2017年10月29日

野外活動におけるデジタル地図の利用(国立中央青少年の家・教員免許講習)

  国立中央青少年の家(御殿場市)で、教員免許講習の講師をやってまいりました。

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   小・中・高・特別支援学校、民間企業にお勤めの教員免許所有者の方と、様々な立場の方(社会科・地歴公民科以外の方が圧倒的多数)の中で、「地理」ではなく、「地図」の活用をテーマに、講義と実習(iPadを使ったアプリの紹介と操作)を3時間かけて行いました。
 使ったアプリは、カナダの「Avenza maps」と、京都の「Stroly」(Webサービス)の二種類。オフライン型とオンライン型、地形図や空中写真中心と、観光絵地図なども使える等、対照的な2つのアプリを使っていただくことで、たくさんの地図を状況に合わせて使い分ける「DJ」な利用を提案しました。

 「地図帳はデジタルになる」といっても、紙の地図帳が駆逐されるわけではありません。また、すべてのデジタル地図はパソコンやタブレットの画面"だけ”で見るものではありません。必要なものだけを表示する、プリントアウト(大判印刷、立体プリントを含む)してアナログに使うこともまた「デジタルの活用」なのです。アナログにすれば、操作の余計なストレスにさらされず、じっくりと「読図」「地図から読み取れることの言語化」に集中できますから、授業の規模や対象地域などに合わせた教材作りが求められます。また、地図に現在地が表示され、たくさん撮影した写真を瞬時に地図上で整理できれば、野外活動でも応用が可能です。また出していただいたレポートを見ながら、地理の教員では思いつかないような利用例が提案されるものと期待しています。menkyo002.jpg

 これだけたくさん(約40名)の皆さんにiPadを
操作してもらうのも初めてでしたが、色々と教訓になることがありました。例えば、無線LANの接続台数制限の問題や、GPS付きとそうでないものの違い(できることがどこまで限定されるのか)、利用例などです。
 総合学習や野外宿泊研修、修学旅行での利用シーンなどを提案してみましたが、事前学習、現地での利用、事後指導での活用など、これからいろいろな学校に関わりながら、発達段階や地域性を生かした教材作りをしていければと思っています。

 これからの地理教員は、デジタルの「地図の素」(国土地理院の基盤地図や、国土交通省国土政策局の国土数値情報、その他の統計資料やRESASなどのWEBサービス)を使いこなす(少なくともその存在を知っている)ことは必須ですし、簡単なGIS(地理情報システム)を使ってそれらを料理する作法は身に着けておくべきです。ですから、今回の講習で「デジタル地図は、面白いな」と感じられた方は、ぜひ身近な「専門家」に声をかけて欲しいですし、それで「???」な顔をするようならば、しっかり勉強してもらうべきだと思います。

 別の言い方をすれば、その先生がたとえ高校で地理を習っていなくても、大学で地理とは全く別の専攻をへて教師になっているとしても、本人の努力と情報へのアンテナの張り方次第で、食わず嫌いでデジタル地図を遠ざけている年輩の地理プロパーを抜き去るチャンスはあるわけです。特に、「地形図の読図を教えてなんぼだ」(地形図原理主義)「高校地理はセンター対策だ」(センター至上主義)に凝り固まって、「高校で地理を勉強していない人に地理なんか任せられない」→文系で地理を開講しない→次世代の地理プロパーが育たないという悪循環を断つためにも、若い世代には頑張ってほしいと思います。

 ご自身が日本史受験だろうが世界史受験だろうが、大学が経済学部だろうが法学部だろうが史学科だろうが、デジタル地図を使った教材作りに関してはほぼ対等です。職場のニーズに合わせってデジタル地図を使った教材をコンスタントに作って行く環境を整備できればと思っています。今回、高校の地歴・公民の先生は少なかったようですが、他教科、他校種の先生方との交流で刺激になったと思いますし、私自身も大いに刺激になりました。
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 お手伝いを頂いた先生、国立青年の家のスタッフの皆様、そして大雨の中研修に参加していただいた受講生の先生方、どうもありがとうございました。講義でも申し上げましたが、研修に参加された先生方ご自身だけでなく、ぜひ職場の社会科(地歴科)の教員に伝えて頂きたいと思います。



【イントロスライド】

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posted by いとちり at 20:52| Comment(0) | 世界地理の教材 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年11月23日

「高校生津波サミット」に行きます。

 金曜日から、生徒2人を連れて高知県に行きます。

 国連の「世界津波の日」にちなみ、「高校生津波サミット」という国際会議に出ます。

 高知県のサイトへ

 5月ぐらいに県から案内があって、「行く人!」とオープンで言ったら手が挙がったので、じゃあ、準備しようかと出してみたら、静岡県からうちと、もう1校(静岡学園さん)だけなんだそうです。でも、昨年から色々とお世話になっている宮城県立多賀城高校さんとか、この間視察に来ていただいた宮城県立石巻西高校さん、直接勤務はしてませんけど、若いころいろいろ部活とかでお世話になった立命館高校さんとか懐かしい学校の名前も見えて、心強い限りです。

 外国からの参加生徒さんの方が多いようで、私たちの分科会は、中国の生徒さんが議長で、ミクロネシア、パプアニューギニアの方と同じメンバーになります。「津波への備え」という分科会で、うちの生徒も英語で発表するのですが、まあ、いろいろと難しいことを喋ってもいかんだろうということで、毎度おなじみの「デジタル地図帳」を使って防災教育教材を作ったらどうなるんだろうか?というテーマで、沼津市の静浦海岸に行ってフィールドワークとヒアリング(現地の小中学校への売り込み)をした結果を報告します。
で、フィールドワークもあるので、会場の「黒潮町」のハザードマップをタブレットに入れて、現場でデモしようと思っています。

 新幹線と、飛行機と、送迎バスを乗り継いで約9時間の長旅です。めったに出来る経験ではないので、生徒ともども、楽しんできたいと思います。

 主催者に送ってYoutubeにアップするはずの「プロモーションビデオ」なんですが、締切を過ぎて載せられなくなってしまったので、自分の方にアップしました。

いろいろとお問い合わせをいただいておりますが、こちらをご覧いただければと思います。

黒潮町(入野地区)のハザードマップと地形図
これを「デジタル地図帳 黒潮町バージョン」に入れます。
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posted by いとちり at 20:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 世界地理の教材 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年05月01日

オンラインの古地図をオフラインの「デジタル地図帳」へマニュアル(加筆訂正版)

前回アップしたマニュアルで、一部不備がありましたので、加筆訂正しました。

 切り出した旧版地形図画像を「地図太郎」で開いた後「印刷イメージの作成」機能を使ってGeoTiff(位置情報付き画像ファイル)を作成するように書きましたが、その方法だと、位置情報がずれてしまう事がわかりました。ただ、この機能自体は、大判印刷等をする際には便利なので、そのまま残しておきました。あくまで個人の利用や、学校の教材として(DIG=災害イメージゲーム)使う場合にのみ使ってください。

 表示画像の範囲に限って、画面をそのままGeoTiffファイルとして保存すれば、このような問題は発生しません(旧版地形図上に、ピタッと現在地が表示されます)。

 測地系の違い?と一瞬疑ったのですが、WGS84測地系でタイル化された画像なので、それはなかったようです。もし、前回のマニュアル通りにやっていただいて、「ずれるなあ、おかしいいなあ・・・」と悩んだ方がいらっしゃいましたら申し訳ありませんでした。
posted by いとちり at 16:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 世界地理の教材 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年04月30日

オンラインの古地図をオフラインの「デジタル地図帳」へマニュアル

 インターネット経由で旧版地形図や空中写真を閲覧することが出来る「今昔マップ」が、「カシミール3D」で閲覧ができ、画像を切り出して位置合わせもできると聞き、さっそくマニュアル化してみました。
 作業は多少面倒ですが、紙地図をスキャンして、位置合わせしてといったところを考えると、相当な省力化です。Geotiffファイルにして以降は、前回書いた熊本復興支援のマニュアルとほぼ同内容ですので、そちらをご覧ください。
posted by いとちり at 00:13| Comment(0) | TrackBack(0) | 世界地理の教材 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年01月30日

「消滅可能性都市」でGIS実習をしてみました。

 「人口の地理」のジャンルのまとめとして、「未来の日本の人口予測」をしてみようとのことで、GISで描いた市町村の地図を見る授業をしてみました。

 総務省の「RESAS」(地域経済分析システム)の中に、「人口の将来推計」というコーナーがあり、そこでデータをもらってきて、身近な地域(静岡県+関東エリア)の人口の将来予測の地図を「MANDARA」で作りました。


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年少人口の増減(2010年=100)
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老年人口の増減(2010年=100)
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生産年齢人口の推移(2010年=100)

 日本の人口は減少に転じている。「高齢化」が進み、地方はお年寄りばかりになる・・・・ここまではいいのですが、やがてお年寄りの人口すらも減り、彼ら彼女らの購買力に支えられてきた地域経済や、高齢者関連の福祉産業も頭打ちとなり、雇用(特に女性の雇用)もなくなり、女性が地域から離れる。子供を産み育てる人がいなくなるので、少子化はさらに加速し、生産年齢人口も減るから税収も減り、「消滅可能性都市」になる・・・・・・という見立てをしたNHKクローズアップ・現代”(2014年5月1日付の映像を刺身のつまにしながら、地図から読み取れること”を書いてもらいました。
  
  日本創成会議・人口減少問題検討分科会若年女性人口(20歳〜39歳)が、2040年までに50%以上減少する可能性のある市町村を、「消滅可能性都市」と定義しています。RESASにもデータがありますので、地図化できます。トリアージの配色で塗り分けてみるとこんな感じになります。

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  2010年→2040年の若年女性人口の減少率(%)
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2040年の若年女性人口の市町村別分布(人)

 「消滅可能性」という言葉が一人歩きしてしまっている感がありますが、まあ行政機能を維持する事が難しければ、さらなる市町村合併が繰り返されるのではないかと思われます。

この地図を前に、「うちの街はどうだろう?なくなってしまうのかな?」と、一喜一憂する姿を見て、「地理」でこれを教材化することのむずかしさを感じました。

ハザードマップを使っても同じような事が起こります。「うちのあたりは大丈夫かな?」「災害にあったら嫌だなー」といった危ないところ探しに終始しがちです。本来、「地理」で伝えなければならないのは、この「若年女性人口の減少率50%以下=消滅」という定義がどこまで妥当なものなのかを考えてもらうことだと思いますし、この団体のリーダーがおっしゃっている「選択と集中」論に対して、自分たちはどう考えるか?です。

 乱暴な解釈をするならば、「消滅可能性都市」論は、トリアージよろしく、「ブラック」な地域は切り捨てて、より生きながらえそうな(ホワイトorグリーン)地域にインフラや投資を集中させて、人口減少期を迎える地方の「防波堤」を作ろうという考えです。また、「引力」を持ち続ける東京のような拠点都市を各地に作り、東京ブラックホール”(女性を引き付けるだけ引き付けておいて、結局つぶしてしまう現状)を食い止めようという考え方です。・・・いいか悪いかは別として、「そういう考え方もある」「自分のところはブラック(or レッド、あるいはホワイト)だけど、どうなるんだろう?ということをじっくり考えて欲しかったのですが、悲しいかな最終講義”。意見の集約もできぬまま、はいおしまいでした。

もっとも、これは卒業していく生徒たちに与えた宿題です。「2040年、ちょうど君たちが今の自分ぐらいの歳になるわけで、そのころの自分の子供、親の介護、仕事、ひっくるめて未来は暗いんだけど、どうしたらいいか、考えてね。そのころは、自分は老齢人口”の一人だけど、なるたけお邪魔にならんように頑張るわ(笑)」・・・・という締めで終わりました。

 手掛かりはつけました。まだまだ洗練が必要な感じです。
 とりあえず、恒例によりまして、教材ファイルをアップしておきます。お手元に「MANDARA」があれば、ぜひ追試していただくとありがたいです。

MANDARAの最新バージョン(9.44)用のデータファイルです。
ベースマップに「市町村緯度経度鉄道」を使っていますので、Google Eath用kmlファイル書き出し等に対応しています。


MANDARAの旧バージョン(8.08)用のデータファイルです。
ソフトのインストールが禁止されているPC室のパソコンで、USBメモリやデスクトップ上にMANDARAを置いて動作させる場合(うちの学校はこれです)、こちらを使うと安定して動きます。



posted by いとちり at 16:24| Comment(0) | TrackBack(0) | 世界地理の教材 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする