2022年09月18日

高校教員から見た小中高一貫カリキュラム(日本地理教育学会小中高一貫地理教育研究グループ)

 オンラインではありますが、久々に登壇させてもらいました。
 小学校〜高校にかけて「地理教育一貫カリキュラム」の策定について、現場教員として考えることをとのお題でした。

 カリキュラムの設計というと、現場には縁遠い感じがしますが、要は、何を最低限身につけるか、何ができたらOKなのかという基準作りと獲得するためのノウハウの集大成です。「学習指導要領」というと仰々しいですが、アメリカやヨーロッパでは、「ナショナルスタンダード」は、結構頻繁に使われています。

 「高校生にもなって小学生レベルのことことができていない」とかよく言いますが、そもそも小学生レベルで身につけたい地理や地図の知識って何でしょうか?できていない子に小学校レベルから振り返って、高校のレベルにまで到達させるにはどうしたらいいのでしょうか?・・・ここでは、「階段型」でもなく、「らせん型」でもなく、「コマ型」のカリキュラムを提案しています。らせん型との違いは、そこに「ひも」あるか否かです。地図やGISは、まさに「ひも」の一つであり、長さや材質、手動か電動かは、追って詰めて行けたらと思います。

スライド

レジュメ
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2021年07月11日

普通科進学校におけるデジタル地図教材の開発と運用(地理教育学会)

 オンライン例会で報告者をさせてもらいました。
 富士東高校教諭として、初めての学会発表です(こんなに早くやることになるとは・・・。)
 毎週1回、「金曜日はGISの日」ということで、自分に枠をはめる形で設定し、3年の受験生に週1回実習を行うという、一見破天荒な実践を行っていますが、単元の内容に準拠させ、統計資料や教科書の主題図だけでは見えてこない「地理」に踏み込んでいくことで、地理に興味関心を持ってもらい、毎日地理を勉強し、結果として成績も上がる・・・ようになってほしいものです。

 4時間配当の1時間を実習に充てて毎週デジタル地図に触れてもらう実践を報告しました。1時間完結でレポートを書いてもらう(実質、描いた地図を貼り付けて簡単なコメントを入れてもらうだけ)のがマンネリ化しつつあるので、2学期から(実質今週末ですが)からスタイルをちょっと変えて問題演習ドリル形式にしてみようと思ってます。

 また、2時間ものの2年生が、なんだかんだ言って全く実習ができていないに対して、「NIEのスピーチのように、毎時間冒頭でちょこっと地図を入れた時事解説を輪番で回してはどうか?」というアドバイスをいただきました。なるほど、最近の新聞は、コロナしかり災害しかり、経済格差しかり、優秀なデザインスタッフを擁してわかりやすい「図説」をしてくれているものが多いです。まずはそうした主題図をコピペするだけでもいいので、「地図を使って発表する」機会をルーティン化し、その中で「この地図、自分で描いてみたい」という生徒を一本釣りしたり、「総合的な探求の時間」の資料作りに繋げて行けたらと思いました。

 スライドのPDFファイルを以下アップします。
 オンラインの学会は、やっぱり対面とは違った汗をかきますが、よい学びをさせてもらいました。
 コメントを頂いた先生方、ご参加いただいた皆様、どうもありがとうございました。
【リンク】
冒頭に出てくる「伊藤(2019)」の小論です。


posted by いとちり at 17:33| Comment(0) | 学会発表 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年03月22日

アナログGISによる必修「地理総合」向けGIS教材の作成について(日本地理学会)

 専修大学(生田キャンパス)に行ってきました。

 日本地理学会の「地図・GIS」セッション、今年は初めて座長もやらせてもらいました。
 つたない司会でしたが、普段の聴衆席とは全く違った緊張感で、とにかくメモを取って質問・コメントを考えることだけに集中した時間でした。ありがとうございました。

 今回のキーワードは「アナログGIS」です。スライド中にもあるように、2007年の日本地図学会の発表で、私が使い出した造語のようなものですが(伊藤:2007→こちら)、当時「紙地図の実習はGISに取って代わる」「アナログか?デジタルか?教師はどちらを選ぶのか?」みたいな論争にうんざりして、いささかの皮肉を込めて発表したところ、「いや、そもそもそんな概念は成り立たない!」ということで集中砲火を頂いたことを記憶しています。

 今回も、「GISというのはそもそもアナログな地理情報(紙地図や調査の結果など)をデジタルデータにした上で加工したり分析したりするものなのだから、『アナログGIS』という概念はやはり変だ」とのご指摘を受けました。確かにそうだと思います。と、言いながら確信犯的にこの用語を使って来たのですが、最近、引用を頂いたり、実践例が出てきたりするようになり、少し解釈も多様化して来たので、改めて考えてみようと今回の報告に至りました。

 「アナログGIS」に関する最近の事例報告として、田部(2017)があります。横浜市の中学校の先生と共同開発された「OHP フィルムを活用した GIS(地理情報システム)入門地図教材」に対してこの語を使っていただいています。確かに、こう呼んだ方が誤解が少ないと思いますが、あえて「アナログGIS」の語を当てていらっしゃることを見ると、伝わりやすさを優先されたのかな?と思う所もあります。また、少し古い記事ですが、拙記事(いとちり:2010年1月16日)では、古今書院の「地理学演習帳」について紹介しています。これなどは、GISを含めた地理学で使う地域の分析手法を紙と鉛筆で再現できる画期的な演習帳面であり、やはり「アナログによるGISの入門教材」と言えると思います。スライドにもあるように、高校地理でのGIS利用における「ステップ0」の教材は、もっと充実するべきだと思います。

  新必修科目「地理総合」には、プロパーはいません。地理教育のベテランも、初めて地理を教える若手も、横一線だと思っています。これまでの「高校地理とはこういうものだ」という固定観念が逆に足かせになる可能性すらあるでしょう。あと2年少々、教師個々人はもとより、業界全体としてどう準備を進めていくか、引き続き考えをまとめて発信して行けたらと思います。









posted by いとちり at 06:05| Comment(0) | 学会発表 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年02月24日

日本地理学会(2019.3.20専修大学)発表要旨

 今シーズン最初の対外プレゼンとなる、日本地理学会春季学術大会の日程が出ました。

 3月20日(水曜日)、専修大学(生田キャンパス)です。
 自分の発表No.は316番、第3会場で14:40〜15:00とのこと。
 <地図・GIS>のセッションです。
 その後、同じセッション内で座長もやらせてもらいます。
 プログラムの詳細は、学会のホームページをご覧ください。

 今回の報告は、昨年11月に公開授業で行った「アナログGIS」の実践です。
 新しい学習指導要領(2022年入学生〜)で必修となる「地理総合」では、授業開きの一丁目1番地から「地理情報システム」をやるべしと書いてあるのですが(・・・「余裕があったらやる」ではなく、「まず、そこからやりなさい」ということになっています)、ステーキ屋さんじゃないですけど「いきなり・・・!」というのにはどうにもこうにも無理がある。「Web GISがあるじゃないか」といっても、それ以前の段階で、ストレスフルに出来る教材はないものか?というのが教材作りの出発点です。

 「アナログGIS」という言葉は、随分前から使っている概念ですが、誤解の無いように申し上げておくと、単なる手描きの地図の重ね合わせ(トレーシングペーパーによる地形図の要素書き出しなど)は、私の中では「アナログGIS」ではありません。作業自体はアナログ・手作業でも、教材自体はGISのデータとGISのソフトで作り、いつでもデジタルの教材にスムーズに移行出来てこそ「アナログGIS」だと思っています。「作り手」と「使い手」の分業など、結構考えて行かなければならない点は多々あります。実践自体はシンプルなので、論点を整理して、ご意見を募れればと考えています。

 取り急ぎ、発表要旨のファイルをアップします。
 ご来場、お待ちしております。
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PDFファイルはこちら

【リンク】
 アナログGISで考える世界の人口(いとちり:2018年11月18日)
 研究授業直後にアップした教材データなどです。
 よろしければこちらもご利用ください。
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posted by いとちり at 18:25| Comment(0) | 学会発表 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年03月23日

デジタル地図帳を活用したアクティブラーニング型地誌学習の実践(日本地理学会)

 東京学芸大学で行われた、日本地理学会で報告してきました。
 たくさんの皆様のご観覧、ありがとうございました。

 実践報告ではありますが、実践自体は生煮えと言いますか、これから改善の余地はたくさんあります。それでも、これから同様の実践を、通年でコンスタントに行うことで、4年後の新学習指導要領の実施に備えた教材作りとノウハウの共有を行いたいとの意思表示(公言して自分を追い込む)にはなったのではないかと思っています。

 プロパー、ノンプロパーのお話をしましたが、殊にアクティブ・ラーニングに関しては、すべての教員がノンプロパーだと思っています(そもそも自分達が生徒として受けた授業の形態と全く違います)。地理に限らず、特定科目の「プロパー」で、進学校などで「とにかくあれも教えなければ、これも教えなければ、あー時間が足りない」という方ほど、アクティブ・ラーニングには抵抗感があると思いますし、面従腹背を決め込んでしまうのかもしれません。あるいは、ゴールも評価もあいまいな単なる「グループワーク」をたまに行うだけで事足れりとしてしまうのかもしれません。そうした事態を避け、なおかつ地理らしさ(ちゃんと地図を使う)を出すために、日々試行錯誤を繰り返す必要があると思いますし、総合学科や専門学科の「地理A」は、新必修科目「地理総合」に最も近い科目として、積極的にアクティブ・ラーニングにトライしてみるべきではないかと思っています。

 年間通してどのような授業展開をするのか、評価はどうするのかについての質問を頂きましたが、この3学期に地理と現代社会で試験的な実践を繰り返し、アクティブ・ラーニングの型授業の「先発ローテーション」はある程度確立しました。また、テストの平均点も上がりました。「キャンプ&オープン戦」期間を終え、学会という「公式戦」を経て、いよいよ4月からの開幕を待つばかりといった状況です。今年は節目節目に学会発表を入れ、短報でも論文化して、アクティブ・ラーニング時代の高校地理のスタンダードを確立できればと思っています。その都度できる使いやすい教材や、素材へのアクセスも、このブログでお伝えできればと思います。



posted by いとちり at 22:57| Comment(0) | 学会発表 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする