2019年11月18日

新刊発売記念 中身案内5 「クルーズ船」ブームと沖縄修学旅行

第1章「アジアを地図化する」の章末コラムから

 担当者として、腕によりをかけてアレンジしてきた「沖縄修学旅行」が、「予算オーバー」のため、無くなってしまった(現在は、台湾修学旅行。沖縄よりも、台湾に行った方が安いんです)ことに対する恨みじゃないですが、「そもそも、なぜ沖縄は高くなってしまったんだろう?」というところから書き起こしてみたコラムです。

 旅行者さんに聞いたところ、一番高くなってしまったのは、「貸切バス代」のようです。基本、沖縄の修学旅行では3泊4日、まるまる観光バスを借ります(京都や九州のように、「終日班行動」みたいなことがしにくい)が、中国や台湾などからいらっしゃるクルーズ船が増える中で、一回に50台とか100台とか、すごい数でオーダーが入り、価格が上がり、運転手さん不足も相まって、バスの調達そのものが厳しくなっているようです。そこで、「クルーズ船」がどのくらい増えているか、統計をもとに地図化してみました。
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図1 外国クルーズ船の年間入港回数(2013年)
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図2 外国クルーズ船の年間入港回数(2018年)

 2013年の日本の各港湾へのクルーズ船の寄港数は1001回(うち外国船は303回)でしたが、2018年には2928回(うち外国船は1913回)でした。年間100回以上の寄港があった港は、2013年には横浜港と神戸港の2港でしたが、2018年には10港に増えました。
 2018年の寄港数の上位を挙げますと、1位:博多港(279回)、2位:那覇港(243回)、3位:長崎港(220回)、4位:横浜港(168回)、5位:神戸港:135回と、九州勢が横浜・神戸を抜いています。ちなみに、年間100回以上の寄港があった10港のうち、6港までが九州・沖縄の港です(宮古島の平良港:143回、佐世保港:108回、石垣島の石垣港:107回、鹿児島港:100回)。

 飛行機と違って手荷物制限がない客船では、「爆買い」が容易です。また、旅行を主催する側も、あらかじめ「爆買い」を見越して訪問先の土産物店などから協賛金を得て、旅行代金を安く設定して、宿泊代から飲食費までパッケージで提供するため、割安感を出しやすいのも特徴です。一度に2000人〜4000人の人が上陸しますので、貸切バスが根こそぎ動員されてしまう構図です。

 「バスがないから修学旅行先を変更する」、「修学旅行よりも手っ取り早く稼げるから、外国人のツアーを優先する」という姿勢では、長期的に見るとあまり良いことではありません。「爆買い」もあくまで一過性のブームに過ぎません。目の前の外国人客のオーダーよりも修学旅行を優先しなさいとは言いませんが、こうした環境の変化を前向きにとらえて、「観光バスによる定番ルートの周遊」に捉われない、新しいタイプの修学旅行(街歩きや体験など)を作ることで、沖縄や九州の教育旅行がより活性化して行くのではないかと思います。
 そんな期待を込めて、昔沖縄でやらせてもらった地図アプリを使った街歩き研修の論文へのリンクを貼ります。

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posted by いとちり at 05:00| Comment(0) | 地図化すると | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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