2011年02月09日

文系人類のためのGPS講座(2)GPSと「みちびき」

 思いのほか好評のようですので、調子に乗って第2弾行きます。
 今日は、GPSの原理です。
 なぜ衛星の電波を受信すると、自分の位置が分かるのかについてですが、Youtubeで「GPS」とひいても何も出てきませんが、「how GPS Work」と入力して検索するとたくさん解説動画が出てきます。

 分かりやすそうなのを一つ選んでみました。難しい公式はさておいて、「ああ、3つの衛星が地球に電波を当てて、クロスする範囲を絞っているのね」ということが分かれば十分です。アメリカは、GPS衛星を24個運用して、常に軌道上に置いてありますので、レシーバーは、電波が入りやすいものを見繕って捕まえます。各衛星は、自分が「今、ここにいますよ」という位置情報と、電波を発射した時刻を地上に送りつけるのです。レシーバーは、その情報をキャッチして、どの位置にいる第何番衛星から受けた電波なのか、さらにその衛星が発射してくれた電波が自分のアンテナに到着するのに何秒(1秒の何万分の1のオーダーですが)かかったかを計算することで、自分と衛星間の距離を瞬間的に計算します。

 光にも速さがあり、発射した光が全く同時に地上に届くわけではありません。現に、太陽の光は、太陽の表面を発射してから地球に届くのに8分ぐらいかかっていますし、人工衛星「はやぶさ」がイトカワのあたりにいたときは、地球から命令を送って、「はやぶさ」がそれをキャッチして「わかりました。そのように動きます」と返事を返すに40分ぐらいかかったそうです。ですから、上空3万qあたりを飛んでいる衛星から発射された電波も、地球に届くまでに時間がかかっているわけで、その時間を正確に測ってあげることで正確な距離が出るのです。
 動画に戻ります。衛星から電波を発射するのはいいのですが、地球に届いた電波は、何かサーチライトを当てたように大きな円になってしまっていますね。3つの円の交差する部分といっても、この動画の交点を拡大すると、北海道ぐらいの大きさになってしまいそうです。ピタッと位置を決めるには、もっともっと円が小さくなければ使い物になりません。
 では、
「円を小さくする」にはどうすればいいのでしょうか。一つは、「アンテナと時計の精度をむちゃくちゃ正確にする」ことです。光の速さは1秒間に約37万キロです。ちょっと衛星軌道が遠くなってしまいます(実際にはありえないですが)例えば、地球上空37万qの軌道上を飛んでいる衛星から電波が発射されて、地球に届くのは1秒後です。でも、0.999999秒後に電波が届いた地点と、1.000000秒後に届いた地点では、
その差は100万分の1秒しかありませんが、2地点の距離、つまり円の半径は、37万q÷100万=0.37q=370mになります。とにかく「円を小さくしてターゲットをしぼる」ためには、ものすごく細かな精度で電波の到達にかかった時間を測らなくてはならないのです。「誤差が10mなんて使えないー!」なんて言う人がいますが、2万km先から発射された電波の到達時間を、1000万分の1スケールの精度で正確に測りなさいということを求めているわけですから、かなり酷な要求をしていることがお分かり頂けるでしょうか。
 ただ、GPS携帯電話や、小さなハンディGPS(最近では腕時計式なんかもあります)に、そんな億単位の精度を持ったすごいストップウオッチが入っているかというと、答えはNoです。実際のジャッジは、「第4の衛星」が努めます。陸上の試合をするときに、フィールドでストップウオッチを測っている生徒の時計がいまいち怪しいので、手慣れた先生がもっと精度の高いストップウオッチで公式記録を取っているようなものです(そんなシチュエーションがあるかどうかはわかりませんけど)。「なら最初からその先生が全部の記録を取ればいいじゃないか」という声も聞こえてきそうですが、先生衛星は、そういうジャッジをしつつ、別のところのレシーバーに向かって計測用電波を発射したりして、お互いに持ちつ持たれつなのです。
 さあ、だんだんわけが分かんなくなってきましたね。もうちょっと続きますよ。その、
「人工衛星から電波が届く時間を測る精度」がGPSの計測精度を決めるのですが、電波がレシーバーに届くまでの間、実にいろいろな邪魔が入ります。例えば大気、その中に含まれる水蒸気、電波を跳ね返す作用を持つ電離層、
そして地上付近でこれでもかというくらいに邪魔をするビルや山、葉っぱやガラスといったモノです。また、GPSからの電波は必ずしも頭の真上から降りてくるわけではありませんから、自分の位置から見て水平に近い方向から飛んでくる場合は、「地球の丸さ」自体も障害物になります。ひどい場合には、電波がゆがんだり(屈折したり)して、微妙な距離のずれを生んでしまいます。実際、水中や屋内ではGPSの電波は受信できませんし、ビルの谷間や森の中ではひどく精度が落ちます。実際の測位は、そういう邪魔者が入ることを「想定内」においた上で補正をかけて、誤差を最小限に抑えるように工夫したり、GPS衛星と同じ周波数の電波を、地上にある施設(電子基準点と言います。この基準点はあらかじめものすごく細かな精度で自分の位置を把握した上で、衛星同様に位置情報と時間を電波で発射しています)。

 ありえない話ではありますが、サッカーの優秀な審判団が全員スタンドからジャッジをしていたとしましょう。目の前でサポーターが叫んだり、旗を振ったり発煙筒を焚いたり好き放題をしている中で、4人の審判団はファウルやオフサイドを見分けて、反則が行われた地点を正確に、かつ瞬時に決めなければいけません。バシッと位置が決まるときもありますし、でも、条件が条件ですから、「だいたいこのへんかな?」ぐらいまでしかわからず、意見の相違がでることもあります。そんな時、ベンチで試合をじっと眺めている監督さんが、「おいおい、そこじゃねーよ。ここだよ」と突っ込みを入れているような・・・・GPS衛星と地上の電子基準点との関係はそんな感じですkijun.jpg(←これが電子基準点:Wikipediaより
 ただ、この「衛星審判団」や、フィールド上のお目付け役である「電子基準点」からの電波は、そういつもいつもプレーヤーのもとに届くわけではありません。(ビルなどあればアウトです)。そこで、常にフィールドの真上、プレーヤーの頭上日本の頭の上、ほぼ90度に近い真上から電波を発射してくれる衛星があると、非常に便利なことになるわけです。言ってみれば
「空飛ぶ電子基準点」、それが「準天頂衛星みちびき」なのです。はあ、長かったですね。
 「みちびき」は、時計合わせの「補助審判員」の仕事だけでなく、通常の位置計測のためのGPS衛星と同じ仕事もこなします。衛星ですから、フィールドからの距離はありますが、常に日本の近くでジャッジをしてくれる、頼れる審判なのです。サッカーで例えるならば、常に選手の近くを走り回っている、
日本人の主審みたいなもんですね。そういえば、サッカーの主審の基本動作も8の字運動でしたね。アメリカ人審判団(GPS衛星)もたまにフィールド上を通過してくれますが、世界中のポジショニングをジャッジていますから、そうそう日本の上空に貼り付いていられるわけではありません。日本には日本専用の「主審」がいたほうが何かと便利なわけです(この主審、オーストラリアの仕事も同時にこなしたりしています)。
 昨日のバレーボールに始まり、今日は陸上にサッカー。「文系向け」というよりは、「体育会系」解説に終始していますが、こうやって整理してみると、人工衛星もGPSも、原理はそう難しいものではありません。モノが動く、電波が届くといった物理の基本的な法則は、ボールだろうが衛星だろうが基本は一緒です(違ったら怖いですが)し、「誤審」を極力減らしていくために、ルールや審判法に工夫を凝らしていく事は、スポーツも科学も同じだと思います。重要なのは、それらの恩恵にあずかる「プレーヤー」である我々一人一人が、ルールとジャッジの基本を学び、その限界と改善への努力に理解を示していく事なのではないかと思います。
「よくわかんないけど、主審が笛を吹いてやがる」、「審判増やしてなんか意味があるのか?」ではダメなんですね。
  「みちびき」も、1号機を上げてみたものの、2号機、3号機が本当に打ちあがるかどうかが微妙なようです(3基あって初めて24時間運用ができる)。「主審」が3試合に1回ぐらいしか来ない試合(しかも登場するのが昼間だったり真夜中だったりと一定しない)ってのもちょっと厳しいですね。それでも、今の限られた条件下で、積極的なプレーを続けて、アピールする事が何よりも肝心かと思います。
 頭の整理をかねてだらだらと書きましたが、衛星とは何か、GPSとは何か、少しでも興味をもっていただけたら幸いです。JAXA様、「事業仕分け」に屈服しそうになったら、このネタをどうぞお使いくださいませ(笑)。ちなみに、今の文科省で最もキャリアの長い副大臣は、確か高校サッカー部のご出身のはずです。
posted by いとちり at 23:26| Comment(0) | TrackBack(0) | 世界地理の教材 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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