8月8日、9日の2日間、仙台で行われた「宮城県高等学校社会科研究会」の地理部会にお邪魔しました。2011年の夏から、地図学会学校GIS教育部会の主査として、関わってきたiPadアプリ「震災記憶地図」がいよいよ実地で試される、しかも高校の地理の先生によって直に評価されるということで、お話を受けたときから気合を入れて準備してまいりました。前週に下見で石巻市、名取市をまわり、昨日の昼、七夕まつりで賑わう仙台に再び降り立ちました。
8日は講演。防災教育とGISを絡めてとのことでしたので、「東北が日本の地理教育を引張るエンジンになる」という持論を展開させてもらいました。特に、GISデータ化された素材が豊富で、研究会組織も活発な宮城県は、まさにその先頭車両になっていくと思います。
同時に、レンタルで調達した20台のiPadを操作していただいて、「デジタル地図帳三品」を体験してもらいました。単純にPDFファイルを開く(でも、連続表示など結構面白く使える)「なんちゃってデジタル地図帳」、プロジェクタで投影するよりもぐっと見やすくなる「卓上Google Earth」そして、メインは東北限定のハイパー地図帳アプリ「震災記憶地図」です。
2日目、本日の「iPad巡検」は、震災記憶地図による初の野外巡検イベントとなりました。一度地図をダウンロードして端末にストックすれば、インターネットに繋がらなくても安定して地図を見ることができるのがこのアプリの最大のウリなのですが、バージョンアップの移行期でそうした機能が一部うまくいかなかったため(事前に知らされていたのですが)、野外でWifiモデムに頼るのは非常に厳しいことを再認識しました。また、Wifiによる位置特定も、古いiPad2 では反映(でも、「ここは千葉県」というくらいずれている)したものの、新しいiPad miniではウンともスンとも言いません。それでも、仙台市が公開している「盛土・切土マップ」や、旧版地形図を次々に切り替えながら郊外の住宅団地を歩くと、一見、何の変哲もなさそうな住宅地が実に面白く見ることができました。
午後は、有志を募って名取市の閖上地区に「震災記憶地図」を持って行きました。広大な荒野となった場所で住宅密集地の頃の地図を開き、現在地を開くと身につまされるものがあります。また、他の地域では「災害対策危険地域」(新たな住宅を建てることを禁止する代わりに、住民に保証金等を出して移転を促す)のゾーニングが進んでいますが、ここではそうした線引きができないままです。平均6mもの盛土をしてその上に新たな住宅地を建設して、もう一度この場所で暮らせるようにしたいという人たちと、他地域同様に「建設禁止」区域にし、自主的に移転した人を含めて補償するという人々との間で意見が真っ二つに分かれているということを、地元にお住まいの先生から教えてもらいました。
発災直後に「地図太郎マニュアル」を書き、「震災記憶地図」に、被災前の観光案内図を載せる仲介をするなど、被災地の外側で、できることをやってきました。今回のイベントでやっと「現場の内側」に足を踏み入れて、確かな拠点を築くことができたと思っています。昨年伺った新潟県長岡市同様、これから地理や防災教育の教材や実践を作っていく上で、宮城の先生方は、心強い“知恵袋”になっていただけると確信しております。昨日も、杯を傾けながら当時のことや、「この人に会ってみたら?」っといった助言をいただきましたし、ある私学の先生からは、「実は、学校挙げてiPadを導入することになったのだが、ぜひ手伝ってもらえないものか?」というありがたい申し出もいただきました。
講演の締めでも、今日の挨拶の締めでも申し上げましたが、「宮城が頑張れば、日本の地理教育は、三歩前進する」と思います。一歩は防災(を含めた日本地理の高度化)、二歩はGIS、そして三歩目は、教員の組織化と研修の高度化です。
宮城県の先生方は、「昔に比べると今はねえ・・・」なんて嘆いていらっしゃいましたが、これだけの先生方が茶碗酒を酌み交わしながら社会科論、地理教育論を熱く語る県はそうはありません(新潟も熱かったですが)。そうした「文化」を守りつつ、ぜひぜひ他県の、日本全体のチリ教員を引っ張って言ってもらえたらと思います。
重ね重ね、ありがとうございました。
本日の成果と得られた課題は、8月下旬の日本地理教育学会で発表します。
【講演資料とリンク】
○レジュメです
sumary20130808.pdf
○スライドです。(⇒PDFはこちら sendai20130808.pdf)
○iPadを使って見ていただいた「Webマニュアル」です。
http://www.itochiri.jp/miyagi2013/index.html
2013年08月09日
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