2018年03月23日

デジタル地図帳を活用したアクティブラーニング型地誌学習の実践(日本地理学会)

 東京学芸大学で行われた、日本地理学会で報告してきました。
 たくさんの皆様のご観覧、ありがとうございました。

 実践報告ではありますが、実践自体は生煮えと言いますか、これから改善の余地はたくさんあります。それでも、これから同様の実践を、通年でコンスタントに行うことで、4年後の新学習指導要領の実施に備えた教材作りとノウハウの共有を行いたいとの意思表示(公言して自分を追い込む)にはなったのではないかと思っています。

 プロパー、ノンプロパーのお話をしましたが、殊にアクティブ・ラーニングに関しては、すべての教員がノンプロパーだと思っています(そもそも自分達が生徒として受けた授業の形態と全く違います)。地理に限らず、特定科目の「プロパー」で、進学校などで「とにかくあれも教えなければ、これも教えなければ、あー時間が足りない」という方ほど、アクティブ・ラーニングには抵抗感があると思いますし、面従腹背を決め込んでしまうのかもしれません。あるいは、ゴールも評価もあいまいな単なる「グループワーク」をたまに行うだけで事足れりとしてしまうのかもしれません。そうした事態を避け、なおかつ地理らしさ(ちゃんと地図を使う)を出すために、日々試行錯誤を繰り返す必要があると思いますし、総合学科や専門学科の「地理A」は、新必修科目「地理総合」に最も近い科目として、積極的にアクティブ・ラーニングにトライしてみるべきではないかと思っています。

 年間通してどのような授業展開をするのか、評価はどうするのかについての質問を頂きましたが、この3学期に地理と現代社会で試験的な実践を繰り返し、アクティブ・ラーニングの型授業の「先発ローテーション」はある程度確立しました。また、テストの平均点も上がりました。「キャンプ&オープン戦」期間を終え、学会という「公式戦」を経て、いよいよ4月からの開幕を待つばかりといった状況です。今年は節目節目に学会発表を入れ、短報でも論文化して、アクティブ・ラーニング時代の高校地理のスタンダードを確立できればと思っています。その都度できる使いやすい教材や、素材へのアクセスも、このブログでお伝えできればと思います。



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2017年08月15日

「カリスマ地理教師から経営者へ」―帝国書院100周年記念展ギャラリートーク

  倉敷市で行われている、帝国書院100周年記念展でギャラリートークをさせてもらってきました。普段の学会やら研究会やらと違い、地理教育とは関係ない(と思われる)市民の皆様を前に、郷土の偉人の足跡と、現代につながる意義をお話させていただきました。
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 改めて強調しておきたい点を一つ。

(大学等での)地理の専門教育を受けずに地理を教える人が、今後たくさん地理教育の現場に入ってくること→そうした若い世代の能力を不安視せずに、業界(教員・研究者・行政・そして民間の教科書会社等)でバックアップしていくかが火急の課題である。

・・・あくまで推測ですが、「文検」(文部省の中等教員資格認定試験)で教員になった荒美雄師は、いわゆる「正規の教育」を経てきた教員との間で相当苦労されたと思います。だからこそ、自分と同じ立場で教員を目指す若者を生涯にわたって支援しましたし、若い教員に発表の機会を与えました。今の「地理必修化」に向けてかわされている「地理プロパー」さん(特にその中核をなす方々)の議論を聞いていると、いささか悲観的過ぎる観があります。地理教育に携わるのは、教員、学会だけでなく、様々な人が関わりますし、民間の立場、例えば教科書会社さんがぜひ頑張ってほしいと思います。

 前日から倉敷入りし、お墓詣りとゆかりの地を改めて案内していただきました。
 「聖地巡礼」ではないですが、地図アプリ等を使って、ゆかりの地の写真や古地図と組み合わせてまわれるようにしたらよろしいのではないか?(・・・というか、多分作ります)という話にもなりました。

 文章、アプリともに、まとめた上で改めて倉敷に関わって行ければと思います。
 6年ぶりの墓参。荒美雄師が教員を退職された年齢を過ぎましたが、色々と感じるところがありました。また新たにいろいろ始まったなという感があります。
 帝国書院の皆様、倉敷の皆様、どうもありがとうございました。今後ともよろしくお願いします。

〇配布資料





posted by いとちり at 17:05| Comment(0) | 学会発表 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年03月26日

日本地理学会(筑波大学)に行きます。

年度末の予定がかなり厳しそうだったので、今回は発表は見送り、行くのも無理かな?と思っていたのですが、いろいろと仕事が順調に運び、1日だけ行けることになりました。

 3月28日の地理教育公開講座「地理総合(仮)と地理情報システム」と、「高校生ポスターセッション」を見に行こうと思います。

 2022年入学生から完全必修で実施される新科目「地理総合」。デジタル地理情報を使った地理情報システムを日常的に使ったアクティブ・ラーニング型の授業が指向されていますが、2022年になって「さあ、どうぞ」というわけには行きませんし、学習指導要領に「地理情報システムを積極的に活用すること」と書かれているにもかかわらず、骨抜きというか、有名無実化してしまっている今の状況を考えると、やっぱり絵に描いた餅になる可能性が非常に高いと思われます。また、必修科目ですから、地理を専門としない(更にご自身が高校時代に全く地理を履修していない)先生が大挙して「高校地理」を担当することになる訳で、「じー・あい・えす?What?」ってところから始めて行く必要もあります。正直、「必修地理の未来はかなりやばいんじゃないだろうか?」という悲観的なご意見がこういうオフィシャルな場に行くとよく聞かれます。

 ただ、昨年12月に京都で述べたように、私自身はGISに代表される地図のデジタル化、タブレットなどによるモバイルコンテンツ化は、今までのような「GIS=パソコン実習」という固定概念を打ち破ってくれると思いますし、地理が苦手、あるいは基本的知識や技能に自信がないという先生の経験不足を補ってくれるツールになると思いますし、そういうツールをどんどん作っていかなければいけないなと思っています。逆の言い方をすれば、これまでのような求道型、技能伝承型の”授業”(ごうを、さずかる)から、もっと地図や景観を見る(見やすくする)状態で考えることに徹する”ラーニング”になると思っています。

 山の登り方を一つ一つ教わり、苦労して山頂まで行って満足感に浸るのもいいですが、そこにロープウエーなり、リフトがあるならさっさと乗って山頂に行き、下界の景色を見ながらああだこうだと考える時間を確保する・・・行き方を知っている引率者とチケットがあれば誰でもリフトに乗れる。そのリフトこそがGISだと個人的には考えています。リフトに乗る金がないとか、自分の足で歩かせる事こそが教育であるとか、あるいは「リフトを動かすマシンの仕組みやメンテの方法を教えなきゃ」なんてことはあまり意識する必要はないわけです。

 大事なことは、生徒が「高いところに登って見下ろす」ことで、新たな発見ができるということに気付いてもらうこと、卒業後も職場の同僚や家族を連れて気軽に「ハイキング」に繰り出せるようにすることです。隣の芝は・・・じゃないですが、世界史や日本史教育の世界は、そういう社会人リピーターの確保が非常にうまく回り始めているように思います。

 基調講演は、この分野をリードしてきた方々です。今回は聴衆に徹して、どんな方々がどんなディスカッションを仕掛けるのか、じっくり拝聴したいと思っています。

〇日本地理学会春季学術大会 地理教育公開講座「地理総合(仮)と地理情報システム」
3月28日(火曜日)13:00〜16:00
会場:筑波大学 0会場 3A23A204  
※一般発表は、大会参加料が必要ですが、「公開講座」は会員、非会員に関わらず無料で聴講できます。
大会プログラムはこちら

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posted by いとちり at 20:42| Comment(0) | TrackBack(0) | 学会発表 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年12月11日

必修化に向けた高校地理の改革(立命館地理学会)

  母校、立命館大学での講演です。
 必修化になってどうなるか?地理学教室はどうあるべきか?
 大きいテーマではありますが、それに対応した人材育成と教材(素材)の収集と供給が求められると思います。

 「職人から店長へ」
 「地理教育界のセントラルキッチン」

キーワードに挙げた2つの言葉、気に入っていただけたようです。

posted by いとちり at 21:41| Comment(0) | TrackBack(0) | 学会発表 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年10月01日

タブレットコンピューターを用いた地形図の読図指導(日本地理学会)

 東北大学で行われた日本地理学会で発表してきました。

 地理Aの「自然環境と防災」の実践ですが、2022年度から実施される新必修科目「地理総合」(仮称)を見越して、地形図の読図指導に全く自信のない先生サポート(もちろん、自身のある先生はより分かりやすく効率的に)するための教材としてGISの成果を生かしていこうという趣旨です。

 地形図を読めない子を、読めるように指導するのは大変です。しかも使うのは市販の地形図ではなく白黒の「地形図プリント」のみ。限られた時間の中で、結局教えるのは「尾根線、谷線」や「土地利用」といったもので、後は「センターに出るぞ」で済ましてきた観もあります。また、「防災」のジャンルも、基本的に身近な地域を対象として、「ここが危ないぞ」「怖いぞ」「家建てちゃダメだぞ」的な教訓めいた指導になりがちです。そのあたりをきっちりと批判したうえで、次の新科目につなげていかないと、必修地理総合って、結局は地理Aの焼き直しなんでしょ?という解釈になってしまいます。

 「自然環境と防災」は、地理A独自の単元ですが、その内容は身近な場所の危ないところ探しではありません。今回の実践も、「ほぼ無料、50分完結、教科書準拠」の原則に従って教科書で取り上げている雲仙・普賢岳の災害を取り上げました。「近くのもしも」ではなく、「遠くのリアル」。そして何より「地図から考える」「地図から読み取れることのみを使って議論を組み立てる」(憶測や直感、ネット的知識などの知ったかぶりで被災地を論じない)ことを意識して教材を作りました。

 地形図が読めない、読み方を指導できない人が教壇に立って大丈夫か?高校で地理を履修していない人が地理を教えられるのか?という危惧を持つ人が(特に地理のプロパーに)多くいます。しかし、それは嘆くべき事実ではなく、避けられない現実です。また、高校で地理を履修しなかった(させてもらえなかった)生徒がいるという現実を20年以上にわたって放置してきた責任の一端は、研究者だけでなく、現場の教員にもあることを忘れてはいけません。「地理は、センターで使う理系の科目だから・・・・」「文系は日本史か世界史。これ、常識でしょ」と指導し、後進を育ててこなかった(特に進学校の)先生も責任の一端があります。

 素性はどうあれ、分からないのならば分かるようにするしかない。便利な道具を使って「ああ、地形図ってこういうことか。防災関係の発問って、こんなことを振ればいいのか」と自分も生徒も理解してもらって、そこからOJTで技量を高めてもらっていくしかありません。そのための教材は、実施5年前の今から作っていかなければなりません。

 「読図」や「作図」の指導は、地形図だけではありません。地図帳をどう使うか、白地図をどう使うか、ノートに地図をどう描かせるか、地名や用語はどこまで、どう覚えてもらうか、そして個々の生徒の取り組みや到達度をどう評価するか、興味を持って「ツボ」にはまった生徒をどう引き立てて、地域に関わらせていくか、「地理の先生」として要求される技能は多々あります。それら一つ一つを見える化、言語化して伝えていくことが必要です。

 危惧するところでは、そうしたステップを一切踏まずに「必修の地理?ああ、世界情勢と時事問題を面白おかしく語っておけばいいんだ」と、ろくに教科書も地図も使わずに我流で勝負してしまう先生、そして一緒に組む相手にもそれを押し通してしまう先生が蔓延してしまうところです。「防災」も、センセーショナルな映像を見せて、ちょこっと背景を説明して、「いつか、自分達も・・・・」なんて危険を煽る、あるいはメディアの焼き直しで「だから行政は・・・」みたいな感じの犯人探しの授業があちこちで行われるかもしれません。現に公民科の「現代社会」がそんな感じになってしまっている場面を多々目にしてきました。一頃よりだいぶ少なくなったと思いますが、「教科書は使わない」「指導書なんか、見もしない」「学習指導要領なんて、新採の時以来見たこともない」なんていうベテランが陥りやすい「我流の罠」です。

 そうならないために、何はともあれ「地図を使う」「地図で教える」ことは徹底していくべきだと思いますし、若手がうっかりそういう残念な先生と組んでしまったとき、自分の頭で考え、自分で教材をアレンジできるように、現物を用意し、手が届くところに届ける仕組みを今から作っておくべきだと思います。

 プレゼンの後、そうした理想を浸透させる(質問された方の言葉を借りればW闘う”)の担い手は誰か?と聞かれました。「自分は地理のプロパーだ」と思っている先生方がまとまることは第一だと思いますし、教育の内容と質を一定に保つ教育行政上の施策も大事だと思います。ただ、一番浸透しやすく、影響力があるのはそれ以上に教科書会社が出す出版物(特に資料集と地図帳、関連教材)だと思います。 
 今、某社の指導書の附属DVD教材集に原稿を書いていますが、教科書や資料集、社が出すサポート教材を組織的に作っていくことが何より重要かと思います。内容は全く同じでも、個人がこうやってブログに載せたり学会で発表するのと出版物で出るのとでは浸透力が違います。書く側も、「編集のプロ」の冷静かつ客観的な指摘を受けてブラッシュアップできます。今、「教科書」の書き手は圧倒的に大学の先生が多くを占めていますが、「資料集」や「教材集」の編さんに現場の先生方が積極的に関わるようにして、
来たるべき必修・地理に備えていくべきではないかと思います。


 また「地形図」以外の素材も作りつつ、提案していく機会があると思いますが、今回やってみて感じたことは、「大きい地図を囲むのは楽しい」ということです。タブレットは、あればあるに越したことはないですが、虫眼鏡みたいなものなので、なければないで、プロジェクタで代用はききます。むしろ放っておくと「おもちゃ」になる危険性もありますので、ケースバイケースかなと思いました。大きい地図を囲んでお互いに教えあいながら地図を読み、その上で各自のノートやワークシートに言語化して行く・・・・「アナログか、デジタルか?」の二者択一ではなく、アナログな作業を円滑に進めるためのデジタル(で作った教材)でいいんじゃないかと思いました。また、「アクティブラーニングをしよう」と肩ひじ張るのではなく、こういう共同作業的なことが結果的にアクティブになっていればいいんじゃないかと思っています。

 いろいろ応用が利くと思いますので、単元を変えて、対象を変えて、また試してみたいと思います。

【予稿】



posted by いとちり at 09:38| Comment(0) | TrackBack(0) | 学会発表 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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