2019年03月22日

アナログGISによる必修「地理総合」向けGIS教材の作成について(日本地理学会)

 専修大学(生田キャンパス)に行ってきました。

 日本地理学会の「地図・GIS」セッション、今年は初めて座長もやらせてもらいました。
 つたない司会でしたが、普段の聴衆席とは全く違った緊張感で、とにかくメモを取って質問・コメントを考えることだけに集中した時間でした。ありがとうございました。

 今回のキーワードは「アナログGIS」です。スライド中にもあるように、2007年の日本地図学会の発表で、私が使い出した造語のようなものですが(伊藤:2007→こちら)、当時「紙地図の実習はGISに取って代わる」「アナログか?デジタルか?教師はどちらを選ぶのか?」みたいな論争にうんざりして、いささかの皮肉を込めて発表したところ、「いや、そもそもそんな概念は成り立たない!」ということで集中砲火を頂いたことを記憶しています。

 今回も、「GISというのはそもそもアナログな地理情報(紙地図や調査の結果など)をデジタルデータにした上で加工したり分析したりするものなのだから、『アナログGIS』という概念はやはり変だ」とのご指摘を受けました。確かにそうだと思います。と、言いながら確信犯的にこの用語を使って来たのですが、最近、引用を頂いたり、実践例が出てきたりするようになり、少し解釈も多様化して来たので、改めて考えてみようと今回の報告に至りました。

 「アナログGIS」に関する最近の事例報告として、田部(2017)があります。横浜市の中学校の先生と共同開発された「OHP フィルムを活用した GIS(地理情報システム)入門地図教材」に対してこの語を使っていただいています。確かに、こう呼んだ方が誤解が少ないと思いますが、あえて「アナログGIS」の語を当てていらっしゃることを見ると、伝わりやすさを優先されたのかな?と思う所もあります。また、少し古い記事ですが、拙記事(いとちり:2010年1月16日)では、古今書院の「地理学演習帳」について紹介しています。これなどは、GISを含めた地理学で使う地域の分析手法を紙と鉛筆で再現できる画期的な演習帳面であり、やはり「アナログによるGISの入門教材」と言えると思います。スライドにもあるように、高校地理でのGIS利用における「ステップ0」の教材は、もっと充実するべきだと思います。

  新必修科目「地理総合」には、プロパーはいません。地理教育のベテランも、初めて地理を教える若手も、横一線だと思っています。これまでの「高校地理とはこういうものだ」という固定観念が逆に足かせになる可能性すらあるでしょう。あと2年少々、教師個々人はもとより、業界全体としてどう準備を進めていくか、引き続き考えをまとめて発信して行けたらと思います。









posted by いとちり at 06:05| Comment(0) | 学会発表 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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