おお、面白そうな本だ。社会人向けの地理の本を志向しているな。どれ、お手並み拝見と行こうか・・・と思っていたら、著者ご本人から献本を頂きました。このブログを読んでいただき、更に拙著も買っていただいているとのことで、光栄の極みであります。
さて、書評というほどではありませんが、感想をいくつか。
読後の印象・・・「あ、いろんな意味で自分の本と対極にある本だなあ」と。
どの辺が対極かと言いますと・・・。
@この本は白黒刷り、自分のはカラー
白黒で分かりやすい模式図や地図を載せるのは、思いのほか苦労が絶えないのは普段テストやプリント作りで嫌というほど味わっています。逆に、カラーが使えるとあれも載せたいこれも書いておきたいと、みっちりとなってしまいがち。シンプルで分かりやすい解説図が多いです。
Aこの本は縦書き、自分のは横書き
対象読者を幅広くとった、「ビジネス書です」って感じがします。自分のは理科っぽいというか、「地図化実験の報告」というか・・・実際理系方面の方にウケがいいようです。
Bこの本は、読ませる本。自分のは見せる本
さすが、予備校の先生だけあって、文章の語りもうまいです。語りを読みながら、挿絵的に案連する図が登場します。自分の方は、制作段階でまず地図を描き、にらめっこしながら描写の文章を書いたものが多いです。タイトルの通り、まずは地図を見てねというスタイルです。
歌を作るとき、歌詞から書くか、曲から書くかの違いみたいなもんでしょうか。
C予備校の先生の本、高校教師の本
東大講座も担当されるカリスマ講師の宮路先生。センター試験での出題例や、統計の分析など、「王道の地理B」観が漂う、安定した語り口で「業界の人」なら「ほう」と読める内容です。例えば、アイスランドの地形的な背景と発電との関係を語る最初の箇所はなかなか唸るものがありました。
かたや田舎の実業校の地理教師。ベースは「地理A」で、結構変化球を投げています。「地理Aの王道」である地誌的な内容にいまいち踏み込んでませんので、今続編をせっせと書いています。
あまり「書評」になってませんが、高校の時に地理を学んだ方、現役で地理を教えている方、教えざるを得なくなってしまった方には強くお勧めできます。高校地理の予備知識がほとんどない方には、もうワンクッション必要かもしれません(章の扉絵の「この章で取り上げる国」の地図はいいアイデアだなと思いました)。「経済」を前面に出すのならば、後半の「生活」の章、
もう少し統計的な裏付けをつけてもいいのではないかな?(特定の食品の一人あたりの消費量の国別比較など)と思いました。「イギリスの料理がなぜまずい(シンプル)なのか?」の裏付けに、自分ならばどんなデータを使うかな・・・と思ったりしました。
「高校地理の必修」がなくなってから約25年。「失われた25年」と見るか、巨大なマーケット(高校地理未履修な社会人が数百万人、そのうちの何割かが仕事に地理的な教養を必要としている)があると見るかで捉え方は変わってきます。世界史ビジネス本のブーム、ブラタモリをはじめとした「地図歩き」のニーズ、環境は整ってきていますので、「地理のビジネス書」というジャンル、火がつけば一気に広がるのではないかと見ています。
「同じテーマ、地域を別々の切り口で書き、描く・・・一緒に仕事が出来たらよいですね」とお声かけさせていただきました。立場は違いますが、地理を教室の内外に広めようという者同士、これからも切磋琢磨していけたらと思っています。
改めて拙著も宣伝・・・続編(地誌編)、頑張って書いて(描いて)ます。
経済は地理から学べ!を探していたらこちらのサイトにたどり着きました。この本のコメントを拝読し、参考になりました。実はまだ図書館での順番待ちのため未読です。その間、高校地理の予備知識のない者のワンクッションの知識をつけたいのですが、具体的にはどのようなワンクッションを勉強すればいいのでしょうか。
ちなみに、ブラタモリなどをきっかけとした地理への興味がブームになるとの予感。私もそう思います。
ワンクッションですか。うーん、難しいですね。
「中学校の地理が・・・」と言いたいところですが、高校地理とはずいぶん違いますし。
なければ、作るしかないですね。「地誌」を入り口に、統計とか地図とかを絡めたような本やWebでしょうか。今ちょうどそんな感じの本を書いていますので、出たらまた参考にしていただければと思います。
ご返信ありがとうございます。
「地誌」ですか。初めて聞くのでネットで少し調べましたがあまり情報を見つけられませんでした。
是非先生のお書きになられた本、待ち遠しい思いです。それまで、しばらくネットなどで調べてみます。