今年もセンター試験が終わりました。
昨年、地歴の問題配布ミスがあり、せっかく「そもそも、センター試験って・・・・。」という議論が盛り上がったかのように見えましたが、その後何事もなかったかの如く時が過ぎ、今年は「トラブルがないかどうか」ということだけに注目が集まって、やっぱりトラブルがあってそれがつつかれています。
自分も、成人式とセンター試験に関しては、シーズンだけ「なんとかならないものかなあ」と思いながら、結局忘れるので、また思い出せるように、頭の整理のつもりで書きたいと思います。
(1)高校3年間の学びの成果が「間違い探しクイズ」でよいのか?
地歴に関して定番なのが、「誤っているものを選びなさい」といった文章題です。「ひっかけ」にあったり、「つぶして」行ったり、テクニカルなことが要求されます。「その先」が全くありません。表やグラフの国を虫食いにして、それを当てられるようにして「地図や統計を読む力を見る」と言えるのでしょうか?
お米を食べて、産地が当てられたり、吸い物を飲んで出汁を当てられたり、「化学調味料を使っていない料理を選ぶ」すごい舌を持っている人がいたとします。でも、その人は「グルメ評論家」になれるかもしれませんけど、「おいしい料理の献立を自分で考えて、素材を集めて料理する」職人を選ぶ試験としてそれが適当と言えるのでしょうか?「言える」という人がいたとしても、それは「割と高い確率で、そこそこの料理人が採用できるからそうしている」現状にあぐらをかいているだけなのではないでしょうか?
(2)教員は、「残り80万人」のケアをしっかりやっていると言えるのか?
2013年の「18歳人口」は、約120万人ちょっと、大学進学率は50%ぐらい、センター試験受験者は40万人強です。
http://benesse.jp/berd/center/open/dai/between/2010/04/01toku_54_b.html
「問題の持ち帰り」でクローズアップされたように、既に推薦入試等で進学先が決まっているけれども、「お試し」や「お義理」で受験する生徒もいますので、本気で「受験のために」センター試験を受けに来ている人はもっと少なくなります。
それでも、センター試験の翌日には、新聞各紙の全面を使って問題が掲載され、高校や予備校の先生はこぞって「応援」に出て、さも「国民的行事」のようになっていますが、実際には、センター試験を利用して大学を受ける人自体がマイノリティになっている事も忘れてはいけません。
「ここは、センターにもよく出るところだから」は、ついつい使いたくなる常套句です。しかし、それを聞いて「ほうほう」と思う人は、学校によりますが、そんなに多くはありません。しかし、学校の先生になる人の多くは、センター試験を受験してきて、得点率を換算して、判定を見てという経験を「普通に」してきた人達ですから、そういう感覚からなかなか抜け出せないのかもしれません。
「センター試験は関係ない」高校生は着実に増えています。ただ、いくら「受験に関係ない」からといって、学習指導要領を逸脱した好き勝手な内容で授業をするつもりはさらさらありません。むしろ、関係ないからこそ、教科書の内容をきっちりと丁寧に教えるべきだと思っています。そうした方法論とか、実践の蓄積とか、一生懸命やっている先生もいるんですがどうもあまり表には出づらいのが現状です。
(3)「センター依存症」がもたらした履修機会の逸失
「地理は理系のセンター科目」という常識と、長年採用を絞ってきた結果、今多くの高校では、文系で「地理」を履修することができません。文系で「地理」が選択肢にない学校がたくさんあります。その結果、高校で地理を勉強したことがないまま、「地理学科」に入る人も増えています。3月に「地理の講師がほしい」とお願いしても、「該当がいない」というケースも増えてきました。やったことのない科目をやれと言われるわけですから、不安があるのも当然です。学校に1人いるかどうかの「地理」の先生は、「理系の必修」科目の地理を持つので手一杯。しかも、「センターのための」内容(自分はそういうことは、「補講」でやるように切
り分けてはいますけど)。どうも自分たちで自分の首を絞め続けているように思えてなりません。
「日本地理教育学会」という学会が、毎年「センター試験の講評」を行います。匿名とはいえ、同じ地理学、地理教育関係者が作った問題に対して、うまいのまずいの言うのもどうなのかなと思って見ていますけど、
「そもそも、地理教育にとって、センター試験というものは有益なのか否か」という議論にはお目にかかったことはありません(ならば、自分で書きなさいと言われるかもしれませんが)。
賛成にせよ反対にせよ、この体制はしばらく続くと思います(誰だって、自分の時、あるいは自分の子供の時に入試制度がガラリと変わるのをよしとしない)。それでも、「ポスト・センター試験後」の世界を見つつ(転勤によってそういうところにポンと飛び込むこともあるわけですし)、目の前の教材を充実させていこうと思います。
2013年01月21日
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