鈴木寛文部科学副大臣に、来週早々お会いすることになりました。
文科省にお伺いして、30分の面会。自分が幹事をやらせてもらっている団体との懇談のメンバーに混ぜてもらうことになりました。副大臣のブログや動画、著書などをにわか勉強で見させてもらっているのですが、学校で「情報」の先生をされていたご経験などを生かしてすごく機知に富んだ発言を繰り返されているので、お会いできるのがとても楽しみです。「陳情」とか、硬い話でなくて、未来のIT教育、IT地理教育トークが出来ればと思います。
で、その鈴木副大臣が、政府のIT戦略会議などで「スマートスクール」構想という持論を展開されています。
「スマート」がつく言葉が最近多いですよね。代表的なのが「スマート・グリッド」。太陽光発電や風力発電など、出力がなかなか安定しない発電所同士をインターネット網のようにつないで、性能の高い蓄電池をセットにして、電力ニーズがある所を探しながら、最適な量の電力を配分するという考えです。既存の火力や原子力発電からの電力も、末端の需要に応じて発電量を変えられますので、よく夏場に「今日は都心でものすごく電力需要が上がるから、気合入れてガンガン燃料を燃やそう(でも、余ったら捨てるしかない)」とか、発電所から遠く離れた需要先まで送電するうちにロスが出るから、「高電圧大電流で発電しなければいけないね」なんてことも少なくなるわけです(必要な場所で小規模な発電所をたくさん作って、それらをつなぎます。電気の「地産地消」をすれば、ロスも減りますが、一つ一つの発電状況とそれぞれの需要を細かく把握する必要が出てきます。そこに必要なのが高度なIT技術です。
「スマートスクール」は、直訳すると「賢い学校」、狭義には「最先端のITを駆使した自学自習が出来る学校」ととらえればよいようです。
「スマート・スクール」を国策として行い、特に大学の技術者教育で成果を挙げているのがマレーシアです。詳しくはこちら。
http://www.blwisdom.com/frontline/02/
「安い労働力」で先進国の下請け的な産業構造から脱したい。しかし、急に学生を増やしても教える教師が足りない(第一、学生の指導に忙殺されるならば、優秀な教授陣は来てくれない)。ならば動画で授業を配信して、教養や理論は学生のペースで学ばせて、教師は実習や共同研究に時間とエネルギーを集中させる・・・・なかなか合理的なアイデアです。
「スマートスクール」では、先生は「寺子屋の師匠」になります。いや、正確には「師匠」になれる人だけが生き残れます。しゃべりのうまい下手ではなく(講義はe-ラーニングでわかりやすいものを見ればよくなる)、いつ、どんな教材をチョイスして生徒に与えるかを考え、ネットから流される情報をただ受けるのではなく、情報を使いこなし(電気を使って何を動かすかをを考える)、時には自ら「発電」し、足りないところに送るといった活動をしなければならなくなります。
スマート・スクールが浸透すれば、少なくとも、「うちの学校には地理の専門家がいないから、地理は開講しない」とか、「地理なんかとっても受験には不利だから、このコースは最初から選択肢に地理を置かない」といった教員サイドの都合で生徒の学ぶ機会が制限されたり、「専門でない地理を持ってしまった。いいネタもしらないし・・・・ああ、どうしよう」なんて悩む先生も減ると思います。
ものすごいシステムを構築しなくても、既存のクラウドのインフラで「スマートスクール」のまねごとぐらいは出来るようになってきましたが、本格的にやろうとなると、ハード面、ソフト面の充実のために、政府が率先して音頭をとる必要が出てくるでしょう、ただ、「スマート・スクール」を充実させることは、文科省が明治以来進めてきた、学習内容から教科書から何から何まで決めて、大量の情報を末端まで送り届ける「高圧送電線」式の教育システム自体を見直す事につながっていくかもしれません。いつまでも「教科書検定」なんかやって、院太郎飴みたいな教科書を作らせていては、時代の流れについていけなくなるのではないでしょうか。
アメリカやイギリスは、教科の「スタンダード」(何の力を、何年生までに、どんな方法で身につけさせるかの基準。日本の学習指導要領と似ていますが、ちょっと違います)が決まっていて、それに沿えば後はどんな教科書を使おうが(作ろうが)どんな形で授業をしようが自由(その代わり、スタンダードとの整合性をしっかり証明する必要がある)です。話のうまさやキャラといった小手先のスキルではなく、教師の「発電力」が試される時代がすぐそこまで来ているのかなと思いました。
【リンク】
学校教育の情報化に関する懇談会(文部科学省)
http://jukugi.mext.go.jp/library_view?library_id=57
2010年5月7日に行われた懇談会(主催・鈴木副大臣)の模様が動画配信されています。第1回は、各委員の自己紹介と問題意識の提起。音だけ聴きながらこの記事を書きましたが、メンバーといい、提起といい、かなり面白いです。「デジタル教科書」、かなり真剣に議論されそうですね。
ついでに「デジタル地図帳」と「デジタル白地図ノート」「デジタル掛け地図」もぜひ検討していただきたいものです。これは稿を改めて考えます。
2010年05月13日
この記事へのコメント
コメントを書く
この記事へのトラックバック