すでにあちこちで話題になっていますが、2022年度高校入学生(現:小学校5年生)から実施される新しい高等学校学習指導要領の案が公開されました。3月15日まで、「パブリック・コメント」を募集しています。
仕事が仕事なので、とにもかくにもこの通りにやっていくわけで、個人的にはやっと地理が必修に戻ったという事でやる気に満ちてはいます。特に新必修科目「地理総合」は、ここまで思い切って変えましたか!というくらい、シンプルかつ中身の濃いものになっていますので、今までになかった面白い実践がどんどん生まれてくるように思います。
ただ、中身がいくら充実しているからと言っても、実際にそれを動かすのは現場の教員です。現場の教員が新しい指導要領の趣旨を理解していなかったり、非難(避難?)を決め込んで骨抜きにされてしまっては元も子もありません。いくつか懸念される事がありますので、パブリック・コメントに書かせてもらいました。以下、備忘録を兼ねて転載します。
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静岡県の高等学校(県立裾野高等学校)で地理歴史・公民を担当している教員です。
新必修科目、「地理総合」「歴史総合」の目的および教育方法の周知徹底のために、二点、コメントを述べさせていただきます。
(1)移行措置期間における先行実施の推進
「移行措置」期間において、教育課程上実施しやすい学校(例えば、2単位の「地理A」、「世界史A」「日本史A」を置いている実業校、総合学科校等で、これらの科目に代えて「地理総合」「歴史総合」の設置と履修を認める措置をとっていただきたいと思います。
長らく「地理A」および「地理B」は必修科目から外れ、特に進学校で文系に所属していた教員は、高校で地理を履修していない人が多くいます。2022年度から一斉に必修化されると、開講単位数が一気に増える一方で、地理の履修経験、指導経験に乏しい教員が、アクティブ・ラーニングを軸に置いた全く新しい地理教育に携わることになります。既に日本学術会議(地理教育分科会)や地理関係の学会では、この問題について議論が行われていますが、先行実施校を置いた上で、地理を専門とする教員が教材開発やカリキュラムデザインを進めて行くことが必要かと思われます。
(2)「抜け道」を避けるための対策と指導徹底
今回の改定案を受けて、新たな取り組みに燃える現場の教員も多くいる一方で、今までの指導とは全く異なる内容に当惑している教員も少なくありません。ただ、「地理総合」&「地理探究」、「歴史総合」&「日本史・世界史探究」が合わせて6単位であることから、特に進学校に置いて、従来の「B科目」と同じように、連続履修の形を取ればよいという議論も多々見受けられます。すなわち、地理ならば高校2年次に「地理総合」(中身は従来型の系統地理の講義)、高校3年次に「地理探究」(中身は地誌と問題演習)の形に、「歴史総合」を゛世界史コース”と”日本史コース”に最初から分けて、2年次に近代史、3年次に古代・中世の講義を行うというものです。これでは、新指導要領の趣旨とは全くかけ離れた旧来型の知識伝達教育が繰り返されます。また、場合によっては「地理総合」の時間ですら、「歴史を踏まえた地域の探求」と称して、歴史学習の時間に充てるべきだという意見も、歴史教育関係の公的な研究会で出されていたという話を耳にしています。
「未履修問題」という苦い経験を経ているにも拘らず、「現場の論理」「受験に対応した」「子供たちのために」という論理で、折角の新指導要領が骨抜きになってしまいかねないことを懸念しています。また、そうした教育慣行を教育委員会も黙認している風潮も改まらない状況が続いています。
今後、各教育委員会経由で現場への周知のための研修等が行われて行きますが、丁寧な趣旨の伝達と、「抜け道」を作らせないための指導徹底をお願いしたい所存です。
新必修科目、「地理総合」「歴史総合」の目的および教育方法の周知徹底のために、二点、コメントを述べさせていただきます。
(1)移行措置期間における先行実施の推進
「移行措置」期間において、教育課程上実施しやすい学校(例えば、2単位の「地理A」、「世界史A」「日本史A」を置いている実業校、総合学科校等で、これらの科目に代えて「地理総合」「歴史総合」の設置と履修を認める措置をとっていただきたいと思います。
長らく「地理A」および「地理B」は必修科目から外れ、特に進学校で文系に所属していた教員は、高校で地理を履修していない人が多くいます。2022年度から一斉に必修化されると、開講単位数が一気に増える一方で、地理の履修経験、指導経験に乏しい教員が、アクティブ・ラーニングを軸に置いた全く新しい地理教育に携わることになります。既に日本学術会議(地理教育分科会)や地理関係の学会では、この問題について議論が行われていますが、先行実施校を置いた上で、地理を専門とする教員が教材開発やカリキュラムデザインを進めて行くことが必要かと思われます。
(2)「抜け道」を避けるための対策と指導徹底
今回の改定案を受けて、新たな取り組みに燃える現場の教員も多くいる一方で、今までの指導とは全く異なる内容に当惑している教員も少なくありません。ただ、「地理総合」&「地理探究」、「歴史総合」&「日本史・世界史探究」が合わせて6単位であることから、特に進学校に置いて、従来の「B科目」と同じように、連続履修の形を取ればよいという議論も多々見受けられます。すなわち、地理ならば高校2年次に「地理総合」(中身は従来型の系統地理の講義)、高校3年次に「地理探究」(中身は地誌と問題演習)の形に、「歴史総合」を゛世界史コース”と”日本史コース”に最初から分けて、2年次に近代史、3年次に古代・中世の講義を行うというものです。これでは、新指導要領の趣旨とは全くかけ離れた旧来型の知識伝達教育が繰り返されます。また、場合によっては「地理総合」の時間ですら、「歴史を踏まえた地域の探求」と称して、歴史学習の時間に充てるべきだという意見も、歴史教育関係の公的な研究会で出されていたという話を耳にしています。
「未履修問題」という苦い経験を経ているにも拘らず、「現場の論理」「受験に対応した」「子供たちのために」という論理で、折角の新指導要領が骨抜きになってしまいかねないことを懸念しています。また、そうした教育慣行を教育委員会も黙認している風潮も改まらない状況が続いています。
今後、各教育委員会経由で現場への周知のための研修等が行われて行きますが、丁寧な趣旨の伝達と、「抜け道」を作らせないための指導徹底をお願いしたい所存です。
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