2023年09月02日

【9/7発売】新刊『ランキングマップ世界地理』”まえがき”公開

 9月7日に、ちくまプリマー新書から新刊『ランキングマップ世界地理ー統計を地図にしてみよう』が刊行されます。
前作、『地図化すると世界の動きが見えてくる』(ベレ出版)を見てくださった編集担当から企画を頂き、世界ランキング(上位だけでなく下位、最新だけでなく過去との比較)の視点を入れた上で、世界の統計を地図に表しました。

 初の新書であると同時に、過去の3冊がいずれも横書きの書籍だったので、自身としては初めての縦書きの本です。また、オール白黒ページで新書サイズにどうやって地図を落とし込むか、文章よりも地図の作成に労力を割きました。MANDARAを基本にすべて私の自作の図なので、プロのデザイナーさんが作図した一般書に比べると手作り感が抜けないというか、見づらいところもあるかもしれませんが、「漁師の料理」と思って温かい目で見ていただければ幸いです。素材の味と、ボリューム(2ページに1回は地図が登場します)に関しては自信があります。

 出版元から許可を得ましたので、書籍から「まえがきに代えて」の部分を公開します。まえがきから地図が登場しますが、本書のコンセプトを伝える上で地図は欠かせないと思い、「ランキング」ということで連想することが多そうな、サッカーのワールドカップのランキングをネタにしてみました。掲載したPDFファイルは原稿からのものです。

 発売は9月7日ですが、Amazon等で予約を受け付けています。
 前作同様に、「社会人が通勤途中で気軽に読み流せる地理書」になりました。更にプリマー新書のエディションが加わることで「地理好きの生徒・学生が、誰かに語ったりツイートしたくなる本」になったと自負しています。ぜひ手に取っていただければと思います。
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2020年03月23日

富士山の環境と防災を生かした地域活性化策(裾野高校郷土研究部)

 顧問をしている郷土研究部の活動について、静岡県の高文連郷土研究部会の機関誌に投稿しました。

 かつてはどこの高校にもあった郷土研究部ですが、現在は静岡県内で12校しかありません。
 活動も、アカデミックに優れた研究活動をしているところがある一方で、本文にも書いたように、とりあえず「所属するため」の部活として(部活動全員加入制のため)におかれているような部もあります。
 「笛吹けど・・・」な状態が長く続いてきましたが、今年度は地域の皆様の絶大なる協力をいただき、徐々にではありますが歯車がかみ合ってきたように思います。
 コロナウイルスで中断していますが、裾野駅前の「郷土研究ショップ」を引き続き展開していきます。

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裾野高校郷土研究部(2020)「富士山の環境と防災を生かした地域活性化策―地域課題解決型の部活動に向けた取り組み」,『駿遠豆』(静岡県高文連郷土研究部年報)32,3〜5頁.


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2018年02月06日

カリスマ地理教師から経営者へ(帝国書院「地理・地図資料」2018年3学期号)

  昨年8月に倉敷市でやらせてもらった帝国書院100周年記念事業の講演を記事にしました。
  帝国書院の高校教員向けの冊子「地理・地図資料」に掲載されましたので、同社サイトの当該ページにリンクします。
 ちょうど昨日、現地を案内して下さった地元の花屋の社長さん(お墓の維持管理をされ、郷土史にも造詣が深い)からお電話を頂き、「地元の人相手に、またなんか喋ってくれんか?」というお話を頂いていたところなので、早速1冊送らせていただいたところです。正月に書いたように、地元では「守屋墓」(もりやはか)の存在は知られていますが、どんな方のお墓なのかは、あまり知られていないようです。
 昨秋お招きいただいた、帝国書院100周年記念式典には、倉敷の伊東香織市長もお見えになっていました。ある意味で「地理教育の聖地」として盛り立てていければと思います。

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【画像をクリックすると帝国書院のサイトにリンクします】

【リンク】


「地理の神」への初詣いとちり:2018年1月4日)
 JR西阿知駅から銅像のある小学校、「守屋墓」への行き方を地図と写真で案内しています。

  表紙には100周年のあゆみ、「トピックス」には、地図帳作りの現場をまとめた動画があり
  ます。

posted by いとちり at 22:25| Comment(0) | 論文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年12月07日

必修化に向けた高校地理の改革(立命館地理学29号)

   昨年12月に、立命館大学で行った講演を論文化しました。

 必修地理の実施に向けての障害となっているもの(人)は何か(誰か)?との問いに対し、高校で地理を習ってこなかった若手以上に、「地理とは特別な科目である」と自負してやまないプロパー達なのではないか?という、ややもすると挑発的な内容です。

 高校で地理を履修してこなかった世代に対する過度な力量不足の懸念を示す地理プロパー教員は多くいます。また、GISやアクティブ・ラーニングなど、新たな手法に対する拒否反応を示す地理教員も少なくありません。よく言えば職人的であり、悪く言えば排他的な雰囲気のままでは、必修を機に新たに地理教育を極めてみようという若手の成長の機会を奪いかねません。

 ただ、忘れてはならないのは、大量の「高校地理・未履修」世代を生み出したのは、他ならぬ現場の教員達であるということです。本来は「選択科目」なのですから、すべての生徒に選択の余地を与えるべきですし、世界史and日本史or地理だけでなく、世界史and日本史and地理というような組み合わせが出来るようにするべきだったのですが、各教員の「専門性」という現場の論理で踏みにじられ、30年近くにわたって選択の機会が奪われてきたこと、地理のプロパー教員も少なからずそれに加担してきたことを忘れてはなりません。
 「地理は、理系のセンター科目」なんて意識がまかり通り、地理プロパー(特に進学校の教員)がそれを是として来てしまったオールドプロパー達。彼らが残したツケを、次の世代が払っていかなければならないのです。

 これからの地理教育を背負っていく若手教員は、自身の履修歴に関係なく、OJTで技術を身に着ける必要があります。そしてそうした若者たちをリードするのが40代〜50代のミドル層です(必修で日・地・世・地を学んだ最後の世代であり、次の新必修地理を学ぶ子供達の親の世代=私もその一人)。

 団塊ジュニア世代は、同世代人口は前後に比べて非常に多いのですが、教員採用の数が極度に絞られたため、教育現場においては多数派を成していません。また、若いころは上にオールド・プロパーがたくさんいたおかげで、なかなか専門の科目を十分に担当させてもらえないなどの辛酸を舐めてきました。だからこそオールマイティに何でも担当できるという強みもありますし、「ノン・プロパー」が、一から勉強して知識を蓄えて行くことの大変さとやりがいを肌で感じて来た世代でもあります。「大学受験は地理ではないんです・・・」「専攻は地理学ではないのだけど・・・」と謙遜されつつも、すごい実践をされている先生方は、これからの必修化時代をけん引する「ニュー・プロパー」と言えるでしょう。下手なオールド・プロパーよりも、よほど頼れます。

 教員の採用数が増え、若い教員が増える一方で、定年延長ともいえる再任用制度が定着する中で、超ベテランと若手が組んで授業をする機会が増えています。地理だけでなく、歴史の分野においても、新指導要領の目指す方向についていけない(ついて行こうともしない)教員にどう対応して行くのかは大きな課題です。私自身は、単なる精神論、教育論に頼るのではなく、「誰でも使える、本格的な教材」の開発し、共有していく事が、有効な策である考えています。そのためのデジタル地図であり、タブレット端末であり、グループワークであり、野外活動ではないかと思うのです。

 また、意欲的な教員の個人的な頑張りには限界がありますし、教員間のネットワークも、各県の研究会が機能しているところはよいですが、そうでないところも少なくありません。そんな時、地理学科を置いている大学のOB/OG人脈、若い教員と現役学生のつながりなど、改めて見直されるべきですし、大学側もそうしたネットワークの構築に時間と費用をもっとかけるべきではないかと思いました。

 高校地理の必修化が再開される地理教育の2022年問題を議論する上での端緒になればと思います。
伊藤 智章(2017)「必修化に向けた高校地理の改革−現場の実践と地理学教室への期待」、
立命館地理学29,pp.11−19.

【リンク】
2016年12月3日、立命館大学で行われた講演要旨とスライドはこちら

posted by いとちり at 22:37| Comment(0) | 論文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年03月31日

タブレットコンピューターを用いた「デジタル地図帳」システムの構築―沖縄修学旅行の研修教材の制作を中心に―(E-journal GEO)

   

 日本地理学会の電子機関誌「E-journal GEO」に掲載されました。

 タブレット・コンピューターを使った「デジタル地図帳」システムは、これまで色々なところで口頭発表し、雑誌記事で書いてきましたが、ようやく査読論文となりました。自分自身も含めて、これから関連研究を行っていく上での定番、スタンダードとなる論文になったのではないかと自負しています。

 本文中にもありますが、この教材の最大のウリはオフライン稼働であること。それに加えてクローズドなデータ共有ができること、さらに私の実践では当たり前といえば当たり前ですが、端末の導入費以外はほぼ無料であることです。
 そう遠くない将来、高校の教育現場にタブレットが普通に入ってきます。学校の備品としてのタブレットを使って、無線LAN設備のない教室や野外でも自由に使える地図帳、ハザードマップや新聞記事など、ネットにアップして使うには著作権的にも肖像権的にも厳しいような資料を使って授業を進める上で、このシステムは極めて有効です。

 アプリ側で、年間数千円の課金をするようになりましたが、Avenza Mapsというアプリは、
iOSでも、Android端末でも動きます。Android版での実験はまだ行っていませんが、GPS機能付きの端末はAndroidの方が安いので、普及に向けたテストをまた行っていきたいと思っています。

 また、Wifi版のiPadなど、GPSがついていない端末でどのようなことが可能か(一応、Wifiルーターやスマホを持っていれば、位置情報は示せるはずです)、検討を重ねて見たいと思います。・・・いくらGPS付きのiPad(Simフリー版のセルラーモデル)がよいと言っても、既にWifi版がある学校や、そういう意見が通らないケースも考えられますので。

 沖縄タイムス社をはじめ、現地の皆様には本当にお世話になりました。査読意見をもらって、せっせと直して行き来している間に2年が過ぎ、もう1回別の生徒達を修学旅行に連れて行く(今度は沖縄市、コザ地区バージョンをやりました)ことになりましたが、新たな機能を試してみた結果など、報告にまとめて行きたいと思います。

【書誌】
伊藤 智章(2016)「タブレットコンピューターを用いた『デジタル地図帳』システムの構築―沖縄修学旅行の研修教材の政策を中心に―」,e-journal Geo 11(2),pp.516-525.
【本文】(電子版論文へのリンク)

ejournal.jpg IMG_3678.JPG 

E-journal GEO
Vol. 11 (2016) No. 2 p. 516-525

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posted by いとちり at 07:19| Comment(0) | TrackBack(0) | 論文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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