「人口の地理」のジャンルのまとめとして、「未来の日本の人口予測」をしてみようとのことで、GISで描いた市町村の地図を見る授業をしてみました。
総務省の「RESAS」(地域経済分析システム)の中に、「人口の将来推計」というコーナーがあり、そこでデータをもらってきて、身近な地域(静岡県+関東エリア)の人口の将来予測の地図を「MANDARA」で作りました。
年少人口の増減(2010年=100)
老年人口の増減(2010年=100)
生産年齢人口の推移(2010年=100)
日本の人口は減少に転じている。「高齢化」が進み、地方はお年寄りばかりになる・・・・ここまではいいのですが、やがてお年寄りの人口すらも減り、彼ら彼女らの購買力に支えられてきた地域経済や、高齢者関連の福祉産業も頭打ちとなり、雇用(特に女性の雇用)もなくなり、女性が地域から離れる。子供を産み育てる人がいなくなるので、少子化はさらに加速し、生産年齢人口も減るから税収も減り、「消滅可能性都市」になる・・・・・・という見立てをしたNHKクローズアップ・現代”(2014年5月1日付)の映像を刺身のつまにしながら、地図から読み取れること”を書いてもらいました。
日本創成会議・人口減少問題検討分科会若年女性人口(20歳〜39歳)が、2040年までに50%以上減少する可能性のある市町村を、「消滅可能性都市」と定義しています。RESASにもデータがありますので、地図化できます。トリアージの配色で塗り分けてみるとこんな感じになります。
2010年→2040年の若年女性人口の減少率(%)
2040年の若年女性人口の市町村別分布(人)
「消滅可能性」という言葉が一人歩きしてしまっている感がありますが、まあ行政機能を維持する事が難しければ、さらなる市町村合併が繰り返されるのではないかと思われます。
この地図を前に、「うちの街はどうだろう?なくなってしまうのかな?」と、一喜一憂する姿を見て、「地理」でこれを教材化することのむずかしさを感じました。
ハザードマップを使っても同じような事が起こります。「うちのあたりは大丈夫かな?」「災害にあったら嫌だなー」といった危ないところ探しに終始しがちです。本来、「地理」で伝えなければならないのは、この「若年女性人口の減少率50%以下=消滅」という定義がどこまで妥当なものなのかを考えてもらうことだと思いますし、この団体のリーダーがおっしゃっている「選択と集中」論に対して、自分たちはどう考えるか?です。
乱暴な解釈をするならば、「消滅可能性都市」論は、トリアージよろしく、「ブラック」な地域は切り捨てて、より生きながらえそうな(ホワイトorグリーン)地域にインフラや投資を集中させて、人口減少期を迎える地方の「防波堤」を作ろうという考えです。また、「引力」を持ち続ける東京のような拠点都市を各地に作り、東京ブラックホール”(女性を引き付けるだけ引き付けておいて、結局つぶしてしまう現状)を食い止めようという考え方です。・・・いいか悪いかは別として、「そういう考え方もある」「自分のところはブラック(or レッド、あるいはホワイト)だけど、どうなるんだろう?ということをじっくり考えて欲しかったのですが、悲しいかな最終講義”。意見の集約もできぬまま、はいおしまいでした。
もっとも、これは卒業していく生徒たちに与えた宿題です。「2040年、ちょうど君たちが今の自分ぐらいの歳になるわけで、そのころの自分の子供、親の介護、仕事、ひっくるめて未来は暗いんだけど、どうしたらいいか、考えてね。そのころは、自分は老齢人口”の一人だけど、なるたけお邪魔にならんように頑張るわ(笑)」・・・・という締めで終わりました。
手掛かりはつけました。まだまだ洗練が必要な感じです。
とりあえず、恒例によりまして、教材ファイルをアップしておきます。お手元に「MANDARA」があれば、ぜひ追試していただくとありがたいです。
【データファイル】 フリーGISソフトの定番「MANDARA」の入手はこちら
MANDARAの最新バージョン(9.44)用のデータファイルです。
ベースマップに「市町村緯度経度鉄道」を使っていますので、Google Eath用kmlファイル書き出し等に対応しています。
MANDARAの旧バージョン(8.08)用のデータファイルです。
ソフトのインストールが禁止されているPC室のパソコンで、USBメモリやデスクトップ上にMANDARAを置いて動作させる場合(うちの学校はこれです)、こちらを使うと安定して動きます。