いろいろわかるところがありますよねー」なんて話や、「ロッキー山脈自慢」と「富士山自慢」のお話をしました(どっちが表”かは、向こうでもあるようです)。
 来週の金曜日、改めてトークセッションの再開を約束しました。

 例によって、報告スライドをアップします。
posted by いとちり at 21:04| Comment(0) | TrackBack(0) | 学会発表 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする