2019年11月17日

新刊発売記念 中身紹介4 チャイナパワーin アフリカ

 中国のアフリカにおける影響力を地図で表わした項です。
 詳しい背景は本編に譲るとして、地図をダイジェストでご覧いただきます。
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図1 中国からアフリカ諸国への銀行融資残高と融資目的

 ひときわ融資残高の円が大きいのが「アンゴラ」です。
 2000年から2015年までの融資総額は192億2426ドル(日本円で約2兆円)で、中国からアフリカ向け融資の約20%を占めます。2004年頃から中国が国策的に融資を伸ばして石油資源開発を進め、2007年にOPEC加盟を果たしています。現在、アンゴラの輸出先の43.2%が中国向けです。

 国際的な債務残高に苦しんでいる国に「有利な利率での借り換え」を持ちかける形で、中国はアフリカ諸国に接近し、その上で資源開発などの大型プロジェクトを仕掛けてきました。担保は豊富な「地下資源」です。
 図2は、中国企業の地下資源開発の国別投資額(2006年〜2015年の合計値)です。赤丸が石油、緑の四角が石炭、橙三角が銅です。石油はアンゴラ、ナイジェリアなど既存の産油国の他に、チャド、カメルーン、ウガンダなどの内陸部の油田への投資が、石炭はエジプト、モロッコ、マラウイ。ケニアなどに、銅はザンビアやコンゴ民主共和国などに投資されています。
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図2 地下資源への国別投資額(2006〜2015年の合計)

 よく、中国資本の鉱産資源の開発では、探査や採掘にあたる人員を中国側が用意して、地元の人達を雇うことをしないと言われます。多くの人手を要する産業ですからさすがにすべての作業を中国人が行うことは考えられませんが、重点的に投資が行われる国では、一時的に中国の技術者が集まり、また引き上げていく様子が統計地図から見ることが出来ます。
 図3・4は、アフリカ諸国における滞在中国人の人口を2009年と2015年で比較したものです。
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図3 アフリカ諸国における滞在中国人人口(2009年)
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図4 アフリカ諸国における滞在中国人人口(2015年)

 アンゴラは、最盛期は約20万人の中国人が滞在していましたが、2015年には4万4106人にまで減っています。最も中国人が多いのはアルジェリア(9万1000人)で、アンゴラは2位になりました。政情不安の影響からか、2009年に赤(2万4155人)いたリビアは、2015年には135人にまで減りましたが、この間の増減を比較する限りは、急激に中国人が減った国は見られません(むしろ増加している国が多いです)。

 アフリカ諸国は、中国製品の市場としても有望です。特に、鉱山開発用の大型機械や、灌漑や土木工事を行うための重機など、中国製の機械類の輸出が伸びています。基本的に代金は信用払い(支払の期限を長くとる、あるいは無期限の゛出世払い”)で、貿易というよりも援助のような形で関係強化を意図しているようです。中国製の機械を一度導入してもらえば、修理や部品交換など、メンテナンスの部分でも関わりが持てますし、採掘された資源を優先的に輸出してもらうことも期待できます。

 図5・6は中国からアフリカ諸国むけの輸出額を示した図です。
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図5 中国からアフリカ諸国への輸出金額(2000年)
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図6 中国からアフリカ諸国への輸出金額(2015年)

 アフリカ諸国への進出に「国策」的に関わる中国の現状は、非常に「地図映え」します。賛否両論はあるとは思いますが、「なぜ中国はアフリカと深い関係を築こうとしているのか?」「中国の人・カネ・モノを大量に送り込む中国に依存するアフリカ諸国のリスクは何か?」(特に植民地時代と比較して)、「長年援助などを通じてアフリカと関わってきた他の国々はどう対抗して行けばいいのか?」(電源開発や、農業技術で関わりを持つ日本の事例を本書では取り上げています)等、授業での「問い」に出来るのではないかと思います。詳しくは、本篇をご覧ください。

地図化すると世界の動きが見えてくる
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posted by いとちり at 08:37| Comment(0) | 地図化すると | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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