第3章 「アフリカを地図化する」では、電気や道路などの社会インフラに関して扱う項があります。
まずご覧いただくのがアフリカ諸国の電化率(電気を使える人が総人口に占める割合)です。
80%を超えているのは、産油国でもある北アフリカ諸国と南アフリカ共和国のみ。アフリカ中央部では10%にも満たない国が多いです。
しかし一方で、携帯電話の普及率は目覚ましいものがあります。
2000年と2015年を比較してみます。上が2000年、下が2015年。電力とは違い、真っかっか(80%以上)です。
電気が来ていなくても、太陽光発電で充電を行い、基地局を設置するアフリカ諸国。ケニアの人口カバー率は80.7%にのぼります。実際は、1人1台の形の個人所有だけでなく、「キオスク」と呼ばれるレンタル携帯電話のスタンドがケニア国内で約7万か所、アフリカ全体で28万7400ヶ所(2016年)あります。アフリカの携帯電話の料金は、基本プリペイド方式で、借りた携帯電話にSIMカードを差して使います。
携帯電話が急速に普及した背景には、「M-pesa」と呼ばれる携帯電話同士の現金決済サービスがあります。
現在、アフリカを中心に10か国で使えるサービスで、アフリカの他にインドや東欧でも使えます。
以下、M-pesa導入国と導入年のマップです。彼らは携帯電話をお財布代わり、時には決済や送金に用いる銀行口座代わりに利用しています。
「携帯電話を使うマサイ族」の動画が、NHKの高校講座「地理」でありました。ここでは、通話の様子だけで、現金決済に関しての説明はされていません(Chapter2:「変わる暮らし・ケニアのマサイ族」参照)。
「携帯電話による送金と受け取り」が、どんな場面で重宝されているのかについては、ケニアを拠点にサービスを展開する”Safari com"(英:Vodafoneの子会社)のこのCMが端的に表しています。ATMはおろか、銀行自体にアクセスすることが難しい人達が、安全にお金を蓄え、送金することがいかに大変かを考えると、M-Pesa(ショートメールを使った送金サービス)が爆発的に普及した理由が分かります。
ケニアにおける携帯電話の人口普及率はたかいですが、基地局の分布とカバーエリアはまだ限定的です。また、本格的なスマホ化が進む中、回線も3Gが多く、容量オーバーの心配もあります。Safari com社の資料から、ケニアにおける携帯カバーエリアを描いた地図がこちらです。
「電気は来ないが携帯電話は利用するのはなぜか?」
「なぜ、ケニアの携帯電話会社は電気も来ないような村落部でビジネスを展開できるのか?」
最近話題の「探究的な学び」のネタとしていかがかと思います。
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