GIS(地理情報システム)を扱う企業と教育現場をつなぐ任意団体である「教育GISフォーラム」の幹事をやらせてもらっていますが、昨日、東京・渋谷で総会が行われ、特定非営利法人伊能社中さんと事業統合することとなり、私もそのメンバーに入れてもらうことになりました。
思えば2年前、関西の学生さん達が中心となり、Google Earthで授業を面白くする教材を作るんだというムーブメントが起こり、「e design」という任意団体が作られたのを「面白いなー」と等ブログで応援させてもらいました。
Google Earthで教材を作るワークショップに注目(いとちり2012年2月18日付)http://itochiriback.seesaa.net/article/252824484.html
Google Earthに教材写真を埋め込む無料ソフトの動画(いとちり2012年2月20日付)
例えて言うなら、よちよち歩きをしていた近所の「ぼん」が、ちょっと見ない間に立派になって、自分のとこの姉さんを「お嫁にください」と申し入れてきたようなもんです。私は途中からの「飛び込み幹事」でありますが、昨日は創立以来の発起人、歴代会長さんらがお見えになり、お父さん、お母さん方から「万が一にでも、うちの可愛い娘を路頭に迷わすことはないんだろうな?」的な“口頭試問”もあったりして、若い代表者さんらがあせあせと応対していました。
で、いきなり「姉さん」が結婚した「カツオくん」みたいな立場になった私ですが、「マスオさんs」に教えてもらった、「フグ田家」ならぬ伊能社中さんの概要を記しておきたいと思います。
公式サイトはこちら。Facebookやメルマガも運営されています。
この会の特徴は、年会費(一般3000円)を払うと、デジタル教材の製作発注を行うことができる(おひとり様年1回まで。それ以上は追加料金)。また、「会員」の発案による、デジタル地図を使った新しい教材開発プロジェクトの受付と、スタートアップの事業支援も行おうとしている(予算付で)そうです。
学校の先生が何かテーマを設けて文字通りの「教材研究」(次の授業の下調べではなく、教材や教具を自分で作ること)をしようとなると、手間も予算もかかります。そのような時、有償で学生さんの団体に「アウトソーシング」したり、テクニカルサポートが受けられるのは便利です。それでも、年3000円は高いかもしれませんが、「会員の発案による新規事業」を常に受け付けていますので、自分のアイデアで予算がついて来れば、3000円の投資が数十万、数百万円のプロジェクトに化ける可能性もあるのです。自分で提案するもよし、動き出したプロジェクトにメンバーとして参画するもよしです(交通費とか、堂々と請求できます)。
黙って待っていても、学校のICT環境やGISを動かすためのソフトやお金は降ってきません。「ほぼ無料」で貫くのも知恵の一つではありますが、「教育委員会(あるいは学校の経営者)はケチだ」「お金がないからいい教育ができないんだ」とぼやくだけでは何も始まりません。補助金や助成金を自ら引っ張ってくる。それができないのならば、「能力と時間を持つ若者にお金とノウハウ投資をして、自分もその恩恵にあずる(かもしれない)」ことで、現場もNPOもwin winの関係になるのではないでしょうか。使い古した表現ではありますが、これからの時代の「社会起業」とその支援のロールモデルになるのかもしれません。NPOですから配当は出ませんけど、意欲ある若者に1株¥3000の投資は安いのではないでしょうか?
中心となって動いている学生「社員」さんらは、会員の獲得と、官公庁や企業からの事業受託に日夜奔走しています。それは、長崎で坂本竜馬が立ち上げた日本初の株式会社組織、「亀山社中」のようでもあります。
操船や商売のスキル、そして時間と使命感はは有り余るほどはあったものの、お金もなければ地位もなかった脱藩浪人の集団は、“蒸気船”という全く新しいインフラを駆使した全く新しい海運業を始めます。薩摩や長州は、リスキーな仕事を若者たちに「アウトソーシング」する一方で自藩の中堅藩士にサポートさせました。西郷さんが明治維新を迎えた時、40そこそこ、桂小五郎が30代前半ですから、今の自分と「伊能社中」メンバーの関係は、似たようなものかなと思います。ちなみに、勝海舟クラスの大先生も、何人かいらっしゃいまして、昨日もいろいろ厳しい突っ込みを入れられてました。
海運や政治に進出して行った若者達の姿は、インターネットやGIS、タブレットといった新しいインフラ(その多くは海の向こうから来ている)を武器に、日本の教育を洗濯(?)しようとする彼らにちょいと重なります。・・・・竜馬の死後、事業を引き継いだ岩崎弥太郎が「三菱」財閥にまで育て上げたのは大河ドラマでもおなじみの話です。
地理・地図の“神様”、伊能忠敬の名を冠したこのNPOも、ゆくゆくは日本で知らない人がいないほどの団体になっているかもしれません(実際、ネットの世界ではそのようなサクセスストーリーには事欠きません)。学生や院生の集団である「伊能社中」のメンバーと、若手の教員がそれこそ「藩」や「お役目」を超えて切磋琢磨し、ここを巣立った人たちが、日本の地理教育や情報教育を思い切り変えていく事を期待してやみません。
(←直接は関係ない話ですが、大ヒットを飛ばしたこの本の著者は、執筆当時、都立高校の現役の先生でしたね。自分もあやかりたいもんです。)
とまあ、昨日まで「がんばってるなあ」と見ていてこの夏にも「ジョイントイベント」を行おうと打ち合わせしていた団体さんといきなり「身内」になってしまいました。これからは「支援」するのではなくて、起案して、決裁」をもらう立場になりますが、将来自分も同じように事業を起こそうという際に、いろいろと参考になることは多いと思いますので、OJTとして頑張ってみようと思います。
さしずめ、主要メンバーが関西と関東に分散していますので、「中日本営業所・駐在員」でも名乗っておきましょうか。先日、この会社の静岡支店があることを教えてもらって、なんか組んで仕事できないかな?と思っているところであります(本社は旭川)が、個人でなくて法人の一員として動いてみるのも面白いなと思っています。
というわけで、伊能社中をよろしくお願いします。教員(特に地理の先生)の皆様、年3000円の投資で若い衆をサポートしつつ、これぞというプロジェクトを動かしてみませんか?
「お義父さん」方の前で、壮大な事業計画を立てた若者達。年恰好からして、「カツオくん」というよりも「ノリスケさん」のほうが年恰好的にも立場的にも近いような気もしますが、縁者になったという事で、いろいろと組んで面白いことをやっていきたいと思います。