2014年06月08日

6/14高校地歴教育の近未来を考えるシンポジウム

 昨年から末席に加えてもらっている、日本学術会議のシンポジウムが来週あります。
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 次の学習指導要領(高校では、完全実施が2022年度入学生より)に関する話なので、相当先のことではありますが、ちょうど自分の子供がかかわるかどうかという頃になります。

 内容は、同会議が進めてきた地理・歴史の基礎科目の設置の有用性を確認し、それに逆行する(?)形でほぼ本決まりになりつつある、与党・文科省の日本史必修を軸とした新カリキュラム案に抗する(と、私は理解しています)ものです。更に意訳すると、業界の悲願である地理・再必修化の旗を掲げ、
東京都のように、日本史必修を押し付けて地理を絶滅に追いやるような悪しき風潮に、断固として立ち向かう・・・・ように位置づけている方もいらっしゃいます。

 非難するわけではないですが、どうもここのところ、地理教育界(特に、研究者の皆様)ではこうした「イデオロギー闘争」のような議論が続いておりまして、どうも違和感を感じています。日本史必修化を阻止したり、地理基礎、歴史基礎といった新科目を置いて限られた時間内での必修化を成し遂げられるかについては、そうとう雲行きが怪しいというのが正直な感想です。どっかの予備校の先生じゃないですが、

勝てるのか?無理でしょう。

という心境です。

 そもそも、「日本史必修」は阻止すべきことなのでしょうか?「世界史必修」は、終わらせるべきものなのでしょうか?「地理屋のロジック」に染まっていると、不毛な戦いに足を突っ込みかねません。

 つい2年ほど前まで、私自身、地理屋のロジックにどっぷりつかり、上記の議論に何の違和感も感じなかったのですが、総合学科の学校に転勤し、A科目を中心に「日・地・世・公全部やる」体制になってみると、随分考え方が変わってきました。このブログでもちょいちょい書いているように「全部取ることができる」環境は、現行の指導要領下でも十分に実現可能です(実際、現任校ではそれが実現しています)し、むしろそれを阻止しているのは文科省でもなく与党でもなく、現場の教員のロジック(我がまま)であることを十分認識するべきだと思います。

 ちょっとテクニカルな話になりますので、教員の方以外には見慣れない話になりますが・・・・。

 高校の地歴科(旧社会科)には、A科目(標準履修単位2単位=週2時間、年35週で70時間)と、B科目(標準履修単位4単位=週4時間 年35週で140時間)があります。A科目は実業校等で履修することが多いですが、内容がB科目の半分に薄められているというものではなく、日本史ならば幕末以後、地理ならば地誌中心というように、扱う内容を切り分けることで「高校レベルの地歴」教育を施すように工夫がされています。各学校は、それを基にカリキュラムを組み、基本的に世界史(AorB)を必修、日本史・地理を選択履修(どちらかひとつとはどこにも書いておらず、両方とっても可)となっています。更に、標準単位数とは違う時間数(例えば、B科目なのに週3時間=減単申請、A科目を週3時間=増単申請)を各教育委員会に行って許可を得ますが、基本的に「1/2以内、2倍以内」となっています。「以内」ですから、
2倍とか、2.5倍とか、基本的に許されないわけです。あと、その科目は「当該学年内に履修完了」が原則です。

  しかし、実際のところ、進学校のB科目を中心に、この原則は公然と破られています。例えば、2年生で「日本史B」を取った生徒は、2年次に4単位(あるいは5単位)履修し、当然のごとく3年生になっても4単位ないし5単位を履修します。世界史、地理もまた同様です。世界史必修で世界史Bを4単位履修し、
日本史を8単位履修したら、2年で12単位になります。もし、「4単位、1年履修」の原則に忠実になれば、世界史B、地理B、日本史Bすべて履修しても12単位です。

 「いやいや、それは理想論だよ。そんなんで受験に対応できるわけないじゃないか」とか、「あんたは地理の人間だからそういうこと言えるだろうけど、地理を教えられる人間はそんなにいないんだから」
といった現場の論理(悪く言うと、”わがまま”)と、それを黙認してきた教育委員会のチェックシステムにより、「日本史を採ったら地理は勉強できない」「最初から選択肢はない」(文系=日本史、理系=地理)のようなゆがんだカリキュラムが20年近く放置されているのです。

 ひところ、「未履修問題」が話題になりましたが、この「超過履修単位」問題は話題にこそなりませんが、学習指導要領違反といえば違反です。しかも、それだけ多くの時間数を確保しておきながら、「教科書が終わりません」なんて泣き言をいう人が出てくる始末。これでは「地歴教育の未来」もなにもありません。

私自身は、新科目の設置を云々言う前に、まずこのゆがんだ「常識」を何とかするべきだと思います。

標準4単位の履修を徹底する、時間が足りないのならば、「日本史演習」のような、学校設定科目を(標準単位の1/2を上限に設置し、他科目との選択を制限しない、すべての学校に日本史・世界史・地理を開講し、「すべて選択する」選択肢を保証する(免許は「地理歴史科」なので、基本的に「できない」という言い訳は成り立ちません)、免許更新等の機会を利用して、専門外科目のリカレント教育の機会を確保するといった手立てを講ずるべきです。少なくとも、私たちが高校生だった頃は「全部履修する」のが基本だったわけですから、何も新しいことをしようとしているわけではないのです。

 全員必修の「基礎」科目を作るという一つの方法論の下、実に丁寧な実証実験をされてきた関係者の方々には敬意を表したいと思います。その成果と課題は、じっくりと拝聴したいと思います。ただ、報道や各種資料を見る限り、「基礎科目」の設置が世論を巻き込んだ多数意見になるとは思えません。それを踏まえて、「次の一手(「日本史必修・世界史/地理選択履修」が最も有力と見ています)を考えていくべきではないかと思います。


学術会議が提案する「地理基礎・歴史基礎」は、長い時間の議論と、実証実験を経てどのような成果が上がったのか、課題は何なのか、広く普及する可能性はあるのか、前半の報告にじっくりと耳を傾けたいと思います。その上で、シンポの「自由討論」の場で、このような趣旨の発言をしようと思っています。

お時間が許せば、ぜひご参加ください。


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2014年05月31日

「自分で作るハザードマップ」展2014のいざない

  公開されているデジタル地理情報を組み合わせて、ハザードマップを作ろうという試みを、2011年の文化祭(静岡県立吉原高校)で行いました。富士市と福島県南相馬市の比較などを行い、大変反響をいただき、あちこち巡回展をしたり、とどめには「国土交通大臣賞」もいただきました。
  あれから3年、「ハザードマップ展」が帰ってきます。明日、6月1日、静岡県立裾野高校の文化祭、主催は今年から顧問を務める郷土研究部マップ班であります。
 やっと設営もおわりましたので、こんな感じということで写真をアップします。
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裾野市の町内会と避難所分布図
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安政東海地震の津波浸水域図(沼津市付近)

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富士山東南麓の表層地質区分図

  
 地図の見どころ、今後の予定(早速「ツアー」を予定中。あと、AR(拡張現実)技術と組み合わせてパワーアップさせていきます)。等々、展示が終わってからじっくりと説明したいと思います。
 気分は「やっと田植えが終わった農家」という感じです。あとは、どれだけの方に「青田買い」していただくか、ちゃんと「収穫」に持っていけるか、そしてそれを種に更なる“耕地”(活動範囲)を拡げるかでありますが、市長さんをはじめ、様々な方に見ていただけるようなので、部員一同張り切っております。
 お近くの皆様、ぜひ裾野高校に足をお運びください!。

【リンク】
2011年の模様など。(いとちり:2011年10月27日付)

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ふじのくにオープンデータカタログ
データは主にこちらからいただきました
「オープンデータを使った汎用性の高い防災教育教材の開発」、私の今年の科研費(奨励研究)の研究テーマです。

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posted by いとちり at 22:03| Comment(1) | TrackBack(0) | イベント・セミナー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年11月10日

プレゼンスライド(ダイジェスト版)G空間EXPO 2013

 11月14日に行われる、G空間EXPOのエデュケーションセミナーで行うプレゼンです。

 いつもは、終わった後にスライドを公開していますが、今回は、一部を公開します。
 「高校のGIS教育の事例を」とのことで、お話しするつもりですが、せっかくの「業界の見本市」ですから、少々耳痛いことも含めて、問題提起をしたいと思っています。

 スライドでも書いていますが、GISを含めた情報機器は、所詮は「炊飯器」「電子レンジ」に過ぎません。それで料理が抜群においしくなるわけでもなければ、それを使っていることを強調する必要はないと思います(うしろ、料理の世界ではその逆ですね。「解凍した鮮魚」であることを隠したり・・・・・)。

 普段は出来合いの「コンビニ弁当」ばかり与えておいて、たまーに「飯盒炊さん」
「調理実習」というスタイルをそろそろ何とかするべきだと思っています。“料理人が自分でご飯を炊く”(自分で素材を加工して教材化する)ことは当たり前のことなのですが、「電子レンジ」(ICT)を、「冷凍総菜のあたため」ぐらいにしか使いこなせていない実情を、自分自身を含めてなんとかしたいなと思っています。
 

  逆に、「電子レンジ」「冷凍食品」に逆らうあまりに、「地物」
「手で料理」することにこだわりすぎて袋小路に陥ってしまっているのが「防災教育」だと思っています。被災をした各地には、プロたちが全精力をかけて「瞬間冷凍」(=アーカイブ)した素材(データ)が眠っていますが、それらは地元を含めて十分に活用されているとは言い難い状況にあります。炊飯器、電子レンジ(GIS)と組み合わせることで、まさに「海鮮丼」ができるはずだ・・・・そういう「まくら」でまいりまして、実際に料理教室と参りたいと思います。

 木曜日の東京ですが、ぜひ足を運んでいただけると幸いです。
 お申し込みはこちらからです。

http://www.g-expo.jp/geoedu/lesson.html

posted by いとちり at 06:14| Comment(0) | TrackBack(0) | イベント・セミナー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年11月07日

マニュアルちょっと出し(2)G空間EXPO 講習会は11月14日

  第一弾が、結構アクセスをいただいているようなので、引き続きまして第二弾です。

 「防災教育」というと、身近な場所を例に
「もしも、地震が起きたら」的な発想で教材を作りがちです。身の回りの地理的特性を知るのは大切です。ただ、小中学校と違い、高校は「身近な地域」も分散していますし、ほとんど同じ方法論で「気を付けましょう」では、発展性がないと思うのです。

 一方で、大災害が起こるたびに、様々な機関が精力的に情報を集め、地理情報としてストックします。これらのデータは容易にアクセスできますが、「防災教育の教材」として活用するノウハウは十分に確立されていません。その時、何が起こったのか、どのように対応したのか、1年後、5年後、10年後どうなって行ったのか等、客観的に分析して、できれば現地に足を運ぶことは、発達段階に合わせた教育であり、社会に巣立つ生徒に対する市民としての教育になると思います。

 今回は、石巻市を取り上げますが、一昨年、講習会でお世話になった新潟県長岡市や、鹿児島市、神戸市などでも同じような教材が作れると思っています。
 
 

 ただ、いつものように「ほぼ無料」で、「簡単に使える」教材にするには、ちょっと手間暇がかかりました。
それはまるで冷凍倉庫に鎮座するマグロの塊を解凍して、刺身にするような作業でした。私は一介の「教材料理人」にすぎませんが、「生産者」の皆様、「市場関係者」の皆様も、わかっている技術ばかりかと思いますが、一度覗いてみてはいかがかと思います。せっかく、業界関係者が一堂に会するイベントですので。

お申し込みは、事務局のサイトからです。
http://www.g-expo.jp/geoedu/lesson.html

○日本地理学会が公開している「津波浸水区域図」を取り込み、ほかの地図との重ね合わせや、Google Earthへの書き出しをします。
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posted by いとちり at 05:43| Comment(0) | TrackBack(0) | イベント・セミナー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年11月06日

マニュアルちょっと出し G空間EXPO講習会は11月14日

 平日(しかも木曜日)なので、なかなか人が集まりにくいようです。
 
  当日お配りするマニュアルから、ちょいちょいと内容を紹介します。「へぇー、こんな地図も作れるのか?」と興味を持たれた方は、ぜひどうぞ。
 詳細とお申し込みはこちらから。
http://www.g-expo.jp/geoedu/lesson.html

(1)地形図に加えて、国土地理院の2500分の1基盤地図情報(石巻市)を扱います。
  ユーザーIDとパスワードが必要ですが、あらかじめこちらで用意します。
 「堅牢な建物」等をピックアップできます。

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(2)標高メッシュを重ねると、地盤沈下した場所がはっきりわかります。
こちらも、あらかじめダウンロードしてありますので、開くだけです。
塗り分けの値を変える作業に専念できます。
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posted by いとちり at 22:18| Comment(0) | TrackBack(0) | イベント・セミナー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする