ちょっと気になるニュースを紹介してもらいましたので、備忘録を兼ねて書きます。
以下、引用
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選択科目の教師を独自採用(NHK島根)2018.2.2
島根県は中山間地域や離島の一部の公立高校で、教員不足のため現在は行われていない地理や美術といった選択科目について、県独自の予算で教員を増やして授業を行う方針を固めました。
県立高校の教職員の定数は国の法律で生徒数に基づいて定められているため、島根県の中山間地域や離島では生徒数が減るに伴って教員を十分に確保できず、選択科目のうち地理や美術の授業が行われていない高校があります。
一方で、中山間地域や離島の公立高校では「しまね留学」として県外からの入学者を受け入れているところもあり、島根県はこうした高校の教育の充実を図るため、県単独の予算で教員を増やす方針を固めました。
具体的には「地理」と「美術」の科目を教える教員、あわせて6人を採用する方針です。
一方、島根県は、県立高校の教員の負担軽減に向けて事務作業を行う非常勤職員を新たに配置するほか、生徒の判断力などを養うアクティブラーニング型の授業に必要なICT環境の整備などもあわせて行う方針です。島根県はこれらにかかる人件費など、あわせて1億2000万円あまりを新年度予算案に盛り込み、2月19日に開会する2月県議会に提出する予定です。
県立高校の教職員の定数は国の法律で生徒数に基づいて定められているため、島根県の中山間地域や離島では生徒数が減るに伴って教員を十分に確保できず、選択科目のうち地理や美術の授業が行われていない高校があります。
一方で、中山間地域や離島の公立高校では「しまね留学」として県外からの入学者を受け入れているところもあり、島根県はこうした高校の教育の充実を図るため、県単独の予算で教員を増やす方針を固めました。
具体的には「地理」と「美術」の科目を教える教員、あわせて6人を採用する方針です。
一方、島根県は、県立高校の教員の負担軽減に向けて事務作業を行う非常勤職員を新たに配置するほか、生徒の判断力などを養うアクティブラーニング型の授業に必要なICT環境の整備などもあわせて行う方針です。島根県はこれらにかかる人件費など、あわせて1億2000万円あまりを新年度予算案に盛り込み、2月19日に開会する2月県議会に提出する予定です。
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隠岐島(→記事)の特色ある実践や、中山間地域の振興、過疎地の倉庫を活用したネット古書店「エコカレッジ」(→紹介記事)など、何かと「おー、そう来るかー」という取り組みが行われている島根県の教育シーンですが、今度はこう来たようです。
過疎地の悩みの一つとして、教員が少なく、一人の教員が多くの科目を担当すること。中学校では「免許外担当」が当たり前ですし、高校では「専門外の科目は最初から開講しない」なんてことが当たり前です(過疎地に限ったことではないかもしれませんが)。また、教員の構成も管理職以外はみんな20代、30代のような事もありますし、偏差値レベルも決して高くありません。大学以上に進学したい子は都市部の高校に遠距離通学、あるいは高校から下宿して通い、地元に残る生徒はそれがかなわない子という図式も定着しています。少子化が進む中で、高校の存続自体が危うくなっており、他県を含めた広域で越境入学を促しているところが多いのが実情です。
そのような中で、あえて「地理」と「美術」と具体的な教科、科目を打ち出して独自の採用枠を設けた島根県の政策は注目したいところです。マイナー科目で過疎地では特に非常勤講師の確保が難しいこと、2022年から高校で「地理総合」が必修化されることを意識して
地理を教えられる教員を確保しておきたいことなど、背景は色々と察することが出来ます。
ただ、「君は過疎地枠で採用されたんだから、基本的に過疎地を回ってもらうよ」という人事が果たして成り立つのか、あるいは公立高校ながら「新規採用から退職まで、ずーっとこの学校ね」なんてことが成り立つのか(それでよいのか?)、その枠を目がけてちゃんと人が集まるのか等、ちょっと疑問を感じるところがあります。もともとその土地の生まれで、そこに住みたいという人ならともあれ、教員のライフステージの変化の中で、事情も変わってくる可能性があります。また、限られた予算の枠の中で正教員を増やすといってもせいぜい2,3人が限界だと思いますし、県の税収自体が減っていく中で、「過疎地枠採用」がどこまで続くかは見えません。
一案として、「過疎地枠」の採用枠を有期雇用(常勤講師)として、3年間限定の採用とするのはどうかと思います。「地域おこし協力隊」を参考に、過疎地への教員としての赴任を前提に、給与と住居を保証するものです。慶應義塾大学(SFC)が始める地域おこし研究員(地域おこし協力隊の活動をしながら大学院の政策・メディア研究科の大学院生として修士号の取得を目指す)のように、教職大学院と組んで修士号の取得を目指すコースを作ってもいいのではないかと思います。
地理教員の学びは、何と言っても地域にあります。フィールドに出て、人と関わりながら理論と実際をつなぎ、教材を作っていくことで、教師としての幅が広がります。ただ、残念なことに、若いうちはフィールド云々いう前に、雑務が多すぎてとてもそんなことは出来ないのが実情です。
田舎の小さな学校が楽かというと決してそんなことはありませんし、むしろ少ない人員で一人で何役もこなしたり、若くしてチームリーダー(学年主任や課長)をしなければなりません。そうした先生がいる一方で、゛3年限定のインターン”として、特定のミッションを持った若い先生が入れ替わり立ち代わり来るような環境があってもいいように思います。ちょうどALT(英語の授業を補佐するネイティブ外国人。原則2年交代)みたいなものです。
早稲田大学の学生さんが、1年間休学して島根県津和野町に「地域おこし協力隊」として
派遣され、町営英語塾や地元の高校の活性化に取り組んだケースが紹介されています。
(→記事)彼は1年間のミッションでしたが、色々なところにニーズはあると思います。
大学を出て、教職に就きたい学生の受け皿として(卒業した大学のある街や地元で1年更新の非正規雇用を続けながら正採用を目指すよりは、はるかにいい条件だと思います)、若手教員のスキルアップの場として(休職あるいは出向という形で)、定年退職者の再任用手段の一つとして、「期間限定であえて過疎地に飛び込む」という選択肢を用意することで、全国から優秀な人材を集められるのではないかと思います。
教職大学院と連携して修士号をというアイデアを書きましたが、教員免許の臨時免許は最大3年間有効ですので、教員免許を持たない社会人に臨時免許を発行し、通信制大学院に通って正規免許を取ってもらうという方法もあると思います。そうすれば、企業を退職して一念発起で教員になりたい」という人に生活の場と実践の場を提供する機会になると思います。
過疎地の高校では、寮を併設するなどして県外からの越境入学者を積極的に集めています。少人数教育、自然に囲まれた環境、人間関係のリセット等、動機は様々かと思いますが、教員もまた越境募集の仕組みを整えることで多彩な人材が集まる、魅力的な学校になるのではないかと思います。制度だけでなく、最新鋭のICT環境や予算の決裁権(特に外に出る交通費)を与えて、成果を外へ発信するための支援も必要でしょう。
予算には限りがあります。単純に「枠を作って人を増やして送ったからOK」という訳にも行かないと思います。どう活用するか、効果をどう検証するか、島根県の取り組みは、全国の過疎地の高校教育を活性化させる上でのヒントになるように思います。議会での議論、
来年度の取り組みに注目して行きたいところです。