2025年04月13日

2025年度授業はじめ―二つの「聖地」巡礼

 恒例となりました、「授業開きに野外巡検」の2025年版の資料をアップします。
 今年のテーマは「聖地」巡礼
 学校の側の木ノ宮神社は、意外と新しい(明治期に伊豆から勧請)神社なんですが、なぜわざわざここに神社を建てたのか、それも富士山の代名詞である浅間神社などではなく、東伊豆の木の宮様なのか、あと、神社ができる前からあったと思われる「四等三角点」が果たした役割とは?仮説(一応根拠のある自説)を踏まえて「地図から類推する楽しみ」を堪能してもらっています。ワークシートを添付します。
 謎かけしておいて解答もなしというのもなんなので、かいつまんで説明しますと・・・。

(1)木ノ宮神社の丘は、源平の合戦の時代、源頼朝が配下の軍勢の軍事訓練(巻狩り)をする際の展望台だった
(2)頼朝に協力した地元の人達(勢子)によって、鎌倉時代には頼朝を祀る神社ができて賑わったが、北条の代になるとうち捨てられ、長らく無人の丘だった。
(3)明治になり、地元の衆が再び神社として復活させて、山火事防止に御利益のある河津木ノ宮神社を招聘した。
・・・と、ここまでが看板の縁起に書かれているお話。

ここに旧版地形図を含めて補足をしますと
(4)木ノ宮付近は、扇状地の中腹にありながら、各地に現役の水道の水源井があるほどに水が豊かな土地である
(5)木ノ宮神社の丘に沿って走る街道(十里木街道)の尾根筋を境に、林業や茶畑の集落と、水田の集落に分かれる
(6)山側の集落は、もともとの地場産業に加えて、明治維新後に職を失った幕臣達が入植して開墾地が多い(「次郎長開墾」などが有名)
 ⇒山火事防止に加えて、神の加護を祈る景気づけの意味もあったのでは?
 ⇒水が豊かな水源地に近い。林地が遠くまで見渡せて山火事の監視にも有為な地形。

 高校地理が『全員必修」になって4年目となります。同じ話をしても、文系さんと理系さんで、「ツボ」が違って面白いです。
「頼朝」とか、「次郎長」とかでビンビン反応するのが文系日本史族。「富士川の合戦」前に、坂東のツワモノどもがこ眼下に集結したのか・・・と喜んでくれますし、理系さんには「三角点は何のために置かれたのか?」という話と、でっかい三角関数(三角測量)の話は鉄板です。文理と言っても選択してクラス分けして日も浅いのですが、日も浅いからこそアイデンティティは強いのではないかとも思います。好意的な感想をたくさん頂いています。

 「フィールドワークに行こうにも、時間もないしネタもない」なんて話をよく聞きますが、このルートはゆっくり行って帰ってきて30〜40分、教室に戻って「まとめ」を書いてもらうこともできるくらいの時間で回れます。また、どんな場所にも歴史があり、地名があり、景色がありますから、それらをいかに組み合わせて「一品」に仕立てるかは、料理人の腕の見せ所だと思います。もっとも、いきなりうまく行くことはないでしょうし、クラスの雰囲気、天候などでもまた違ってきますので、春先だけでなくまた「新ネタ」を用意して持ち込んでみることも必要かと思います(一応、現任校ではA・Bコースを持ってます)。

 あと、資料にQRコードをつけて、地理院地図や今昔マップとリンクをつけるととてもよいです。
 それを使った「問い」をどうするか、頭のひねりどころではありますが。

 外を歩くにはいい季節になってきました。
 ぜひ、「地理の外周コース」を作ってみて下さい。
hyoshi.jpg
レジュメです。
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posted by いとちり at 20:51| Comment(0) | TrackBack(0) | 世界地理の教材 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2025年03月20日

次期学習指導要領を見据えた地誌学習のあり方について(日本地理学会公開シンポジウム)

日本地理学会春期学術大会(駒澤大学)のシンポジウムに登壇してまいりました(プログラムはこちら
シンポジウムのテーマは「次期改訂に向けての小中高地誌学習の新たな方向性―GIS・フィールドワーク」でした。
自分に与えられたテーマは表題の通りです。

 込み入った話はスライドの本体に譲るとして、総合討論でも話題になったことは、「中学校社会科地理で扱う地誌と、高校地理歴史科の地理総合・地理探究で扱う地誌は何が違うのか?(違いを持たせなければならないのか?)という点です。特に、高校ではあまりにも手薄になってしまっている日本地誌をどうするか?は、新学習指導要領(2032年〜)を待たずとも、4月の授業から常に考えて行かなければならない問題だと思います。

・GISを利用する利点は何か?提示が容易になること、元データにあたれること、バーチャルとリアルの往復から地域の課題
を検討することができること。
・「地理総合」では、防災事例について、参考文献(自著)を使って図表を自分で「完コピ」した上で手書きで内容をまとめる実践を行った(主題図は吸い物、レポートはごはん)。
・「地理総合」「地理探究」から「地理基礎」「地理」にせよ。
・「地理基礎」は地誌を中心に(日本地誌を含めて)、「地理」は系統地理と棲み分けたらよいのではないか?(理科のように)
・中学校社会科の「日本地理」とは別の、高校ならではの日本各地の地域課題を検討する内容にすべし
・GISの強みは「データの原典」に簡単に触れられること、作図を指導できること。「作図教育」が重要
・堅いデータを読み砕く(かつお節削りで削る)、資料の図を「完コピ」し(おかずを作る)、手書きの文章で内容をまとめる(ごはん)といった形で「誰かに供する」(見せる・魅せる)ことを前提とした実習のノウハウを確立する必要がある。
・2032年の指導要領は、ベテランにとっては遙か先(退職後)の関心かも知れないが、現行の「地理総合」「地理探究」を履修している世代が先生になったとき、まず最初に関わる学習指導指導要領である。

といったところが主な内容です。

ご笑覧ください。
hyoshi.jpg

スライド本体はこちら



posted by いとちり at 21:14| Comment(0) | TrackBack(0) | 世界地理の教材 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年10月20日

マップピッツア=シズオカーナ(MANDARAーJSで作る市町村マップ)

地理総合の調理実習です。

前回(2学期当初)に世界の農業データで扱った”MANDARA JS”を使って、静岡県内の市町村の主題図を描きます。
白地図(ピザ生地)の上にソース(塗り分け)をかけて、具材(点やグラフなど)を載せるプロセスはまさにピッツアだということで、
「マップ=ピッツア」と呼んでいます。

マップピッツア=グローバル(世界地図)
マップピッツア=ジャポネーズ(日本全図)
マップピッツア=シズオカーナ(静岡県内図)
さらに、
マップピッツア=フジーナ(富士市内)なども作れます。
あと、出来上がった作品を以下に「切り分けるか?」といった技も出てきますが、それはまた追々。
マニュアルとサンプルデータをアップします。

付属のCSVファイルに”LAYER”以下の項目をコピーして足してあげると、データを更に増やしていくことができますが、そのあたりのノウハウは改めて。
ベースマップが静岡県だけでいいのですが、便宜上「日本市町村緯度経度」という、その名の通り日本全体の市町村の区分図を使っているので、データ処理がとても重くなってしまうのが難点です。MANDARA(パソコン版のMANDARA10)の方で、
大きな地図ファイルをを切り分けて別の地図ファイルを作るような技ができればいいのです(MANDARA10→MANDARA10ならばできます)、MANDARA10→MANDARA JSでは直接そういうことができないので、なんとか改良して欲しいものです。

背景地図を「静岡県Only」にした版は、改めてアップします。
shizuokana.pdf(マニュアル)
shizuoka-data (1).csv(データ)
manyu0001.jpgmanu002.jpg


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2024年09月29日

地図のキッチン@金沢 データ集

10/5(土) 地図のキッチンのデータです。
hinanjo.mdrmj(2024能登半島地震による開設避難所と最大避難者数)]
kanazawa-city.mdrmj(国勢調査区別金沢市の人口と増減)
gyogyo.mdrmj(石川県の市町村別漁業従事者数と増減)
pop-ishikawa.mdrmj(石川県の市町村別・年代別人口)
toilet.mdrmj(石川県内の公衆トイレの位置)

【一括ダウンロード】(Zipファイル圧縮)

【ダウンロードできない場合はこちらから直接開いてください】
hinanjo.mdrmj (ブラウザ閲覧用)
kanazawa-city.mdrmj(ブラウザ閲覧用)
gyogyo.mdrmj(ブラウザ閲覧用)
pop-ishikawa.mdrmj(ブラウザ閲覧用)
toilet.mdrmj(ブラウザ閲覧用)

【MANDARA JSはこちらです】

【マニュアルはこちらです】
manu-PC.pdf(パソコン用)
]

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2024年09月04日

MANDARA JS/ロイロノート対応 塗り地図マニュアル(農業イントロ編)

 前回掲載した「MANDARA JSマニュアルですが、Chrrome Bookからアクセスしたところ、一部機能が動作しませんでした(属性データへのデータの貼り付け)。ブラウザのバージョンの問題かもしれません。

 作図の方法を一部変更し、地理総合の「農業」の分野のイントロとなる実習のマニュアルとワークシートを作りました。
 勤務校の学習システムが「ロイロノートfor School」なので、ロイロノートからデータを配布する(資料箱に取りに行く)
 形をとっています。Google ドライブ等も利用できると思います。

 まずは「MANDARA JS」で地図を描いてみることに主眼を置いています。
 統計データの再計算と地図への反映など、Web環境でできることをこれから試していきたいと思います。

 マニュアルとワークシート、データ(csv形式ファイル)を載せます。

manyu001.jpg
【データ】
sheet1.jpg
【統計データ(使い方はマニュアル参照)

posted by いとちり at 22:28| Comment(0) | TrackBack(0) | 世界地理の教材 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする