2010年09月26日
新旧地理教師対談-年齢差は50歳
お相手は、「日本列島地図の旅」シリーズでおなじみの、大沼一雄先生。御歳87歳(!)。年齢差はちょうど50歳の、新旧地理教師対談となりました。
旧制湘南中学時代、「伝説のカリスマ地理教師」、香川幹一(1904-1985。私がいつか伝記を書きたいと思っているうちの一人)の授業にしびれて地理を志し、浪人中に召集、兵役、復員後に東京高等師範に入学、GHQの食堂で皿洗いのバイトをしながら卒業して、中高の教員を経て30歳前半で、東北地方のルポタージュで執筆デビュー、ヒット作、「日本列島・・・・」を出し、それからそれから・・・・と、うーん、これだけで面白い伝記が書けるなというくらいのライフヒストリーを伺いました。
今も現役で会長を務める「地図の旅愛好会」のお話(この会誌の記事が、また素晴らしく面白い)、ご自宅の(対談は先生のご自宅で行いました)多摩ニュータウンの最初の最初の頃のお話、地理教育への提言などなど、何か「対談」というよりも聞き取り調査(笑)。先生の濃いお話を拝聴して、私が「ほぉー!」とうなづきつつ、なぜそんなにすごいことなのか、いちいち編集者の方に「注釈をつける」いう感じの3時間でした。
こちらから用意していった秘密兵器、「Google Earthに載せた新旧の地形図 on iPad」を肴に、なんとか話について行ったという感じでした。
1886 1998
2階の仕事場を見せていただきましたが、壁一面の世界地図、大学の研究室や本屋の片隅にあるような「地形図専用引き出し」、机の上には訳しかけのイギリスの地理の教科書。「これが出版されたらすごいよ!」と熱く語られる姿は、現役バリバリ。今年の6月にも、新著「地図の記号と地図読み練習帳」(東洋書店)を上梓されています。
行きは多摩センターからタクシーでしたが、帰りは反対側の駅まで先生の車で送ってもらいました。「僕はスバル一筋」とおっしゃる車はマニュアルの軽(私もです)。もちろんカーナビはなし。「ここが多摩ニュータウンのいろは坂と言ってね・・・・」と、いい感じのエンジン音を出しながらダウンヒルを攻め、「リッター20kmは走るよ」と燃費自慢(まめにアイドリングストップをするのがコツだとか)。また、「縛られるのは嫌!」という先生は、断固として携帯を持たず(私も持ってません)、「指定席と旅館の予約は大っきらいで取ったことがない!」と豪語されていました。行った先で決めるんだそうです。一度仙台で40件断られて、石巻に泊ったことがある以外はそんなに困ったことはないとか。
お名刺には、肩書きは一切なく、名前と連絡先のみ。中学生時代からの日記を書かさず、新聞のスクラップは土地別に分類されて次の巡検と原稿のことを常に考えて忙しくされている大沼先生。「いやー、かっこいいねぇ」(ちびまるこちゃん風に)と感心しました。一度また「フィールド」でお手合わせ願いたいものです。
3時間におよぶ対談。さてどんな記事になるのか楽しみです。
2010年08月27日
「いとちり」が本になりました。
「いとちり」が本になりました。
ただいま、「いとちり」読者の皆様向けの特別割引(出版社直売り・送料無料)キャンペーンを実施中です。本屋さんやAmazonに並ぶのは、9月1日以降になるとか。
詳しくは、「いとちりポータル」(http://itochiri.jp)をご覧ください。
「いとちり式 地理の授業にGIS」
古今書院より、定価¥3150で新発売。
2010年08月17日
聖地巡礼―100年前のカリスマ地理教師の生地を訪ねる
少し遅めの盆休みを瀬戸内海岸で過ごしてきました。
龍馬ブームに沸く海辺の街で、家族そろって「海だ!」と燃えている中、早めの夏バテか、夏風邪と原因不明の筋肉痛の激痛に襲われ、荷物番&撮影係の憂き目にあいつつ、徹底的に何もせずに過ごした感があります。
ようやく筋肉痛が治った帰国前日(昨日)、かねてから行きたかった“聖地”である、倉敷市西阿智に行ってきました。JRの倉敷駅から西へ1駅、新倉敷駅との間、高梁川(たかはしがわ)に臨む、ベッドタウンです。こここそが、稀代の教科書ライターにして帝国書院の創業者、守屋荒美雄(すさびお)先生の故郷なのです。
今年から来年にかけて、先生の伝記(をたどる紀行エッセイ)を書こうと思い、ゆかりの地を訪ねようと準備をしています。先日、帝国書院にお邪魔して、いろいろと教えてもらいました。ちょうど、荒美雄先生が創立に関わった関東一高(東東京代表)の野球部が甲子園出場を決めた直後ということもあり(いよいよ早稲田実業との「東京決戦」ですね)、非常に盛り上がっているところにお邪魔しました。
先生が学び、最初に教鞭をとった小学校(小学校といっても、当時は高等小学校まで出ると、今の高校卒業程度になった)である「西阿智小学校」に飾られた先生の銅像(地球のオブジェ付き。建てたときは全身像だったが、戦時中金属供出されたのだとか)、高梁川に臨む先生の先祖代々のお墓(先生はクリスチャンなので、遺髪のみが入れられている。お墓は東京・府中にあり)、たぶんこのへんだったんだろうなあという生家跡(今はこじゃれたハイツ)等、ぐるっと歩いてみました。
古い地図があるわけでなく、案内の方がいるわけでなく、まあ「下見の下見」というフィールドワークでしたが、農道を片道8kmを歩いて通勤し、片時も本を離さなかったという逸話や母親との寺社詣でにかこつけた遠出がなによりの楽しみだった幼少時代のエピソードなどを思い出しつつ、とりあえず、同じ場所で同じ空気を吸ってみて、お墓に一礼して帰ってきました。
今更言うまでもないことですが、今、地理の先生方の元気がいまいちありません。専門誌を見ても「日本史必修阻止!」とか「選択者を増やすにはどうしたらいいか」とか、なんか暗ーい話題が多いですし、「忙しすぎてろくに勉強も出来ないよー」という嘆きの声も聞こえてきます。地理の人だけでなく、全教師を元気づけるためにも、やっぱりここは荒美雄先生のお出ましと行きたいところです。なにしろ、生涯に書いた教科書が200冊、37歳で教師を辞めて46歳で起業、小学校卒ながら自力で中学校教員の資格を取り、「教科書=帝国大学の偉い先生が書いた無味乾燥な読み物」という固定概念を自ら打ち破った人。最初のヒット作で得た印税が、今のお金にして1億6千万円以上・・・・・等々。とにかく凄い先生なんです。ただ、職を失って今でいう「フリーター」になったり、せっかく得た正社員(師範学校教諭)の仕事を数か月で投げ出してしまうといった挫折も経験しています。
守屋荒美雄先生は、教科書がまだ国定でない時代、帝国大学の偉い先生の書いた教科書を真っ向から批判して、自分で教科書を書き続けました。実際、地理の教科書は「守屋前」と「守屋後」で大きく変わり、その流れは今日まで続いています。「教科書や地図帳に主題図やグラフが出ている」「その地域の産業や文化を学ぶ」なんて今ではごく当たり前のことも、「守屋後」の現象です。
「批判だけならだれでもできる。国全体をも動かすには、ひたすら学び、書き、世に問わなくてはなくてはならないんだ」・・・・なんか偉そうですが、100年前のカリスマ地理教師が自分にそう語りかけてくるような気がしました。
あ、拙著単行本第1号、8月20日に古今書院より発売だそうです。
早いとこ目次に対応したリンク集を作らねば。
2010年07月25日
AR(拡張現実)を使った教科書
その教科書を小型のビデオカメラで映して画面に投影します。
教科書のところどころに印刷されている図形に、対応する図形カードをかざします。
すると、あら不思議、画面上には立体的な動画が・・・・!
というデモンストレーションビデオを見つけました。AR(拡張現実)の応用。
なんか、「ドラえもん」にでも出てきそうな画ですね。
教科書の文字が、英語ではなく「あ、タイ語だ」(大学生の頃、何度か調査に行ったので、個人的にはとても懐かしい)と思って調べてみたら、タイのIPST(国立教育技術研究所:http://www3.ipst.ac.th/eng/)が開発したことがわかりました。
この間、クラスで見たロボットコンテストでも日本を負かして優勝してましたし、彼の国の「理系」はなかなかやりますね。
プロジェクタにつないで、見せたりすると面白いのではないかと思います。立体の地球が割れてマントルとか見られますし、いちいちブラウザを立ち上げたりする必要もなし。こういうのもやっぱり「デジタル教科書」って言うんでしょうか。
ARといえば、i-phoneのセカイカメラがおなじみです。なんでもない景色をi-phoneでのぞくと、GPSで位置を割り出して、景色に対応する広告や道案内、落書きなどが見られるという代物。「フィールドワークの解説に応用できないかな」なんて思って見てましたけど、こんな使い方もあるんですね。
アメリカ産に席巻されてしまっている昨今のICT業界ですが、日本を含めた「アジアのアイデア」に、ぜひ頑張ってほしいものです。
2010年07月13日
遅ればせながら「もしドラ」読みました。
2時間ぐらいで読めましたが、そんなに目も疲れず、快調でした。
一旦スイッチを切って、また入れて起動するとちゃんとそれまで読んでいたところから出ます。
これは、いいですね。主人公の「マネージャー」だけでなく、それぞれの登場人物がそれぞれの立場で「マネジメント」に参加していて、キャラクターがよくできています。それぞれの登場人物が自分の「分」をわきまえているのがいいです。個人的には、最後にキャプテンになる「一番へたくそな企業家志望」の選手が一番好きです。
「頑張っている人を人事で報いる」なんてところは、この間のサッカー・日本代表の人事(キャプテン交代劇)ともだぶって面白いです。それにしても長谷部選手(藤枝東高校出身)は偉大です「Number」誌の彼に関する記事を読んでから、W杯を見るのが俄然面白くなりました。
Youtubeに、再現ドラマを交えた特番が出ています。
http://www.youtube.com/watch?v=TrP2K5DX3nE
つなぎ合わせてDVDにして、授業で見たいと思います。
そのうち映画化されるんじゃないでしょうか?
この本の著者が、来週富士市に来られます。
中央図書館の企業支援施設“f-biz"主催の講演会。
http://www.f-biz.jp/data/eventdata/20100722pinpoint.html
ラジオで聞いて「おっ!」と思い、読んだわけなんですが、講演会はあっという間に満員御礼でした。
●著者、岩崎夏海氏ブログはこちらです(417万PV!)
「もしドラ」も、ブログ上の構想披露を出版社の人が見たのがきっかけだったとか。
http://d.hatena.ne.jp/aureliano/