2019年05月12日

いとちりの防災教育にGIS シリーズ2(1)

 教科書会社、二宮書店さんの高校教員向けリーフレット「地理月報」での連載が始まりました。

 本文にもある通り、「防災教育にGIS」シリーズは、2012年から始めたもので、本誌、Web限定連載、教科書の指導書付属DVDと連載の場を変えて細々と続いています。今回、「シリーズ2」として再び紙媒体に登場し、連載完了とほぼ同時期に書籍化される予定です。当ブログ「いとちり」内に、かつての記事を全部まとめたものがありますので、興味のある方は是非ご覧ください。

「いとちりの防災教育にGIS」一括公開(いとちり:2017年3月23日)

 今回のテーマは「必修化に備えた教材作り」です。

 2022年4月の入学生(現在、中学1年生)より、高校の新しい学習指導要領が実施されます。必修科目化する「地理総合」(2単位)をどうするのか、業界の集まりに出ると基本的にこの話題に終始しています。ただ、本文でも述べたように、「地理総合」という科目が必修化されるということと、「すべての高校生が再び地理の授業を受けることになる」ことの概念の使い分けが十分になされていないのではないか?という気がしてなりません。「地理の専門家」が「地理総合」を担当したら全く問題ないのか?というと、そうはいかないように思います。むしろ下手に旧来の「高校の地理とはこういうものだ」という固定観念、あるいは「アクティブラーニングとは、こうあるべきだ」といった方法論が、却って新科目の理念やプロセスを骨抜きにしてしまうのではないかと危惧しています。その典型が、「GIS」「防災」の扱いではないかと思うのです。

 GISは、地域を理解し、データを可視化する上でのツールに過ぎません。防災は、様々な地域課題を考える上での一つのトピックであり、自然環境や社会環境が入り混じります。これまでの単元主義で、「はい、GISを扱います」「はい、身近な地域の危険性を考えてみましょう」といった取り上げ方から是非脱却したいものです。世界の諸地域の学習にせよ、地図の読み方にせよ、ベーシックな部分でGISや地域課題の探求を意識して行くものだと思います。そうした積み上げ式の指導は、私自身もまだ経験したことがありません。ただ、GISがパソコンからタブレット、そして生徒が一人一台ほぼ持っているスマホでも十分に使えるようになり、その気になれば「いつでもどこでもGISにアクセス」することは技術的には可能です(ルール作りや評価、生徒指導的な部分でまだ追いついていませんけど)。また、防災をめぐる事例やデータは日進月歩で高精度化、多様化しています。そうした知識や技術を適度に取り込みつつ、地理の基礎基本(わからない場所や地名を地図で調べる、資料にあたって裏を取る、気づいたこと考えたことを言語化する)のトレーニングとステップをどう組み立てていくか、まさに模索の段階です。

 シリーズ2では、理論編(教材作成編)を3回のち、再び「フィールド編」として、ここぞという場所にお邪魔してデジタル地図と現地見学を基に教材化の提案をしてまいります。地理教育における防災は、「近くの″もしも”よりも、遠くの”リアル”」に学べる事象は多いと思っています。連載で取り上げる場所に加えて、書籍版オリジナルとして、仕事の合間を見つけて現場に足を運ぼうと思っています。皆様のお近くに行く際は、お世話になることもあると思います。どうぞよろしくお願いします。
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【本文はこちら(PDFファイル)】
<書誌>
伊藤智章(2019)「いとちりの防災教育にGIS 2-1ー『地理総合』の3つの柱と3つのステージ」,地理月報(555),18~19頁.

posted by いとちり at 20:47| Comment(0) | 論文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年03月22日

アナログGISによる必修「地理総合」向けGIS教材の作成について(日本地理学会)

 専修大学(生田キャンパス)に行ってきました。

 日本地理学会の「地図・GIS」セッション、今年は初めて座長もやらせてもらいました。
 つたない司会でしたが、普段の聴衆席とは全く違った緊張感で、とにかくメモを取って質問・コメントを考えることだけに集中した時間でした。ありがとうございました。

 今回のキーワードは「アナログGIS」です。スライド中にもあるように、2007年の日本地図学会の発表で、私が使い出した造語のようなものですが(伊藤:2007→こちら)、当時「紙地図の実習はGISに取って代わる」「アナログか?デジタルか?教師はどちらを選ぶのか?」みたいな論争にうんざりして、いささかの皮肉を込めて発表したところ、「いや、そもそもそんな概念は成り立たない!」ということで集中砲火を頂いたことを記憶しています。

 今回も、「GISというのはそもそもアナログな地理情報(紙地図や調査の結果など)をデジタルデータにした上で加工したり分析したりするものなのだから、『アナログGIS』という概念はやはり変だ」とのご指摘を受けました。確かにそうだと思います。と、言いながら確信犯的にこの用語を使って来たのですが、最近、引用を頂いたり、実践例が出てきたりするようになり、少し解釈も多様化して来たので、改めて考えてみようと今回の報告に至りました。

 「アナログGIS」に関する最近の事例報告として、田部(2017)があります。横浜市の中学校の先生と共同開発された「OHP フィルムを活用した GIS(地理情報システム)入門地図教材」に対してこの語を使っていただいています。確かに、こう呼んだ方が誤解が少ないと思いますが、あえて「アナログGIS」の語を当てていらっしゃることを見ると、伝わりやすさを優先されたのかな?と思う所もあります。また、少し古い記事ですが、拙記事(いとちり:2010年1月16日)では、古今書院の「地理学演習帳」について紹介しています。これなどは、GISを含めた地理学で使う地域の分析手法を紙と鉛筆で再現できる画期的な演習帳面であり、やはり「アナログによるGISの入門教材」と言えると思います。スライドにもあるように、高校地理でのGIS利用における「ステップ0」の教材は、もっと充実するべきだと思います。

  新必修科目「地理総合」には、プロパーはいません。地理教育のベテランも、初めて地理を教える若手も、横一線だと思っています。これまでの「高校地理とはこういうものだ」という固定観念が逆に足かせになる可能性すらあるでしょう。あと2年少々、教師個々人はもとより、業界全体としてどう準備を進めていくか、引き続き考えをまとめて発信して行けたらと思います。









posted by いとちり at 06:05| Comment(0) | 学会発表 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年02月24日

日本地理学会(2019.3.20専修大学)発表要旨

 今シーズン最初の対外プレゼンとなる、日本地理学会春季学術大会の日程が出ました。

 3月20日(水曜日)、専修大学(生田キャンパス)です。
 自分の発表No.は316番、第3会場で14:40〜15:00とのこと。
 <地図・GIS>のセッションです。
 その後、同じセッション内で座長もやらせてもらいます。
 プログラムの詳細は、学会のホームページをご覧ください。

 今回の報告は、昨年11月に公開授業で行った「アナログGIS」の実践です。
 新しい学習指導要領(2022年入学生〜)で必修となる「地理総合」では、授業開きの一丁目1番地から「地理情報システム」をやるべしと書いてあるのですが(・・・「余裕があったらやる」ではなく、「まず、そこからやりなさい」ということになっています)、ステーキ屋さんじゃないですけど「いきなり・・・!」というのにはどうにもこうにも無理がある。「Web GISがあるじゃないか」といっても、それ以前の段階で、ストレスフルに出来る教材はないものか?というのが教材作りの出発点です。

 「アナログGIS」という言葉は、随分前から使っている概念ですが、誤解の無いように申し上げておくと、単なる手描きの地図の重ね合わせ(トレーシングペーパーによる地形図の要素書き出しなど)は、私の中では「アナログGIS」ではありません。作業自体はアナログ・手作業でも、教材自体はGISのデータとGISのソフトで作り、いつでもデジタルの教材にスムーズに移行出来てこそ「アナログGIS」だと思っています。「作り手」と「使い手」の分業など、結構考えて行かなければならない点は多々あります。実践自体はシンプルなので、論点を整理して、ご意見を募れればと考えています。

 取り急ぎ、発表要旨のファイルをアップします。
 ご来場、お待ちしております。
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PDFファイルはこちら

【リンク】
 アナログGISで考える世界の人口(いとちり:2018年11月18日)
 研究授業直後にアップした教材データなどです。
 よろしければこちらもご利用ください。
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posted by いとちり at 18:25| Comment(0) | 学会発表 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年12月09日

台湾修学旅行考

 修学旅行で台湾に行ってきました。自分自身は4回目の台湾ではありますが、前回行ったのが11年前の「第1回アジア・太平洋国際地理オリンピック」の代表団引率だったので、随分変わったなあという印象でした。地下鉄がとても便利でした。
 勤務校では昨年までの沖縄から台湾に替わっての第1回目。色々な面で試運転なところがありましたが、これからお付き合いが続いていく土地になりますので、いくつか気づいた点を備忘録がてら書き留めたいと思います。

(1)距離的に近い割に、移動時間がかかる

 学校を出たのが午前8時。バスで3時間以上かけて成田空港へ、成田で通関、飛行機に乗り台北の桃園国際空港へ。ものすごく長い入国管理の列を並び、荷物を受け取り、夕食会場に入ったのが午後8時(日本時間では午後9時)でした。帰りは朝5時起床、6時半にホテルを出て、9時半の飛行機に乗り、成田からバスに乗り、各自の最寄駅(私の場合は沼津駅行き)に着いたのが午後7時でした。200名近い団体の国際移動とはいえ、沖縄に行っていた時は、最終日のお昼ごはんまで食べられて到着時間は同じくらいでしたから、なんとかならないものかな?と思いました。
 12月の第1週は、全国的に「修学旅行ウイーク」のようで、台北でも静岡県の学校(私たちを入れて3校)、北海道の学校、大阪の学校など、たくさんの学校に遭いました。せっかく地方空港がある訳ですから、何校か束ねてチャーターして、行先も桃園⇒台北一辺倒ではなく、台湾の他の空港に行ってもいいのではないかな?と思いました。台中や高雄は、街を挙げて日本の修学旅行誘致のプロモーションをしているそうです。

(2)「定食」コースになってしまっており、見直しが必要

 故宮博物院と九份が、修学旅行の生徒でごった返していました。確かに、班行動ではいかないところかもしれませんし、「The 台湾」というべきところですが、身動きも取れないくらいでは魅力も半減です。修学旅行ではどうしても安全第一、前例踏襲になりがちですが、独自性をたどっていく必要があるように思いました。

(3)Wifi環境は素晴らしい

 公共施設ではほとんどフリーWifiが使えるのが大変便利だと思いました。
 今回、班別行動で大学生のガイドさんに案内をお願いしましたが、生徒のスマホに地図アプリを入れるなどして、自分達で歩いてみるような企画も出来るのではないかと思いました。

(4)学校訪問などができれば・・・。

 今年、台東市の訪問団を受け入れ、非常に盛り上がりました。相互訪問ができればいいのですが、日程上の都合でちょっと厳しかったのですが、姉妹校、相互訪問は置いておいて、特徴ある学校にお邪魔して交流する時間がとれたらなと思いました。もちろん、教員間の行き来も大事かと思いました。

 「修学旅行は海外」というのが全く珍しくなくなってきた今日(実は台湾に行く方が沖縄より安いのです)、同じ時期に沢山の学校が台湾に行く中で、旅行社に用意してもらった定食メニューだけでなく、どうやって独自性を出して行くか、今回得た知見を日々の授業にどう生かしていくか(私たちを案内してくれたガイドさんは、しょっちゅう日本に行っていて、富士五湖や忍野八海はちょいちょい行くそうです)など、いろいろ検討してみたいと思いました。
 台湾の地理オリンピックの時にも感じたことですが、台湾は「地理教育大国」です。今回の旅行をきっかけに、また関わりを深めて行けたらと思いました。
 最後に、班別行動時のフリータイムに撮った「淡水」の写真です。いいところでした。
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【リンク】
 地理オリンピック引率記

2007年の第1回アジア・太平洋地理オリンピックの引率記。
 月刊「地理」誌に寄稿した原稿が、台湾師範大学のサーバーに残っています。
 もともと、隔年で行われる地理オリンピックの世界大会に選手を送り込んでいた台湾。世界大会が行われない年にローカル大会を開いていたヨーロッパに倣って「アジア・太平洋大会」を企画し、「世界への足掛かりにいかが?」と、日本を誘ってくれたのが始まりと聞いております。
 日本はその後、2009年に「第2回アジア大会」を筑波大学で開催し(私も手伝いに行きました)、台湾は2010年に世界大会を誘致。その時にノウハウを吸収した日本委員会は、2013年に世界大会を京都で開催しました(私は「富士山麓案内要員」として関わらせていただきました)。
 日本の地理教育界にとって台湾は、常に一歩先を導く「兄貴」(女性の先生が多いので姉貴か?)のような存在です。

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posted by いとちり at 18:35| Comment(0) | 世界地理の教材 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年11月18日

【素材提供】アナログGISで考える世界の人口

 パソコンを使わずに、主題図の作成・・・要は白地図の色塗りや記号の大きさでの表現・・・をして、それらを重ね合わせたり、データを読みとったりする作業を「アナログGIS」と呼んでいます(5年前ぐらいから公の場で言っていますが、あまり流行っていません)。これまで、大判に引き伸ばした地図画像の上にビニールシートをかけたり、地形図とタブレットを組み合わせたりとやってきましたが、先週、学校視察と学校公開日が重なったので、人口問題のイントロで教材を作ってみました。

 モノクロ印刷したベースマップ(主題図をMANDARAで作成)にOHPシートを重ねてその上からマジックペンで色を付け、できた「手製のレイヤ」を重ね合わせることで関連性を考えるというものです。班ごとに出来たものを実物投影機でスクリーンに映して簡単なプレゼンをしてもらいました。

 学校公開の方の準備の総括もやっていたので、重ねた後の分析や議論など、授業の完成度としてはいまいちではありましたが、これから地理が必修化される中で、パソコン実習だけに縛られない、印刷するだけで実施できるアクティブラーニング型のGISとして、教材を蓄積していければと考えています。

 見学頂いた先生方から要望を頂きましたので、授業で使った教材一括セットを作りました。
 MANDARAの操作がいまいち分からない方でも、画像を印刷するだけで使えます。
 お試しください。
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【ダウンロード】
 pop_GIS.zip (1.5MB)

こんなデータが入ってます。
 人口統計の主題図(カラー・モノクロ)
 人口統計のデータファイル(EXCEL表)
 人口統計のMANDARAデータ(MANDARA9、MANDARA10用)
 生徒用手順書
識字率.png人口増加率c.png
posted by いとちり at 17:09| Comment(0) | 世界地理の教材 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする