連載の2回目です。
前回は、これから料理するハザードマップの下ごしらえ、PDFファイルとして提供されているものを、加工しやすい画像ファイル(pngファイル)に加工する方法を紹介しました。
今回は、キッチン(ご自身のPC)に、ガス台を設置するような作業です。このガス台は、安くて(ほぼ無料)大変性能がいいのですが、備え付けてすぐに火はつきません。このQGISというソフトは、大きな大きなガスタンク(地図データのサーバー)につなぐことで本領を発揮するソフトなのですが、接続の設定や火加減の調節が、より簡単なカセットコンロ的なソフト(MANDARAなど)に比べると多少敷居が高いので、われわれの業界(地理の先生)でも、使うのに躊躇されがちのように思います。
ただ、一度ガスタンクに接続して、その強力な火力を体験すると、色々な地図を料理してみたくなります。ただ、一度接続して火がつくのが当たり前になってくると、「あれ?接続ってどうするんだっけ?」と忘れがちでもあります(実際、私自身コロッと忘れており、先達の書かれたブログや本を見て思い出してこれを書いた次第です)。
(0)GISソフト「QGIS」をインストールする。
「QGIS」は、世界中で使われ、有志によって絶えずバージョンアップが行われているオープンソースのGISソフトです。
「プラグイン」という付属機能を足していく事によって、用途に応じて使いやすくチューンして行くことが出来ます(逆に、滅多に使わないような機能は最初から入れなくてもよい)。
日本語版サイトから、現在公開されている最新版(ver.3.2.1:開発コードBonn)を使って手順を説明します。
(↓ダウンロードはこちらから)・・・結構大きなソフトですので、インストールの際は気長に待ってください。
パソコンのスペックに合わせて、古いバージョンを入れることも可能です。
私が今使っているPCは、Windows7で、普段はQGISのVer.2.14:開発コードEssen)を使っていますが、手順は基本的に同じです。3.2は、たまにフリーズしますが、頻度は2.14とあまり変わりません。
(1)国土地理院と接続し、ベースマップに「地理院地図」を常駐させる
QGIS自体は色々な機能を持った便利なソフトですが、今回はハザードマップの加工の機能の紹介に絞ります。前置きにある、「都市ガスへの接続」をしましょう。日本最強の都市ガス(=地図データ供給機関)、国土地理院とつなぎます。
1-1 まず、QGISを開いたら、「ビュー」→「パネル」→「ブラウザ」の順で開き、地図を読み込ませる作業ウインドウを作ります。
1−2 画面左上 「ブラウザ」ウインドウ内の「XYZ Tiles」のアイコンを右クリックします。
「New Conection」を選びます。
1−3 「接続の詳細」というウインドウが出ますので、接続先を国土地理院にします。
Webブラウザを立ち上げて、以下のアドレスにアクセスしてください。
(以下のリンクをクリックすると別ウインドウが開きます)
〇地理院タイル一覧
1-4 ベースマップ欄にある「標準地図」のリンクを開きます。
1-5 開いた先のページの中ほど、「詳細情報」の欄にある「標準地図」の下にあるURLの文字を選択してコピーします。
1-6 QGISに戻って、先ほどのURL欄に貼り付けます。接続名称は「地理院地図」としておきます。
1-7 OKをクリックすると、先ほどの「ブラウザ」内に「地理院地図」という項目が追加されます。
「地理院地図」上を右クリックして、「選択されたレイヤをキャンパスに追加」を選びます。
1-8 真っ白な画面だったQGISに、地理院地図が登場します。表示したい場所を選び、どんどん拡大して行きましょう。
(2)応用 地図以外の資料も読み込んでみましょう。
サンプルに、「標準地図」を読み込んでみました。他の地図を読み込んで、ご自身の地図庫を充実させましょう。
1-2まで戻り、XYZ tilesを右クリックするところから同じ手順です。
今度は、国土地理院の公開している空中写真を読み込みます。地理院タイルのサイトの下の方、「空中写真」の項目を開き、URLをコピーします。
今度は、タイトルを「空中写真(最新版)」、URLを該当の場所にします。
1-7 と同じ手順でキャンパスに追加すると空中写真が表示されます。
このとき、画面の左下「レイヤー」を見ると、QGISでは2つのデータ(地理院地図と空中写真)を同時に読み込んでいることを示しています。両方を表示(空中写真の上に、うっすらと透かした地形図)を表示してみましょう。
まず、「レイヤー」ウインドウ内の地図と空中写真の表示の順番を逆にします。空中写真の上に地形図が載っている形にしましょう。空中写真のアイコンを左クリックしたまま地理院地図のアイコンの下に動かします。
「地理院地図」アイコンを右クリックし、一番下の「Properties」(プロパティ:詳細設定)を開きます。
「透過性」を選び、重ねている地形図の透過性を調節してみましょう。
重ね合わせが出来ました。
(3)さらに
国土地理院では、地形図、空中写真(昔にさかのぼることが出来ます)を始め、大規模災害の際の緊急測量成果、地質や活断層図などをタイル形式で提供しています。一般の地図画像と違い、サーバー上で画像が連続して送られてきますので、継ぎ目なく見ることが出来ますし、様々な地図同士を重ねてみることが可能です。新旧の空中写真を比べて、浸水した場所の特定や、避難所の配置などの地図を描く作業ができます。
「地理院タイル」のタイルマップ一覧内(https://maps.gsi.go.jp/development/ichiran.html)
2.基本測量成果以外で出典の記載のみで利用可能なもの
→地震、台風・豪雨等、火山 ▼
で公開されています。大規模災害時に、専門家による被害状況把握や、民間レベルで被災者向けに情報を地図化して届ける「マップボランティア」が組織される際のベースとなるインフラの一つです。また、過去に起きた大規模災害を詳細に振り返る上での基本的な情報源になります。
災害前の衛星写真(広島県呉市 JR呉線 安浦駅付近)
国土地理院による緊急空中写真撮影(2018年7月15日)
<参考>XYZレイヤURL
地形図(地理院地図)