東京・目白の日本女子大学に行ってきました。
日本地理教育学会の2月例会「国際ワークショップ ジオ・テクノロジーを活用した空間的思考」で報告しました。
スペシャルゲストに、アメリカ:ESRI社の教育マネージャーであるJoseph Karski博士をお迎えして、前々日の打ち合わせと当日と、じっくりと議論させてもらいました。Karski氏は、2015年10月以来の来日で、その際にもお会いしています。
9年ぶりの師匠との再会であり、師匠を含めてご来場の皆様に日本の地理教育におけるGIS活用(あるいは回避)の歴史を振り返った上で、なぜにこうまで普及してこなかったのか、一人一台の端末が普及した今も、なぜに日常的に使われないのかを考え、改善策として「毎回の授業の中で、何らかの形でGISに触れてみよう」と試みた1年間の報告です。
結論から言いますと、「教科書準拠で授業をすることとGISを日常的に使うことを両立させるのはかなり難しい」ということがわかりました。特に、地誌分野は苦しかったです。打ち合わせでも、当日の発表後も言われたのですが、「なぜ地誌を端折って扱わなかったのか?」といわれました。地誌の扱い自体、学習指導要領に書いていないのだから(でも教科書には全地域書かれている)、ジグソー法なり調べてまとめさせるなりした方が、よほどGISの活用らしいことができたのではないか?という指摘です。
そうしようかという誘惑に何度も駆られました。「地理総合」の教科書自体、旧課程の「地理A」の内容をかなり引き写していますし、すべての地域を取り上げていちいち解説を加える必要も、学習指導要領上まったく必要ありません。流行の「ジグソー法」なりで、いくつかの地域の地理的特徴をまとめさせて報告してもらえば「地誌の学習、終わり」になったかもしれません。ただ、それが高校の「必修科目」として担保する知識、思考力、表現力をつけるノウハウとして、汎用性、普遍性はあるのか?といえばどうも怪しい。かといって「系統地理や地誌を2単位で詰めこまなければならないのだから、GISなんかやっている暇はない。年度の初めに紹介すれば十分」という「現場の論理」を崩さなければ、GISの活用はもとより、必修地理の未来も暗い・・・色々と考えた中で、とにか今年は「守破離」の「守」に徹しよう、愚直なまでに「教科書準拠」で行こう、GISを使って「ベタベタの地誌」をやってみよう。GISを使えば、地誌の勉強も面白く、効率よくできるだろうと思ったわけです。
結果・・・覚えるべき地名や用語の提示や作業で時間ばかりとられるものの、定着度はイマイチ怪しい。地誌の分野の学習に時間が取られてしまい、「自然環境と防災」や「地域調査」に割ける時間がどんどんなくなっていきそうだ・・・散々でした。

では来年度以後はどうしたらよいのでしょうか。「宿題や小テストに回せるものは回す」という、当たり前といえば当たり前過ぎる結論に至りました。地名のドリルを作り、年間を通じて授業の冒頭などに組み込んで行ったらどうかと思いました。「地域調査」も、夏休み前などに一気に方法を教えて後は宿題にするのではなく、年間を通じて取り組みたいテーマを設定し、月に何回か調査や進捗状況の報告を行う時間を設けていけば、「地域調査にかける時間を取れなかった」ということはなくなると思います・・・このあたりは、日々アクティブラーニング的な授業を展開しつつも、単語ドリルや小テストを行い、面白いアプリがちまたにあふれている「英語」のノウハウが役に立ちそうです。
Karski博士曰く、アメリカではGISは地理教育だけのものではありません(高等学校で地理の学習自体が後退しているようでもありますが)。博士の最新刊は「数学教育とGIS」です。「実習のためのGIS」と「学習のためのGIS」の両方を作り込んでいく必要性を感じました。
本ワークショップのテーマは、「ジオ・テクノロジーを活用した空間的思考」ですが、新学習指導要領でも散々言われている「思考・判断力」はどうやったら身につくか、知識の定着および「的確な表現力」と合わせてで考えて行きたい課題だと言えます。
長くなりましたが、当日のスライドをアップします。
師匠と弟子 2015年と2024年です。
次は、師匠のホームタウン、デンバーでお会いしたいものです。