2016年12月11日

必修化に向けた高校地理の改革(立命館地理学会)

  母校、立命館大学での講演です。
 必修化になってどうなるか?地理学教室はどうあるべきか?
 大きいテーマではありますが、それに対応した人材育成と教材(素材)の収集と供給が求められると思います。

 「職人から店長へ」
 「地理教育界のセントラルキッチン」

キーワードに挙げた2つの言葉、気に入っていただけたようです。

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2016年10月01日

タブレットコンピューターを用いた地形図の読図指導(日本地理学会)

 東北大学で行われた日本地理学会で発表してきました。

 地理Aの「自然環境と防災」の実践ですが、2022年度から実施される新必修科目「地理総合」(仮称)を見越して、地形図の読図指導に全く自信のない先生サポート(もちろん、自身のある先生はより分かりやすく効率的に)するための教材としてGISの成果を生かしていこうという趣旨です。

 地形図を読めない子を、読めるように指導するのは大変です。しかも使うのは市販の地形図ではなく白黒の「地形図プリント」のみ。限られた時間の中で、結局教えるのは「尾根線、谷線」や「土地利用」といったもので、後は「センターに出るぞ」で済ましてきた観もあります。また、「防災」のジャンルも、基本的に身近な地域を対象として、「ここが危ないぞ」「怖いぞ」「家建てちゃダメだぞ」的な教訓めいた指導になりがちです。そのあたりをきっちりと批判したうえで、次の新科目につなげていかないと、必修地理総合って、結局は地理Aの焼き直しなんでしょ?という解釈になってしまいます。

 「自然環境と防災」は、地理A独自の単元ですが、その内容は身近な場所の危ないところ探しではありません。今回の実践も、「ほぼ無料、50分完結、教科書準拠」の原則に従って教科書で取り上げている雲仙・普賢岳の災害を取り上げました。「近くのもしも」ではなく、「遠くのリアル」。そして何より「地図から考える」「地図から読み取れることのみを使って議論を組み立てる」(憶測や直感、ネット的知識などの知ったかぶりで被災地を論じない)ことを意識して教材を作りました。

 地形図が読めない、読み方を指導できない人が教壇に立って大丈夫か?高校で地理を履修していない人が地理を教えられるのか?という危惧を持つ人が(特に地理のプロパーに)多くいます。しかし、それは嘆くべき事実ではなく、避けられない現実です。また、高校で地理を履修しなかった(させてもらえなかった)生徒がいるという現実を20年以上にわたって放置してきた責任の一端は、研究者だけでなく、現場の教員にもあることを忘れてはいけません。「地理は、センターで使う理系の科目だから・・・・」「文系は日本史か世界史。これ、常識でしょ」と指導し、後進を育ててこなかった(特に進学校の)先生も責任の一端があります。

 素性はどうあれ、分からないのならば分かるようにするしかない。便利な道具を使って「ああ、地形図ってこういうことか。防災関係の発問って、こんなことを振ればいいのか」と自分も生徒も理解してもらって、そこからOJTで技量を高めてもらっていくしかありません。そのための教材は、実施5年前の今から作っていかなければなりません。

 「読図」や「作図」の指導は、地形図だけではありません。地図帳をどう使うか、白地図をどう使うか、ノートに地図をどう描かせるか、地名や用語はどこまで、どう覚えてもらうか、そして個々の生徒の取り組みや到達度をどう評価するか、興味を持って「ツボ」にはまった生徒をどう引き立てて、地域に関わらせていくか、「地理の先生」として要求される技能は多々あります。それら一つ一つを見える化、言語化して伝えていくことが必要です。

 危惧するところでは、そうしたステップを一切踏まずに「必修の地理?ああ、世界情勢と時事問題を面白おかしく語っておけばいいんだ」と、ろくに教科書も地図も使わずに我流で勝負してしまう先生、そして一緒に組む相手にもそれを押し通してしまう先生が蔓延してしまうところです。「防災」も、センセーショナルな映像を見せて、ちょこっと背景を説明して、「いつか、自分達も・・・・」なんて危険を煽る、あるいはメディアの焼き直しで「だから行政は・・・」みたいな感じの犯人探しの授業があちこちで行われるかもしれません。現に公民科の「現代社会」がそんな感じになってしまっている場面を多々目にしてきました。一頃よりだいぶ少なくなったと思いますが、「教科書は使わない」「指導書なんか、見もしない」「学習指導要領なんて、新採の時以来見たこともない」なんていうベテランが陥りやすい「我流の罠」です。

 そうならないために、何はともあれ「地図を使う」「地図で教える」ことは徹底していくべきだと思いますし、若手がうっかりそういう残念な先生と組んでしまったとき、自分の頭で考え、自分で教材をアレンジできるように、現物を用意し、手が届くところに届ける仕組みを今から作っておくべきだと思います。

 プレゼンの後、そうした理想を浸透させる(質問された方の言葉を借りればW闘う”)の担い手は誰か?と聞かれました。「自分は地理のプロパーだ」と思っている先生方がまとまることは第一だと思いますし、教育の内容と質を一定に保つ教育行政上の施策も大事だと思います。ただ、一番浸透しやすく、影響力があるのはそれ以上に教科書会社が出す出版物(特に資料集と地図帳、関連教材)だと思います。 
 今、某社の指導書の附属DVD教材集に原稿を書いていますが、教科書や資料集、社が出すサポート教材を組織的に作っていくことが何より重要かと思います。内容は全く同じでも、個人がこうやってブログに載せたり学会で発表するのと出版物で出るのとでは浸透力が違います。書く側も、「編集のプロ」の冷静かつ客観的な指摘を受けてブラッシュアップできます。今、「教科書」の書き手は圧倒的に大学の先生が多くを占めていますが、「資料集」や「教材集」の編さんに現場の先生方が積極的に関わるようにして、
来たるべき必修・地理に備えていくべきではないかと思います。


 また「地形図」以外の素材も作りつつ、提案していく機会があると思いますが、今回やってみて感じたことは、「大きい地図を囲むのは楽しい」ということです。タブレットは、あればあるに越したことはないですが、虫眼鏡みたいなものなので、なければないで、プロジェクタで代用はききます。むしろ放っておくと「おもちゃ」になる危険性もありますので、ケースバイケースかなと思いました。大きい地図を囲んでお互いに教えあいながら地図を読み、その上で各自のノートやワークシートに言語化して行く・・・・「アナログか、デジタルか?」の二者択一ではなく、アナログな作業を円滑に進めるためのデジタル(で作った教材)でいいんじゃないかと思いました。また、「アクティブラーニングをしよう」と肩ひじ張るのではなく、こういう共同作業的なことが結果的にアクティブになっていればいいんじゃないかと思っています。

 いろいろ応用が利くと思いますので、単元を変えて、対象を変えて、また試してみたいと思います。

【予稿】



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2016年03月20日

日本地理学会で発表します(第3報)

 さて、いよいよ明日、明後日となりました。
 日本地理学会春季学術大会(於:早稲田大学)です。

 かねてよりご案内の通り、今年はポスター発表で「いとちり式かんたんデジタル地図帳」の最新版を提案させていただきます。「いとちり式」ですから、″ほぼ無料”なことはもちろんのこと、難しいプログラミングの知識等は必要なく(自分もできませんから)、”オフライン稼働”で、なおかつ”非公開”(不特定多数に公開しないので、新聞記事など、公開NGな資料を扱える)のがミソです。

 今年は、高校生も含めてポスター発表の数が過去最多とのこと。3月21日(月)の午前と昼のコアタイム、3月22日の午後(1時〜2時半ごろ)には会場で実物を持って営業”していると思いますので、お声かけいただければと思います。21日の午後は、AR(拡張現実)を使った新しい地理教材のシンポジウムを聴きに行こうと思っています。21日の夕方、「地理・日本代表」の表彰式と自身の受賞式、懇親会にも出させてもらいます。見かけたらぜひ声をかけてください。
 ポスター会場の地図を貼っておきます。
place.jpg

あと、当日ポスターの横に置いておく配布資料も作りました。予稿集の原稿と、新聞記事です。


 お隣さんが、「地理×女子」プロジェクトで今、勢いのあるお茶の水女子大のチームです。恐らく、そこだけ華やいだ雰囲気が漂っていると思いますので、気を目印に探していただければたどり着けるのではないかと思います。1冊、買わせてもらいましたが、華やかな表紙と裏腹に、なかなか本格的な地理のガイドブックになっています。4月1日放送の「タモリ倶楽部」にも出演されるとのこと。

宣伝ついでにもう一つ、昨年の夏に勤務校に来てくれて、アプリの作り方や、現場歩きを一緒にさせてもらった筑波大附属高校の生徒さんが、「高校生ポスターセッション」で成果報告をされます。

021     文京区ハザードマップを改善せよ
        佐藤剛(筑波大学附属高校)

こちらも併せてよろしくお願いします。



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2016年03月11日

日本地理学会(3月21,22日)第2報/学会賞(地理教育部門)受賞

  3月21、22日に行われる、日本地理学会(早稲田大学)でポスターセッションをします。
  22日が、学校の終業式なので、当初21日のみ、解説をする予定でしたが、22日に行われる研究会に出させてもらうことになり、午後から会場入りすることにしました。
 ポスターのver.2(より大きくしたもの。掲示用)ができましたので、画像を添付します。
ポスター発注版.jpg

 あと、昨日届いた情報ですが、今年度の「日本地理学会賞(地理教育部門)」を受賞しました。GISを生かした教材作りと、5年前(2010年)に出版した拙著「いとちり式 地理の授業にGIS」(古今書院)が評価されたとのことです。
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 5年も経ってしまって、データやソフトのバージョンなど、すっかり古くなってしまった観がありますが、同様の(ほぼ無料、50分完結、教科書準拠)のノウハウ集が出てないので、それなりに利用価値はあるのかな?と思っています。

 当時は、「とにかく限られた時間でパソコン室を使い倒す」というイメージでしたが、タブレットやらオンライン地図サービスやらが充実し、講義式の授業からアクティブラーニングが注目されるようになり、また、動画を使って50分どころか10分かそこらで要点解説をする教材が溢れています。また自分自身、勤務校の特質もあり、「地理の授業」以外の授業の方が圧倒的に多くなる一方、「授業の外でGIS」を扱う機会が増えています。

 5年前、前任校で奮闘しながら書いたこの本が改めて評価をいただける事はありがたいことです。・・・ちょうど東日本大震災が起きた年、とにかく「何かしなくては!」と、GISソフト「地図太郎」の無償公開に合わせて即席のマニュアルを書きまくったり、公開されるデータを使いやすく加工したり、福島県飯舘村出身の若い同僚と組んで文化祭で「でか地図」を作って展示したりしていたことを思い出しました。

 昨年、宮城県立多賀城高校にお邪魔して、授業をさせていただきました。
いとちり:2015年6月8日 2015年8月2日初めての「防災科学科」の入試が終わり、面白そうな第一期生が入ってきてくれそうだとのことです。この受賞、発表するツールを足掛かりに、また新たな教材と実践を積み重ねていけたらと考えています。

 2016年秋の日本地理学会は東北大学で行われます。今日は慰霊の日ではありますが、気持ちを新たに、被災地のお役にたてることを続けていければと思っています。
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2016年02月20日

デジタル新聞を活用したNIE活動―静岡県NIE推進協議会実践報告会

 2014・2015年度の2年間にわたり、NIE(教育に新聞を)の実践指定校として研究を行ってきました。
 研究主題を「ICTへの対応」と、「高校ならではのNIE」とし、広く応用可能な実践を考えました。
 「沖縄修学旅行iPadアプリ」の制作は、その一環です。

 小中学校と違い、高校は学校によって位置づけや性格が全く異なります。特に、学力がそれほど高くなく、新聞を読む(および購読する)習慣が身についていない生徒が多い学校では、啓蒙し、改善するだけではなく、まずそれを前提とした上で、どうやって新聞を活用していくか、そこから考えなければなりません。

 常に、「新しい新聞」「最新の時事問題の解説」でなくても、「毎日読まれないまま貯まっていった古新聞」でも、「まとめ買いで安く売ってもらった古新聞」でも、立派な教材になります。また、どどーんと積み上げた新聞の束からひたすら手を動かして記事を切り抜いていく作業は、大人がやっても結構楽しいものです。


 また、新聞を切り抜いて、模造紙に貼って、意見を書くという作業は小学生でもできます。だからといって高校でやらないというわけではないのですが、そこにどうやって付加価値をつけるか、高校教師の腕の見せ所だと思います。今回は、沖縄の新聞を取り寄せて使い、更にアプリ化して現場に持っていく”作業をやってもらうことと、実際に現地で記事を書いている記者さんと歩く”という付加価値をつけました。また、間接的ではありますが、現地の新聞(記事の転送で地元紙にも)に掲載してもらったり、自分達が作った作品をこのような大きな会合で見てもらい、注目してもらうという付加価値をつけています。

 すぐに「新聞購読率」の上昇にはつながらないかもしれませんが、学力に自信が持てなかったり、不本意入学な生徒にも、「頑張って作業すれば、いろいろと面白い」という経験をさせられるのではないかと思います。もちろん進学校には進学校のやり方があるでしょうし、地域や学校種(普通科か、専門学科か)によっても新聞との関わり方は変わってくると思います。ただ単に、「新聞の内容をまとめさせて、世の中に関心を持たせた」「いつでも見られる環境を作って、読む生徒が増えた」「スクラップをさせた」ではダメだと思いますし、ICTとのかかわりも、「手でやった方がよほど早い」ようなことをわざわざパソコンでやる必要もないと思うのです。

 ICTを使うことで、格段に便利になるのは記事の共有や保存、そして再利用です。たくさんの記事をスキャンしてストックし、地図上に配置したり、分担して選んだ記事を皆で共有するなど、デジタルだからこそできることです。ただ、いきなり「電子新聞」にアクセスして、そこから興味のある記事を切って保存しようというのは、操作上の手間や、回線速度など、問題が多すぎて実用には至りませんでした。紙の新聞をハサミで切って、後でスキャンした方がよほど速いですし、多くの記事が集まります。

 今後の展望ですが、著作権を害さない範囲で(公開などはせずに)、学校間で切り抜きデータを共有できないかと考えています。NIE校でなくても、職員室や図書館でローカル新聞をはじめ、何紙かとってますし、大概は古新聞として捨てられてしまうものを定期的に切り抜きにして画像化し、出来ればジオタグ(位置情報)をつけて保存し、学校間でやり取りします。例えば我々が静岡新聞の記事(富士山ネタやお茶ネタなどが満載)を切り、沖縄の学校が沖縄の新聞を切り、相互に交換。できれば修学旅行で相互訪問などできるとベストです。我々は、沖縄の学校の修学旅行用記事アプリの制作を間接的に手伝い、沖縄の学校は我々の学校のアプリ作りを手伝う・・・・・餅は餅屋、地名や土地勘がある方が場所合わせは速いです。高校ならではの、距離を越えたダイナミックな交流が出来るのではないかと考えています。

  幸い、沖縄および東北(宮城方面)とのコネクションがあります。NIE研究指定校は外れますが、今後も記事=地図アプリ(コードネーム:記事ぶらり)を軸に、面白い教材を作って行ければと思います。
 今回は、パワーポイントを使っていません。また、生徒アンケート調査の結果や、生徒作品など、アップできない資料もありますが、参考資料を載せておきます。

【配布資料】
(1)レジュメ 20160220NIE.pdf
(2)資料1 学校の実態(アンケート調査集計)・・・・会場配布のみ。Web非公開
(3)資料2 「沖縄NIE」関係の授業計画表 shiryo2.pdf
(4)資料3・4・5 「沖縄NIE」関係の新聞報道記事siryo3-5.pdf
(5)iPadアプリのスクリーンキャプチャ画像photo-nie.pdf
(6)アプリの原本となった、模造紙(地図×記事)・・・会場掲示のみ・Web非公開
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posted by いとちり at 22:36| Comment(0) | TrackBack(0) | 学会発表 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする